鬼畜の所業
今俺たちは、地下工房のさらに下。だだっ広い空間の中にたたずんでいる。
ドーム何個分?って言葉がここまでしっくりくる空間を初めて見たかも。
隣には意気揚々と胸を張り興奮気味にこの場所を紹介するサトシがいる。
「地下に闘技スペース造ったんですよ」
「何言ってんの?」
「だから、闘技スペースを……」
「いや。聞こえなかったわけじゃなくてさ。ほんと何言ってんの?」
「聞こえてるんですよね?」
「ああ、だから、何を思ってそんなものを……」
「そりゃ。レベル上げたり、装備品の性能確認したりするに決まってるじゃないですか」
すげーな。こいつ。こいつに持たせちゃいけないスキルだったわ。今更気づいたけど、研究対象に向いてないよ。極端すぎて参考にならん。むしろ俺より研究者向きなんじゃなかろうか?
とはいえ、今は確かに装備の性能を確認したい気持ちもわかる。まあ、ちょっと付き合うか。
「で、どうやって確認するんだ?また俺を攻撃する気か?」
「いや、さすがにそれは。もうしませんよ。そんなこと」
ほんとかよ。怪しいもんだな。
「じゃあ、どうする?お互い極限まで戦い続ける気か?」
「ああ、それでもいいかもしれませんね!以前模擬戦でも経験値入りましたし」
「まじで?」
そんなゆるゆるなの?倒さなくても経験値や熟練度手に入るのかよ。
「試してみますか?」
「いや。まあ、そうな。ってか。元々どうするつもりだったんだ?」
「いや、ゴーレム使おうと思ってましたけど」
さも当然のように言われましても……
でもまあ、確かにあれなら効率よく稼げそうだな。さて、どうしたもんか……
「一度模擬戦やってみるか?それで熟練度や経験値が上がらないようなら……可哀そうなゴーレムに犠牲になってもらおうか」
「そっすね。それでいきましょう」
軽いね。
と、言うわけで、期せずしてサトシとの模擬戦となった。
が!
しくった。今気づいたよ。
ゴーレムじゃなくて俺が犠牲になるじゃん!!
「それじゃ、本気で行きますか!」
「ちょ!ちょちょ……ちょっとまて!!本気なの!?多少手加減してくれるんじゃないの?俺魔導士だよ」
「いやいや。十分強いじゃないっすか!謙遜しなくても大丈夫ですよ」
「そんなおべっか要らないから。サトシに比べると劇ヨワなの判ってっから」
「大丈夫ですって。なにより「絶対防御☆☆☆」つけてるじゃないですか。で、リジェネ掛かりっぱなしみたいなもんですし。問題ないでしょ?」
「あのさ。ちょっと確認なんだけど……少なくとも「創造主」は使用禁止だよな?」
「何でです?」
「うおぃ!本気で俺を殺しにかかってるじゃねぇか!?」
「大丈夫ですよ。足止めくらいにしか使いませんから」
「まてぇい!使うんかい!?いや。やめて。頼むよ。やめてくれ。俺死んじゃう!」
「え~。でも俺も熟練度上げないといけませんし。大丈夫ですよ。頭は狙いませんから」
いやいや。当たり前だろ!そんなの喰らったら即死じゃん!こいつ大丈夫か!?
「いや、ホント頼む。じゃあ、攻撃禁止で!防御は良いよ。頼む!!攻撃はやめて!」
「どうしたんですか?自信持っていいと思いますよ」
「いやいや。お前自分の強さ……と言うか、異常さに気づいてないだろ!?」
「異常さ?何がです?まあ、「創造主」はチート級なのは認めますけど」
「だから、使い方も含めておかしいだろ?無敵に近いじゃねぇか!」
「だって、あの天使型ドローンにボコられたじゃないですか?」
「いや、あれは……」
まさかチート対策だとは言えない俺は口ごもる。もう説明しても始まらん。
「頼む!使うのは良いが、攻撃は勘弁してくれ。俺はバンパイアみたいに体を再生したりできないんだからな」
「「再生スキル」で何とかなりませんかね?」
「え~。それも試すの!?ダメだった時どうするんだよ!!」
「あ、大丈夫です。俺少しなら再生できますから」
おいおい、どんどんバケモンに近づいていくじゃねぇか!?もうすでに魔王だろ!おまえ一体何を目指してるんだよ……
これは、死んだかな。もう、諦めるしかないか。
すると、俺の諦めの表情を「是」と判断しららしいサトシは、満面の笑みで語る
「任せてください。「再生スキル」が機能しなくてもしっかり元通りにしますから!」
あれれ~。おかしいなぁ。お兄さん僕の事殺す気かなぁ?
「というわけで、始めましょう!」
あ~!ちきしょー!どーにでもなれ!!




