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中途半端なソウルスティール受けたけど質問ある?  作者: ミクリヤミナミ
生方蒼甫の譚
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燃えろもえろ萌えろ

 冒険者ギルドからほど近いところにある鍛冶屋は、思っていたより大きかった。

「おう、邪魔するよ」

 入り口のドアを開けると、店舗部分らしき8畳間ほどの広さのスーペースがあった。奥にはカウンターがあり、カウンターの向こう側に商品と思われる武器防具や道具類が並べられていた。

 ドアについていた鈴の音が聞こえたらしく、裏手の方から走って来る足音がする。

「はい、いらっしゃい。どういったご用件で」

 駆けこんできた若い店員らしき男が丁寧に対応してくれる。一軒しか無い鍛冶屋って言うから、もっと厳ついおっさんが一人で切り盛りしてるのを想像してたんだが……


「ああ、ちょっと作ってもらいたいもんが有ってさ」

「製作依頼ですか。少々お待ちください」

 店員はカウンター下をごそごそ探ると、一冊のファイルを出してきた。


「え~と。武器ですか?」

「いや、道具なんだけど。」

「道具ですか。どんな道具です?」

「ストーブだな」

「ああ、ストーブですか。どんな大きさの?あそこに並んでいるストーブだったらすぐお譲りできますけど」

 店員はカウンターの横に置いてある薪ストーブを指さして言った。

「いや、薪ストーブじゃないんだよ。」

「薪じゃない?」

 店員は小首をかしげて「意味が解らない」といった表情だ。

「これなんだけど」

 サトシが作った対流型ストーブをカウンターに乗せる。今回は持ち運びやすさを考慮して、アウトドア用品として使いやすい大きさに作ってもらった。高さは40cm、胴の直径は30cm。入る灯油は3リッターほど。連続燃焼だと15時間くらいは持つかなぁ。と言ったところ。


「な!」

 店員はそう言ったっきり固まっちまった。あれ?どうした?


「こっ!これを作るんですか?」

「ああ、まったく同じじゃなくても良いんだけど、機能は同じがいいかな」

 まあ、ばねやらネジやらガラスやら。結構いろんな部材でできてるからな。たぶん鍛冶屋でネジを作るのは大変だろうから、リベットでいいや。とは思ってるけどね。


「ちょっ!ちょっ!ちょっと待ってもらっていいですか。すんません!」

 店員は慌てた様子でそう言うと、後ろに走っていった。

「親方!!」


「あれ?なんかまずりました?」

「どうだろう。構造が良くわからんから親方呼びに行ったのかな」


 しばらくすると、奥からガタイの良いおっさんが出てきた。まあ、年齢的には俺と変わらんだろうけどね。


そのおっさんが申し訳なさそうに俺たちに話しかける。

「あ~。すんませんね。なんか珍しい物を持ってきてもらったそうで」

「めずらしいもの?」

サトシが聞き返す。


「いや、親方。これ見てくださいよ!!」

「わかった!わかった!お前は黙ってろ」


「……」

 親方と呼ばれたその男は、しげしげとサトシが作ったストーブを観察する。そりゃもう、穴が開くんじゃないかってほど。


「これ、あんたが作ったのか?」

 

「ええ。まあ」

 サトシは少し照れ気味に答える。

「何か問題がありますか?」

「いや、問題も何も。これ、鋼板だろ?」

「そっすね」

 軽いな。サトシ。


「どうやったら、こんなに打痕もなく滑らかに曲げれるんだよ。いや、秘伝なのは分かってんだ。でもな。こんなの見せられちゃぁなぁ」

「秘伝も何も。俺のスキル(技能)ですから」

「ああ、技能スキルだろうけどよ」

 

 ん~。見事に話がかみ合ってないなぁ。


「あ~。あんた親方かい?」

「ああ、そうだが、あんたは?」

「俺はルーカスってもんだ。そこのサトシと一緒に冒険者やってるんだけどさ。サトシが言ってるスキルって、腕前の事じゃないんだわ」

「あ?どういうことだ?」

「俺たち魔法が使えるからよ」

「魔法って……魔術の事か」


 どっちでもいいよ。なんでそこ拘るの。


「あ、ああ。そうね。魔術魔術。それで作ってるからさ。あんまり大量生産できないのよ。で、オタクんところは腕がいいって冒険者ギルドで聞いたからさ。おんなじ物をできればいっぱい作って打ってほしいなと」

「は?これを何個も作れってのか!?」


「そ、まったく同じじゃなくていいんだよ。機能が同じなら」

「機能?」

「ああ、これストーブだからさ」


「ストーブ?ストーブは普通鋳物で作るだろ?こんなぺらっぺらの鋼板じゃあストーブになんねぇだろ」


「それがなるんだなぁ」


 というわけで、ここからが俺の出番だ。灯油を売り込むぜぇ!

 通販番組を見て勉強したトーク力。とくとご覧あれ。まあ、学部生からは胡散臭いと不評だが……


「今回見てもらいたいのはこの油だ!」

「油?ストーブはどうした?」

「このストーブ用の燃料なんだよ。で、こいつをこの下のタンクに入れてやって……、このガラスの蓋を外すと、中から芯が出てくる。この芯が下の油を吸い上げてくれるから、これに火をつけると……」


「あったけぇ。なんだこれ。こんなにすぐ火が付くのか!」


 そりゃ薪ストーブなんかと比べれば雲泥の差だよな。


「どうだい?便利だろ。で、これをまずは1個作ってもらいたいんだ。ばらして構造をまねてほしい。作りやすいように簡略化しても構わんが、ちゃんと燃焼するように作ってもらいたい。あ、そうそう。たぶん手に入らない部品が幾つかあると思うから、それはこっちで準備する。どうだい?受けてくれるかい」


「どうするんですか?親方!」

「うるせぇ。今考えてんだよ。黙ってろ!」


 ガタイのいいおっさんは、顎に手を当ててウンウン唸りながら考え込んでいる。


 厳しいかなぁ。まだサトシにしか作れないパーツも多いからなぁ。まあ、それは提供するにしても。さっきの感じだと厳しいか……


「時間はどのくらい貰える?」

「逆にどれだけほしい?」

「ひと月もらえるか?」


 ひと月かぁ。結構かかるなぁ。まあ、一個出来上がればその後は早そうだしな。ほかにも作ってもらいたいものがあるんだけど……それはまた別の街で頼むか。


「ああ、良いよ。でも、なるだけ早くしてくれよな」

「わかった。できたらどこに連絡すればいい?」

「そうだな。俺は週に一度はここに寄ることにするよ。そん時に教えてくれ」

「わかった」


 いえぇい!商談成立。取り敢えず俺たちの石油王生活一歩前進だな。

この作品をお読みいただきありがとうございます。

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