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中途半端なソウルスティール受けたけど質問ある?  作者: ミクリヤミナミ
カールの譚
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激闘

『驚いたな。あれに耐えるか。おもしろい』


 トンでもねぇのが残ってた。一番忘れちゃいけないやつだった。どう逃げる。


 音もなく上空から降りてくる。


「なかなかの手練れのようだな。」


 ああ、もう駄目だろうな。奴らだけでも逃がせるか?とりあえず、時間を稼ごう。

 

「普通に話せるんだな」


「ああ、先ほどのか?警告は全員に聞こえなければ意味がないのでな。」

 悠然と話してはいるが、まったくスキがねぇ。逃げようにも逃がしてくれるそぶりも見せねぇ。


「まあ、そう焦るな。」

 全部お見通しってところか。だが、気さくに話しかけてくる様子は本当に人間と変わりない。近所のおっさん(元イケメン)と言われても信じるほどだ。年は俺と変わらないくらいか。ただ、まとう雰囲気が人間とは別物だ。さっきの攻撃をもう一度受ければ今度は全員助からないだろう。

 

 できるだけ小声でエリザとヨハンに伝える。

「エリザ、ヨハン、俺が時間を稼ぐ間に、キャラバンを引き連れてできるだけ遠くへ逃げてくれ。馬車は置いてゆけ、足が遅い奴は馬に乗せて、後は一目散に逃げろ。それしか手はない。」

「カールはどうするんですか?」

「スキを見て逃げてみるが、おそらく無理だ。全員でかかったところでどうにもならん。いいから逃げろ。もしできるなら、エリザは離れたところから俺にバフをかけてくれ。頼む。」

「いえ、それなら我々も戦います。3人なら勝機があるかもしれません。」

「これ相手に本気か?」


「だから言ったろ?そう焦るな。」

 魔王が軽く掌をこちらにかざす。

「なっ!」

 途端に体の自由が利かなくなる。俺はわずかに動けるが、エリザとヨハンは地面に倒れこんだ。

 やべえ、これは殺気か?どうなってるんだよ。奴は全く本気になっている様子はない。なのにこっちは身動きすらまともにとれん。こんなの相手に勝てるわけねぇ。

 と、泣き言を言ってても仕方ない。やるしかない。かろうじて動く腕に魔力を込め、剣を抜く。


「ん?ほう!それは……そうか、そういうことか。あっはははっ!なるほどな。道理で動けるわけだ。よかろう。試してみよう。」

 奴は愉快そうに笑ったかと思うと、俺に向かって手をかざす。

 うはっ!

 急に体が動くようになった。なんだ、術を解いてくれたのか?これは、いけるかもしれねぇ。奴は俺に対してかなり油断しているようだ。先手必勝だ!!

 軽くしゃがみ込み、一気に地面を蹴って魔王との距離を詰める。両手で剣を下段から振り上げる。


 キィン!!

「な?!」

 甲高い金属音がして、俺の太刀筋がずらされる。

 正直一世一代の一撃だったはずだ。なぜ?

 はっ!?魔王の手にあるのは……

 カタナか!?

「俺のは紛い物でね。お前のそれが本物かどうか試してみたい。さあ、来い。」


 奴が、俺の攻撃を受けてくれるならまだ機会チャンスがあるかもしれない。先程より強く魔力を込める。ほぼ限界だが仕方ない。

 一気に剣を振り抜く!

 シュイン!!


 振り抜いた剣先は地面を深く切り裂くが魔王の体には届かない。

 

 キィン!!

 カキィン!!

 すべて奴のカタナではじかれる。


「良いぞ。どうやら本物のようだな」


 こっちは必死だってぇのに、どんだけ余裕なんだよ。

 限界を超えて魔力を高め、手数を増やす。仕方ない。腹の中に魔力をためてあふれさせる。


 斬撃の速度は当初の倍以上になり、時折剣先から衝撃波が発生している。それでも魔王の体には届かない。さも楽しそうに軌道をそらされる。

 横なぎに放った斬撃を上方に逸らされた。


 左手一本で上から切り下し、空いた右手で

「ファイアボール」

 五本の指からファイアボールが5発放たれる。この至近距離だ、どれか当たってくれ!!


 魔王は、目の前でカタナをぐるりと一周させる。

 すると、振り下ろされる剣先と5発のファイアボールすべてを弾き飛ばされた。そんなのありか?!無茶苦茶だ。どうやったら一撃を浴びせられる?


 これだけやっても、奴は一撃もこちらを攻撃していない。すべて受け流すだけだ。

 どれだけ余裕なんだよ。


「さあ、そろそろ終いにしようか?」

 トドメを刺されるのか?覚悟を決めるしかないな。

「同感だね」

 自棄やけだ、


 俺は後ろに飛びのき、剣に最大の魔力を込めて奴に向かって放り投げる。これで両手が空いた。

 その両手で、あらん限りのファイアボールを乱れ打つ。


「うりゃぁぁぁぁぁ!!!!」

 100発、200発 魔力が尽きるまで打ち続ける。


 目の前が火柱で何も見えない。奴がどうなったかもわからないが、おそらく毛ほどの傷もつけられていないだろう。でも打つしかない。

 1000発、1500発


 目の前は炎で埋め尽くされている。その時横から声がした。 

「いい加減にしろ!」

 左わき腹にとんでもない衝撃が来た。それが蹴りだとわかるのにずいぶん時間がかかった気がする。


 吹き飛ばされながらその方向を見ると、魔王が手をかざしてこちらを見ている。


「ソウルスティール」


 グンッ!!


 体が魔王の掌に引っ張られる!

 でも、遠くへ吹き飛んでゆく感覚はそのままだ。いま、意識だけが引きずり出されている。


 これ魂だけ吸われてねぇ?ヤバいつじゃないか?

 

 これは確実に殺しにかかってるな。

 

 やっちまった感が半端ない。


 ああ、肉体から魂が抜ける感覚ってこんなか……。



 意外に気持ちいいもんだな。



 トカゲや蛇の脱皮もこんな感じなんだろうか?




 ああ、胴体は完全に離脱した、指先と足先でかろうじて耐えている。


 頑張れ俺。


 負けるな俺。


 ああ、指先がぁ……あ、足抜けた。


 やべ、



 あっ。



 死ぬときって、こんなにゆっくり時間が流れるのな。



 おお、どんどん魔王の手の方に吸い込まれていく。


 死ぬときは走馬灯のように思い出がって聞いた気がするけど、そんなのないんだな。


 ああ、やりたい事まだ一杯あったのに。


 玉鋼も手に入らないし…


 ま、仕方ないか。


 ……


 なんだ、何かが目の前に何かが飛び出してきたぞ



 ああ、少年だ……生きてたんだな。よかった。


 じゃねぇよ。おいおい君、そこに出てくると危ないぞ、


 俺とぶつかるし、君も魂吸われるんじゃないか?



 ほら言わんこっちゃない、


 ちょっとはみ出てるぞ、君。



 吸われてますって!


 逃げたほうがいいよ!




 おお、俺加速してる。やべ、止まれねぇ。



 あ、少年にぶつかる。


 ああ、止まれーエ




 痛てぇーーーーーー!!

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