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中途半端なソウルスティール受けたけど質問ある?  作者: ミクリヤミナミ
魔王の譚
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尋問

「話を聞くのか?」

 サトシに確認すると、俺の目をしっかりと見て大きく頷く。意思は固いようだ。気がかりではあるが、今サトシを止めて要らぬ不信感を抱かれるのも困る。こいつとはいい関係を築いておきたい。

「わかった。だがカルロスのペースに乗せられないようにな。スキルが使えないとは言うもののもともと話術には長けてるようだ」

「はい。気を付けます。できれば俺とカルロスの様子を観察しておいてほしいんですが」

「むろん俺も立ち会うが……」

「いえ。そういうことじゃなくて、奴のステータス……というか、「心理的な動き」です。フリードリヒさん、たぶんそういうのも見えますよね?」

「ルークスか?」

 奴から聞いたんだろうか?そんな暇があったか?その疑問に答えるようにサトシは続けた。

「いえ。ルークスさんからは何も。ただ、そんな気がしたので。カールさんとの会話を聞いてると何となく。それに俺とルークスさんの念話チャットに気づいたでしょ?」

 カマをかけたってところかな。俺は答えなかったがサトシはそれを「是」と判断したようだ。どのみち俺がどの程度心理が読めているのかについて明確な確信があったわけでもないだろうし、俺が言わない限りは確認のしようがない。今回の尋問もまずい状況にさえならなければそれほど情報を開示する必要もないしな。


「じゃ、入りましょうか。随分しびれを切らしてるようですし」

「それもそうだな。話し相手が居ないと寂しいんだろう」


 俺たちはカルロスが捕えられている独居房へと入る。

 独居房の入り口は頑丈そうなカギがついた分厚い扉だった。ここから声が漏れ聞こえるくらいだ、よほど大声で叫んだと見える。

 分厚い扉を開けて中に入ると、そこは監視室のようになっている。簡単な事務処理ができそうな小さな机と椅子が備え付けてあった。そこには部下二人が座っていた。ついさっき目の前に現れた刑務所風の建物の中ですでにくつろいでいるとは大したものだ。我が部下ながら感心する。

 その監視室にはカルロスを観察できるガラス張りの扉があり、尋問するためにはそこから中に入る必要がありそうだ。

「で、どうする?中に入るのか?それともここで尋問するのか?」

「せっかくですから間近まで行きましょう。どうせ奴は動けないわけですし」

 近くに言っておちょくってやろうってことか?なかなかいい性格してるな。


 監視室からカルロスの部屋へと入ってゆくと、カルロスはイラついた表情で不満を口にする。

「なんやねん。帰ったおもたらまた来よって。かとおもたらこんなもん建て腐ってからに……。どんだけおちょくるぃや。」

 が、本心は喜んでいるようだ。ただ、単純に「暇がつぶれて楽しい」という様子ではないようだ。


 これがツンデレってやつか?


 と、言いたいところだがそんな生易しいもんじゃない。これは何か企んでるな。正直なところ今すぐにでもこの場を立ち去りたい衝動に駆られている。

 が、サトシが矢面に立つことで俺には不慮の事態に対応する余裕ができるとも考えられる。普通ならこんな危ない橋は渡らないんだが……

 

 今はこいつらの一挙手一投足に集中するしかなさそうだ。


「で、今度はサトシか?なんや。アイのことでも聞きに来たんか?

 図星か。惚れた女に未練たらたらってか。んなことしとるから愛想つかれるんやないか」

 サトシは黙ってその言葉に集中する。


 ルークスの行動履歴ログから見たサトシとアイの様子からすると、この憎き仇を前にして心を乱されていないだけでも驚嘆に値する。いくらタイムリープを重ねたとは言え、俺からすれば、まだ実年齢で30にもいかない若造だ。あまつさえこれだけ罵られればと飛び掛かるなり、攻撃するなりしてもおかしくは無い。

 この落ち着き様……むしろ不自然だ。


「なんや?なんか言い返してみいや。黙りこくってからに、鬱陶しいな。聞きたいことあるんやったら、とっとと言わんかい!」


 開口一番早口でまくし立てていたカルロスの話がようやく途切れた。

 それまで沈黙を守っていたサトシが口を開く。


「アイの事、教えてもらえませんか?」

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