親分
2階は薄暗く階段の先には短い廊下。突き当りに豪華な扉があった。
モビーはその扉をノックする。
「入れ」
ずいぶん低い、なかなかのイケボだ。まあ、興味ないけど。
「失礼します」
モビーは恭しく中へと入って行く。
部屋の中も薄暗く、思いのほか広くはなかった。正面に豪華な椅子が一脚。そこには老人?といった雰囲気の人物が座っていた。
「うちの若いもんが迷惑をかけたみたいですまないな」
ああ、あのイケボはこのジジイか。声には張りがある。
「いや、構わんさ」
「てめぇ!親父になんて口の利き方を……」
「おい!いい加減にしろ」
イケボのジジイがモビーにぴしゃりと言い放つ。
「す、すいませんでした」
「まあ、お座んなさい」
俺は勧められるがままに、ジジイの正面に座る。薄暗かったからよぼよぼのジジイかと思ったが、年のころは60歳くらいだろうか。体こそ小柄だが、眼光は鋭くただならぬ雰囲気を醸し出していた。
Theヤクザの親分!って感じだ。
一応ステータスを確認しておこう。
『ユーザー:ハルマン 職業:自由業 LV:40 HP:2251/2360 MP:110/110 MPPS:15 STR:120 ATK:220 VIT:260 INT:218 DEF:327 RES:229 AGI:18 LUK:125 スキル:魔力感知☆☆ 体術:Lv58』
やっぱりユーザーか。
ってか、意外に強くね?なんかゴードンといい勝負しそうなんだけど。Aランク冒険者くらいの実力はありそうだな。
「で、ここに何しに来なすった?」
「ちょっと調べたいことがあってね」
「調べたいこと、と言うと?」
「いや、それが俺にもよくわからなんだよ。皆目見当がつかないと言った方がいいかな。だから、目ぼしい人間にいろいろ聞きたいと思ってさ」
「その目ぼしい人間てのは?」
「当然あんたらも入ってるよ」
「おい貴様!」
モビーが俺の言葉に食って掛かる。いちいちうるせぇな。弱いんだから黙ってろよ。
「おい、モビー。おめえは分をわきまえろ!」
流石親分。わかってらっしゃる。
モビーは飼い主に叱られた犬のようにシュンとする。
「で、俺に何が聞きたい?」
「まあ、いろいろあるんだが、さっきも言ったろ「あんた」じゃなく「あんたら」だな」
「モビー達も入ってると?」
「ああ」
「ほう。で、聞きたいことってのは?」
「そうだな。まずは……
あんた。この世界に生まれる前の記憶はあるかい?」
ハルマンはピクリと眉を動かすと、今度は面白そうに口角を上げる。
「ほう。それはあんたの言葉かい?それとも誰かの受け売りか?」
「受け売り?」
「そうか。あんたの言葉ってことで良いんだな。じゃあ、あんたも異世界人か」
あんた「も」?




