表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
302/343

真犯人

「脆弱接続の修正を行います。8/55182」



「脆弱接続の修正に失敗しました。第1段階フェーズより再演算を行います。」

 

「脆弱接続の修正を行います。12/55182」

「脆弱接続の修正に失敗しました。第1段階フェーズより再演算を行います。」


「脆弱接続の修正を行います。16/55182」

「脆弱接続の修正に失敗しました。第1段階フェーズより再演算を行います。」


「おい。あれって」

 ルークスは表示に視線を固定したままサトシに語り掛ける。サトシもその表示をじっと見つめていた。

「おい!あれなんだよ!?カールはどうなっちまったんだ?」


 オットーはルークスとサトシに詰め寄るが、二人とも答えを持ち合わせていない。ただ、その表示をじっと眺めているだけだった。



 カルロスはカールの変化に一瞬戸惑いを見せるものの、その表情はすぐに不敵な笑みへと変わった。


「さよけ。ならやってみまっさ」

 カルロスは一人ごちると、体についた埃を両手で大げさに払い、声高に笑い始めた。


「あ~。カール。どうしたぁ。もう仕舞いかぁ!?

 俺はピンシャンしてんで!


 どうした!?己の未熟さが身にしみてわかったんかぁ!?あんときと同じやな」


「あの時……?」

 目前に転がる焼け焦げた死体を睨みつけていたカールが視線をカルロスに向ける。


「あ~。覚えてないんか?

 いや。覚えて無い訳無いわなぁ。お前のせいでルドルフは死んでもーたんやからな」


「親父……!?」


「なんや、俺の事覚えてないんか? いや。 顔も姿も違うもんなぁ。わからんかぁ~


 せやな。一応名乗ってみようか」


 カルロスはそう言うと、姿勢を正し、貴族の様な振る舞いでおどけて見せる。そして、


「王宮騎士団 ラズロット隊のフレッド兵長であります」


 今までとは明らかに違う声色、ハルマンのしわがれた声ではなく、低いながらも張りのある若々しい声で、そう名乗る。


 その声にカールは激しい吐き気とともに、体中の血が沸騰するような怒りを覚えた。


『フレッド兵長……フレッド』

 何度も頭の中で繰り返されるその名前。そして現れるフラッシュバック


 ……


 目の前にはヤットコで焼けた鋼を持ちながら、槌を打つ大きな背中。

 火の粉を散らしながら、カンカンと軽快な音を立て鋼を鍛え続ける。


 背後から近づく人影と、名乗る声。


『王宮騎士団 ラズロット隊のフレッド兵長であります。本日はラズロット隊長のご命令で伺いました』


 実直そうな声に振りかえると、胸に拳を当てる騎士団流の敬礼をしながら、槌を打ち続ける背中に向かって大声で語りかけている騎士が居た。


『ルドルフ殿!お時間を頂戴したいのですがよろしいですか!』

 その声は、槌を打つ背中には届いていないようだった。その騎士は自分の姿を見上げる瞳に気づいたのか、こちらに向かってウィンクをする。


 ズキっ!


 激しい頭痛と眩暈。再びのフラッシュバック。


 あたりは血の海となっていて、目の前には倒れ込んだ職人風の男。それを忌々しそうに見下ろす騎士……フレッドだ。



「思い出してくれたかぁな?

 何にせよ。お前はいっつも邪魔や。ルドルフを殺すつもりはなかった。

 邪魔やったんはお前や。何のスキルも持たん……役に立たんお前が生き残ってしもた。ホンマにお前は役立たずやなぁ!」


 その言葉にカールは頭を抱えてしゃがみ込む。


 

「新しい脆弱接続を発見しました」

「脆弱接続の修正を行います。25/6825444」


 今までと違い、今度のプログレスバーは止まることなく進み続ける。

 分子の数字はどんどん大きくなり、分母に近づく

 

 そして、

 

「6825444/6825444」

「脆弱接続の修正が完了しました。」

 軽快なアナウンスと共にダイアログが消える。

 

 そして、カールはゆっくりと立ち上がった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ