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中途半端なソウルスティール受けたけど質問ある?  作者: ミクリヤミナミ
魔王の譚
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天命の書板

「「ひったくり(スナッチャー)」ってのは一体?」

「その名の通りだと思うが、何よりお前が調べりゃいいんじゃねぇか?」

「ああ、そうか」

 こいつやっぱり抜けてるな。まあ、そこが一番都合のいいところでもあるが……


 ルークスは天命の書板を呼び出すとその文章を読みながらわなわなと震えていた。


「どうした?」

 俺も天命の書板を覗き込む。すると


『スキル:ひったくり(スナッチャー) 触れた相手の肉体を奪い取ることが出来る。ユーザー同士の場合は肉体が入れ替わる。NPC対象にスキルを発動した場合、ユーザーの意識のみが異動し、以前の肉体は屍と化す。成功率は熟練度に影響される」


 なるほど。あのメッセージは俺への当てつけじゃなく仕様だってことか。にしてもメッセージ作った奴頭おかしすぎだろ?イースターエッグみたいなもんか?


「なあ。熟練度(極)だったよな?」

 ルークスは書板を覗き込んだまま俺に質問する。

 

「ああ、それがどうした?」

「回避できねぇって事じゃないか?」

「そうかもしれんし、違うかもしれん。そりゃやられてみなきゃ判らん。取り敢えずは、出会わないことを祈るしかないんじゃないか?」

 とは言ったものの、そんな簡単な事でもないだろうな。少なくとも、途轍もなく厄介な奴であることは理解できた。

 

 さて、どっかに行っちまったカルロスの事は置いといたとして……まずは情報収集だな。


 セフィ〇スの事を復活させておくか。


 俺は、屍となったセフィ〇スに近づくと奴の周囲に浮かんでいる文字列を確認する。

 NPCも魂持ち(ユーザー)も、死ぬと周囲を回っている文字列や光の粒は動きを止める。

 まさに活動停止って感じだ。

 基本的にはこの現象は不可逆的な物なので、そのまま放置すれば遺体は腐り、虫が湧き、果てには土へと帰っていく。


 今回のセフィ〇スは、部下たちが発見した時、まだ温もりがあったらしい。つまり、ひったくり(スナッチ)直後だったって事だろう。


「とりあえずセフィ〇スに話を聞いてみるか」

 俺がそう言うとルークスが怪訝な顔で俺を睨みつける。


「どうやって?」

「どうやっても何も、生き返らせればよかろう?」

「いや、だからそれをどうやって……って、そうか。魔王なら出来るのか」


「おい。変な納得の仕方をするな!」

 きわめて失礼な奴だな。

「でもそう言う事だろ?」

 だからなんでこいつは……というか、なんで俺の周りにいるやつは総じて失礼なんだ?

 

「俺のスキル分かってんだろう?

 なら、俺ができる事もある程度理解できるだろうが。それにこいつはNPCだ。ステータスいじれば何とでもなるだろ」

「え?ステータスいじったら復活できるの?」

「基本こいつらはプログラムだからな。死亡を確定してるコードを上書きしてやれば何とでもなるさ。それこそ、お前の「天命の書板」に書いてあるんじゃねぇのか?」

「天命の書板」にどのくらいの情報が記載されているのかはわからんが、俺のスキル「魂操作ソールマニピュレータ」は言ってみればプログラミングツールだ。コードエディタと言ってもいい。データの一部を改ざんしたり、新たに追記したりできる。

 これはNPCだけじゃなく、魂持ち(ユーザー)や構造物ストラクチャーにも適用できる。魂持ちが死んだ場合でも、それほど時間が経っていない場合復活させることも可能だし、建物についても事前にデータを解読保存バックアップしておけば、破壊されたとしても元通りに復元ができる。

 なんてことを俺が話すと、一段と「魔王」呼ばわりされそうだが……実際チートスキルであることに変わりはない。まあ、自分でも「魔王」っぽいな……とは思うが。


 だが、「創造主クリエイター」のように、無から有を生み出すことは出来ない。俺ができるのはあくまで復元だ。そう言う面では「ルドルフ」や「サトシ」の方がよほど「魔王」っぽいだろう。むしろ「神」に近いと言った方が良いか。


「あ、ホントだ」

 ルークスが頓狂な声を上げる。どうやら「魂操作ソールマニピュレータ」の説明を読んでいたようだ。


「確かに弄れるんだな。それにこの世界のNPCはメタAIが自然発生させてるらしい」

「ん?どういうことだ?」

「NPCとかオブジェクトはデータベース管理されてないって事みたいだ。「NPCはNPC同士、またはユーザーとの間で自然繁殖する」って書いてある」

 その言葉に、俺も天命の書板を覗き込む。すると、なんだかよくわからないことが記されていた。


『世界に存在する人々は創造神の気まぐれによって生まれ死んでゆく。一部の者は創造神からの恩寵を授かる。人々の魂は輪廻により………』

 なんだ?これ。


「おい、ルークス。これどういうことだ」

「どういうこと……って、そのままじゃん。『ゲーム制作の効率化を目指し、フィールド上に発生するオブジェクトについてはメタAIが管理することで、事前に各種リストを作成する必要がなくなった。これは人間等についても同様で、NPCはNPC同士……』って、ほら。ここに」

 そう言いながらルークスが指さす場所にはそのような文言は無い。創造神だの、天命だのと、宗教用語満載だ。

「いや。俺にはそんな風に読めないんだが、なんだ?意訳か?NPCなんでどこにも書いてねぇだろ!?創造神がどうとか、輪廻がどうとか」

 そこまで言うと、ルークスは顔色を変えて書板を睨みつける。



「なあ、あんたにはなんて書いてあるように見えるんだ?」

「おれには「世界に存在する人々は創造神の気まぐれによって生まれ死んでゆく。一部の者は創造神からの恩寵を授かる。人々の魂は輪廻により再びこの世に生を受ける」って、もしかしてお前には違って見えてるのか?」

 

 ルークスは俺の言葉にゆっくりと頷く。

 そう来たか。見えてる情報が違うと来たか……


「なあ、俺の視界で確認できるか?」

 ルークスに俺の視界を覗き見るように促してみたが、答えは同じだった。

「だめだ、あんたの視界で見ても俺には同じように見える」

「そうか」


 どういうことだ?これはルークスが特別なのか?

 それともよほどまずい情報にアクセスしたのか……

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