親愛なる?
「このマーク。どっかで見たな」
手紙の封蝋には見覚えがあった。どこだっけ?ま、良いか。
というわけで、何の躊躇も無く手紙を開く。
「なんだ。これ」
手紙にはこんな内容が記してあった。
親愛なるルークスへ
久しぶりだな。随分活躍しているという話は俺のところまで届いている。元気にしているようで何よりだ。
最近こちらでは新しい店が出来たり、祭りが催されたりとかなり賑わっている。お前にこちらへ遊びに来てほしいという奴らも多い。
今の忙しい状況ではなかなか顔を出すことはできないだろうから、手紙で良いので連絡をくれ。
ハルマン
とまあ、こんな内容だ。
「なんです?ハルマンって誰ですか?」
「ああ、ウルサンの奴だ。まあ、その、なんだ。裏社会の人間だな」
「いつの間にそんなのと親しくなったんですか?文通する仲なんですか?」
サトシが生暖かい目で俺を見つめる。
「なんで「おっさん同士の恋文を覗いちまった」みたいな気まずい雰囲気出すんだよ。やめてくれよ。相手は爺だよ」
「ホントですか?気にしなくていいですよ。俺その辺は寛容なんで」
「何が寛容だよ。単に興味と被害が無いから無関心なだけじゃねぇか!
ってか、そんなに親しくねぇし。1回しか会ってねぇっつうの」
そうか、ガラの悪い四人組ってのはモビー達か。あいつらいつも4人でつるんでるのか?まあそれは良い。問題は文面だ。
まず、俺はハルマンとそんなに親しくない。
少なくとも
「久しぶりー!元気してた!?結構祭りとかやってるから遊びにおいでよー!!」
などと言う女子高生的な手紙が来るような間柄では断じて無い。
と言うことは符丁というか、暗号文と言うか……まあ、そんなところだろう。でも暗号なんぞ取り決めてないから、文面から察しろと言う事だろうな。
……
「ん!わからん」
「なんですか!?急に」
「いや、たぶん暗号か何かだと思うんだが、よくわからん」
「単に考えるの放棄しただけじゃないですか?」
「まあ、そうともいうが。そんなこと言われてもな」
「とりあえず、なんで手紙が届いたかを考えましょうよ。そのハルマンって人とルークスさんはどんな関係なんですか?」
心なしかサトシがにやけて見える。バカにしてない?俺の事。
「サトシが思うような関係じゃないよ」
「いやいや。そんなこと聞いてるわけじゃなくて……」
「そうだなぁ。一応あいつから情報がもらえることにはなってるが……」
「情報って、どんな情報です?」
さて、どこまで話したもんか……
「あ~。ウルサンの裏社会の情報」
「そんなの知ってどうするんですか?」
「ま~。あれだ。商売を手広く広げようと思うと、いずれ裏社会の人間とはひと悶着有るだろうからな。事前に情報を知っときたいと思ってな」
「で、直接聞きに行ったんですか?」
「いや、探りを入れようと町に潜入したら、いきなり本職にぶち当たったと言うかなんと言うか……」
まあ、そう考えると自分でも行き当たりばったり過ぎる気がするな。
「ルークスさんらしいと言えばらしいですね」
「どういう意味だよ」
「そう言う意味です」
……
どういう意味?




