反撃
余裕をかましているサトシに一泡吹かせてやりたい。
というわけで、「行動加速」の重ね掛けだ。ステータスを確認しつつ最大限までかけてゆく。現在俊敏性+1600% 17倍速と来た。これでイケるか?
合わせて「行動不能」をサトシにかける。
無情に現れる『無効』の文字。状態異常無効化か?
サトシも目の前に現れた表示を見て口元が緩む。
が、諦めずに2度、3度とかけてみる。
と、
「あ゛!?」
サトシに「行動不能」が掛かったようだ。
その隙を見逃さずに一気に攻撃を仕掛ける。
超越者の杖でサトシの胴に一撃を加える。サトシはたたらを踏みながら後ろに下がる。が、まだ反撃できない。すかさず短勁を加えるとサトシは膝から崩れ落ちた。
イケる!と思った時、背筋に悪寒が走る。跪きながらもこちらを見据えるサトシの視線が俺の足元に移動する。
『まずい!!』
咄嗟に視線の先にある俺の右足を大きく後ろにずらす。すると、足があった場所から茨が現れた。
俺は大きく後退すると、「行動不能」を念じ続ける。無情に現れる『無効』の表示の合間に、サトシがわずかに呻く声が聞こえる。1/5程度の確率で効いている様だ。
先ほどの様子から見て、サトシに「行動不能」が効いている時間はコンマ数秒と言ったところだろう。だが、17倍速で動ける俺には十分な時間だ。繰り返しサトシの行動を封じながら打撃を加えてゆく。
『何か魔導士らしくない戦い方だなぁ。』
つまらんことを考えたせいで気が緩み、サトシの視線を読むタイミングが遅れた。そこをサトシは見逃さなかった。
俺の右足が茨で固定される。
「ちぃっ!ライトボール」
しくった。俺はサトシ顔面目掛けてライトボールを放ち視界を奪う。その間もサトシに対して「行動不能」と念じ続けるとともに、右足をファイアブレイドで切り落とす。痛覚が無いため今までのように激痛が走ることは無いが、足の肉が焼き切られてゆく感覚だけは伝わってくる。あまり気持ちのいい物じゃあない。
片足立ちになりながら「行動不能」と「ライトボール」でサトシの動きを封じる。
「高出力LASER!」
LASERによる攻撃も今一つ効いているようには思えない。サトシは不気味な沈黙を保っている。「行動不能」で攻撃できないだけだと思いたいが……
失った右足も徐々に再生している。もう少し……
ドカ!
……
『は!』
「気が付きました?」
目の前にはサトシの顔がある。俺は仰向けに倒れているようだった。特に特に痛みは無いが体が自由に動かない。
っていうか、体の感覚が無い……
「いやあ。やっぱルークスさん強いっすよ。手加減できなかったですもん」
手加減……できなかった?
かろうじて動く首を起こして下半身を見ようとすると、バランスを崩して体が横に転がる。
転がる?
すると、視線の先には、遠くに転がる俺の下半身……というか、胸から下が横たわっていた。
「大丈夫ですよ。ちゃんと戻しますから」
戻るの?これ。




