堪え切れなかった男
言っちまったもんは仕方ない。
とりあえず、カールがあそこまで入れ込む青年だ。悪いやつとは思えん。
と言うか、カールは昔から運だけで生きてるようなところがあるからな。たぶん大丈夫じゃないだろうか。
「その若造がサトシだと思うぜ」
さっきの失言を誤魔化すように、一応重々しく告げてみた。
「何言いだすんだよ。急に。頭おかしくなったのか?だいたいお前サトシ知らないだろうが」
あんまり重々しく響かなかったみたいだな。カールが随分不躾な物言いだ。まあ、仕方ない。
「いや、そいつがサトシだよ。なあ?そうだろ?」
おそらくカールの言うサトシだろう。
「いや、サトシはこんなに大きくないし、このくらいの……」
カールが背丈を示そうと、掌を腰のあたりまで下げると、
「いやいや!そんなにちっちゃくなかったですよ!」
とサトシが勢いよく突っ込む。
ん。語るに落ちるってやつだな。
「は!?」
カールは状況がつかめていないようだ。大きく目を見開いたまま青年を見据えて固まっている。
先ほどまで羞恥心で固まっていたエリザと、それを周囲からにやにや見ていたオットー、ヨハンも驚きを隠せないようだ。
しばらく沈黙の時間が続いたが、ようやくサトシが重い口を開く。
「あの。俺今回はカールさん達に会っていないと思うんですが……」
『今回』と来たか。
「カールに会ったことはあるんだな?」
俺がサトシに尋ねると、観念したのかゆっくりと頷いた。
「は?え?いや。え?」
2度見、三度見、4度見とカールが繰り返す。
いや、何回見ても同じだろ?それがサトシだよ。
「ちょっと待ってくれ」
溜まらずオットーが口を挟む。
「お前がサトシだとして、俺達がこの集落を出発してからまだ3か月と経ってないぜ。なんでそんなに育っちまったんだ?」
「いや……それは……」
「ホントに……ホントにサトシなのか……」
「あ、はい。すいません。俺の事覚えてるかどうかわかんなかったんで、言い出せませんでした」
「憶えて無いって……そんなわけねぇだろ!それにサトシの事を何度も聞いたじゃねぇか」
カールは状況が呑み込めていないらしく、サトシに詰め寄る。
「まあ、落ち着けカール。なあ、お前カール達と別れてから何があった?」
俺の言葉にサトシはまた口ごもる。サトシの周囲には「疑念」「疑問」「混乱」そう言った感情が乱れ飛んでいる。こいつ自身も状況が今一つ掴めてないらしいな。
「別にお前たちを如何こうしようってんじゃねぇんだよ。お前はカールが認めた奴なんだろ?そいつに何があったのか知りたいだけだ。あったことをありのまま話してくれればいい」
そう言うと、サトシの「疑念」の感情は若干薄れたようだった。魔導士風の男は……よくわからんな。正直俺はあいつの事を早く知りたいが……まあ、サトシの話を聞けばいずれこっちの話も出てくるだろう。
「そうですね。カールさん達と別れてから俺たちは……
サトシはぽつぽつと語り始めた。




