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中途半端なソウルスティール受けたけど質問ある?  作者: ミクリヤミナミ
生方蒼甫の譚
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戦闘開始

「なんだ……あれ」

「天使……ですかね」


 天使って。それこそ勝てねぇだろ。通常兵器じゃないのかよ。単なるラスボスか?


 ここ最近強敵に会うことが無かった俺たちには、恐怖と言う感情が抜け落ちているようだった。本来なら恐怖を感じてうろたえるべきなのだろうが、どちらかといえば呆気にとられていた。


 そんな我々をよそに、目の前の天使達は太陽の光を浴びて虹色に輝きながら12枚の翼を大きく広げる。敵意も殺意すらも感じない酷く無機質に思える天使たちだが、その行動の意図だけは明確に伝わった。攻撃態勢だ。


「ステータス!」

 突然サトシが叫ぶ。その声に俺は我に返り、いままで完全に無防備になっていたことに気づいた。


 目の前にステータスが表示される。


殺人虫キラーバグドローン Lv999 HP:80000/80000 ATK:6200 DEF:6900」

 

 なんだって?


 サトシも意外な表示に状況がつかめていないらしく、その場で固まっている。目の前に居るのは明らかに天使だ。が、「殺人虫キラーバグ」の表示が出ている。レベルが下がったことでステータス表示も誤動作してるってことか?


 次の瞬間。先頭に居た天使が大きく両手を広げたかと思うと、まるで砂像が崩れるように手の先から虹色の粒がサラサラと零れ落ちてゆく。腕、肩、そして胴体と順に形が崩れてゆき、七色に光る竜巻が出現した。


 俺たちはその様子をしばらく呆然と眺める事しかできなかった。が、その時アイが叫ぶ。


けて!」


 その声にサトシも俺も大きく飛びのく。


 次の瞬間、虹色の竜巻が大きく変形し鞭のように撓りながら俺たちの居た場所に突進する。


 目の前の地面が大きくえぐり取られた。


 また上空へと舞い上がった竜巻は大きくうねりながら俺たちの様子を窺うように周回する。


 ここでやっと、先ほどのステータス表示が正しかったことが理解できた。


 あれは殺人虫キラーバグだ。無数の殺人虫キラーバグが群れを成して俺たちを襲っている。何が通常兵器だ。ぶっ壊れモンスターじゃねぇか。一匹一匹が異常な硬さと強さ。それが群れを成して襲ってくる。こんな絶望的な状況があるか?

 

「サトシ!どうする?これ分が悪すぎるぞ!!」


「まずいっすね。動きが早すぎて「茨」じゃ止められないっす。これは防御に徹するしかないかもしれません」

「賛成だな。逃げられるのかわからんが、専守防衛に徹するか?」

 

 そういいながらも、俺は何か攻撃手段がないかと考えを巡らせる。俺の横ではサトシが超合金イモータライトの防壁を準備していた。


 殺人虫キラーバグは絶え間なく体当たりを仕掛けてくる。その攻撃を超合金の防壁で辛うじてよけながら体制を整える。


「アイ!大丈夫?」


「こっちは大丈夫。でも攻撃手段がないから……」


 じり貧だよなぁ。サトシの作った防壁に隠れながら周囲の様子をうかがう。


 まだ攻撃態勢に移っているのは天使達のうち1体だけだ。それでこの状況ってヤバくねぇか。


 藁にもすがる思いで


観測者オブザーバー

 天命の書板タブレットに助けを求めてみた。


 すると、


『超高出力LASER』


 書板タブレットには呪文と魔方陣が映し出されている。

 あれ?エンリルは敵じゃないのか……。それとも罠か?


 まあ、どのみち選択肢はないんだ。いっちょ策にはまってみるか。


「超高出力LASER」

 手をかざすと、目の前には幾重にも重なった魔方陣と手のひらに向かって集まってくる光の粒。

 その光の粒は、魔方陣を通り過ぎる度に輝きを増してゆく。周囲の光の粒が手のひらに集中すると、俺の手は直視できないほどの輝きを放つ。


 手のひらを殺人虫キラーバグが作り出す竜巻の中心に向ける。


「貫け!」

 意図せず口をついた。


 手のひらの輝きは再び幾重の魔方陣を貫き竜巻へと向かう。

 光が通り過ぎた一瞬の静寂の後


 ドガガガカァァァァァァッァァーーーん!!!!


 すさまじい衝撃波と轟音に俺たちは吹き飛ばされる。


「ぐはぁ!」


 何度も頭を打ちながらごろごろ転がる。20mほど転がり続けて、何やら障害物にぶつかって止まった。


「何かやるんならそう言ってくださいよ!!」

 悲痛なサトシの叫びが聞こえて、ぶつかった障害物が超合金で作られた防壁だと気づいた。


「すまん。俺もどうなるかよくわからずにぶっ放した」

 反省しよう。


「今のは何ですか?」

 どうやら超合金の防壁は、俺を止めるために作ってくれたようだ。サトシが駆け寄って防壁の裏に隠れる。俺もサトシの横に並ぶ。サトシの背後にはアイがいた。


「これだ」

 俺は書板タブレットをサトシに見せる。

「魔方陣のおかげですかね」

「そうみたいだな。無属性の熟練度はお前の方が俺より圧倒的に高いから、威力は結構出るんじゃないか?」


 先ほどの一発で、殺人虫キラーバグの竜巻が一部吹き飛んでいるようだった。1/5くらいだろうか。さっきから勝利のファンファーレが頭の中に鳴り響いている。どうやら戦闘開始時にレベルを落とされたが、この戦闘でも経験値を稼ぐことができるようだった。鬼畜仕様なのか、ヌルゲー仕様なのかよくわからん。


「ちょっと俺もやってみます。アイ。すまないけど、俺とルークスさんに魔力を送ってくれない?」

「わかった。やってみる」

 アイは無属性魔法を使うことができない。無属性以外の魔法をロックされている現状では、完全に戦力外だ。魔力を動かして周囲から俺たちの周りに集めてもらうのが最良だとサトシは判断したようだ。なかなかいい作戦だと思う。


 それじゃ反撃開始と行きますか。

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