再びの粛清
「特異個体の発現を確認しました。これより神罰による粛清を開始します」
特異個体!?なんだそれ?
今度のアナウンスはいつもの声だ。また粛清されるのか?なんで!
いや、想像はつく。おそらくサトシだ。どういう理屈でそうなったのかはよくわからんが、サトシがチート級に危険な個体として認識されたって事だろう。
先ほどまで激闘を繰り広げていたサトシとカルロスは互いに手を止めて周囲の様子を窺っている。
流石にここまで短期間で二度目の粛清は想定外だ。
「ほぅ。2回目の粛清を受けるんか。恐ろし奴らやな」
カルロスは至って他人事である。
「おい!お前も当事者に含まれてるって認識は無いのかよ!」
「ふん。何寝ぼけたこと言うてんねん。明らかにそのサトシやろ。逆切れしてからの成長具合が異常や。ステータスはよう分らんがおそらく神から危険やと判断されたんやろな」
「そうは言っても、お前も巻き添えを食うんじゃねぇのか?」
「いやいや、そら遠慮しとくわ。まあ、君らの健闘祈ってんで。ほな!」
カルロスはそう言い残すとこの場から瞬時に消え去った。あれは「転移」じゃないな。なんだ。一体。あいつは何もんなんだ。
途端に周囲のオズワルド達は崩れ落ちる。
洗脳が解けたってところか?
が、奴らを気にしてる暇はない。まずはサトシだ。
「おい!サトシ!大丈夫か!」
「あ、はい。大丈夫です」
随分軽い返答に拍子抜けするが……
「今は粛清に集中するぞ!」
アイの事はひとまず忘れろと言いかけて思いとどまった。
しかし、サトシの反応は意外なものだった。
「大丈夫です。今気持ちは落ち着いてます。今回の粛清は返り討ちにしてやりましょう」
そう言い放つと笑顔を見せる。その様子に何とも言い表せない気味の悪さを感じたが、遠くから近づいてくる天使型ドローンの気配にそれどころではなくなった。
遠くから虹色の天使たちがこちらに向かって進軍してくる。あの光景だ。これが粛清だと知らなければさぞかし神々しく思えただろう。が、今はただ恐怖しかない。以前と同様経験値は無効化されている。つまりレベルは初期化されてしまった。ステータスも初期値まで下がっているが、辛うじていくつかのパラメータがサトシの武器防具で底上げされている。だがそれも奴らを撃退できるほどの数値ではない。
ところがである。
俺の焦りをよそに天使を見据えるサトシの背中には焦りや怯えを微塵も感じない。一体なんだ?サトシの後ろ姿に漲る自信は。
押し寄せてくる天使たちに向かい、俺達は体制を整える。
今度も耐えることが出来るだろうか?




