一致
ええい。サトシってこんなだっけ?なんか最初の頃よりずいぶんおかしくなってない?データ壊れてきた?
そんなことを考えながら、階段を無視して二階から飛び降りる。
流石に着地は反重力を使いソフトに。
でないと床抜けるからね。
で、そこから食堂に向かって勢いよく飛び出すべく踏み込むと
バギッ!!
床を踏み抜いた。
あ~チクショウ!
あきらめてゆっくりと食堂を目指すことにする。
さて、気持ちを落ち着け、食堂のドアと思しき扉を開ける。
ギィィ。
「あ、ルークスさん。早かったっすね。」
わお。粉々じゃねぇか。
床にはサトシとアイに蹂躙されたと思われるグールのパーツが散乱している。
「可哀そう。」
つい声に出た。あまりにグールが不憫でならない。ここまでされて報告事項にも上がらないっていったい……
「何がっすか?」
「いや。何でもない。」
もう何も聞くまい。
というわけにもいかんな。
状況を把握しよう。
「で、お前たちがこの部屋に入った時の状況を教えてもらえる?」
「ああ、そうですね。俺とアイが、あそこの……ちょうどルークスさんが入ってきた扉を開けると、ここの椅子に死体が座ってたんですよ。」
食堂中央に置かれた豪華なダイニングテーブルの周りには椅子がぐるりと配置されている。サトシはそれぞれ指さしながら説明する。
どうやら、グールたちは、この豪華なダイニングテーブルに向かい、食事でもするかのように椅子に座っていたらしい。
いやいや、真っ先にその状況報告しない?普通だったら。
「アイと二人で、『食事中に皆死んじゃったのかなぁ。』なんて話してたんですよ。そしたら、急に奴らが動き出したんです。」
「で、ずたずたになるまで破壊しつくしたのか?」
「いや、そういうわけではなくて」
随分歯切れが悪いな。
ん?
なんだ。テーブルとイスは無傷に近いな。なんでグールだけ?
それに、これ斬撃じゃないな。
一部残ってる体のパーツにはわずかに焦げた服が付いている。
火炎系の魔法なら跡形もなく燃え尽きてるしな。
かなり出力の強いライトボールで破壊したってことか。
ってことは。
「アイか?こいつ等やったの。」
アイは、視線を泳がせながら、もごもごと何かを言っている。
「……」
「いや、あの。これは。」
サトシが何やら言いかけたとき
「アタシがやったのよ。悪い!?」
別に悪くは無いけどさ。でもなんで……
「……、もしかして、怖かったのか?」
「ルークスさん。仕方ないじゃないですか。いくら強くなったからって女の子なんですよ。無理もないですよ。こんなとこに連れてきた僕たちが悪いんですから。ね?」
ね?じゃねぇよ。サトシお前、アイの前で散々デュラハンたち倒してきただろうよ。むしろそっちの方がひどくないか?
って言うより。
「ホントに怖かったのか?」
「悪い!?」
悪態をつくその様は、まさに少女のそれだった。
いやはや。驚いたね。
いや。
何だろう、何か引っかかる。
「だから俺たちでアイを守ってあげましょうよ!」
あ~。そういうこっちゃないんだけどな。
あれ、なんだっけ。今考えてたの。
ま、いいか。
「別に、身を守るためにやったことならとやかく言わんさ。」
そうか。サトシはアイを庇ってたのか。まあ、それならあの時報告がおかしくても問題は………
無い訳無いな。
「そんなことより、ホウレンソウをちゃんとやれ!」
「あ、すいません。」
「ほうれん草」
アイ。野菜に反応するなよ。どういうAIしてんだよ。
「まあいい。それはそれとして、ちょっとこのグール調べるぞ。」
サトシはぽかんとしている。
「何をですか?」
「服装とか、持ちモンだよ。俺が2階で見たグールはどう見てもメイドだった。」
まあ、メイドコスが趣味の貴族って線もわずかながらに残ってはいるが……
「ここに居た奴らの服装、何か憶えてるか?」
おそらくアイにライトボールをぶつけられたんだろう。今のアイのステータスなら、グールなんぞひとたまりも無いからな。まだ、パーツが残ってるだけましな方だ。
「どうでしたかね。一瞬の出来事でしたからね。」
そう言いながら、サトシはグールの死体を見て回る。
「あ、ここに首飾り発見!」
「どこにあった?」
「ここです。壁の方まで吹き飛んでました。」
「良く見つけたな。」
どれどれ。
ん?
これ、どっかで見たな。どこだっけ?
最近記憶が……。
脳みそ使い過ぎだな。実際1000倍速で使ってるわけだしな。無理も出るよな。
あ、思い出した。
宝物庫だ。
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