ジェノサイドマラソン
俺たちの悲痛な叫びに耳を貸すことなく、サトシは一人突っ走る。
何考えてんの?この子
「お前、オフラインでRPGやってんじゃねーんだぞ!ちったぁ俺たちのこと考えろ!!」
アイが死んだ魚のような眼をしている。
すごいな、AIの精神状態を追い込むなんて……できるんだ。そんなこと。初めて知ったよ。
「大丈夫です。こっからずんずんテンポアップしますから!」
「なっ!」
何言ってんのこいつ。そこじゃない。そこじゃないのよ。問題は。
坑道入り口の骸骨騎士は、やはり先ほどより増えている。40体ほどになってるだろうか。こっちのレベルが上がるとそれに合わせて敵も強化されるみたいだな。
しかし、突っ走るサトシにはそんなことは問題ではないらしい。
明らかに最初より本数も大きさも増している棘で骸骨騎士たちを串刺しにする。
だが、今回も一部の骸骨騎士がすんでの所で回避している。
取り漏らした骸骨騎士は俺とアイが処理する。アイも熟練度が増したのか「ソーラレイ」の照射範囲を絞り威力を向上させている。
骸骨騎士1体なら一撃で屠れるほどになっていた。
俺も短勁を駆使しながら、サトシの取りこぼしを処理してゆく。
サトシは茨の中を舞うようにすり抜けながら骸骨騎士を切り刻む。
ものの数分で骸骨騎士は一掃された。
サトシは最後の一体を切りつけたステップの勢いそのままに、坑道内へと駆け込んでゆく。
っと、いや。まて。サトシ!!
俺の言葉が届くより前に、坑道の中に消えていった。
ちっきしょー!
アイにはすでに迷いはないようだ。サトシの後を追って坑道に駆け込んでゆく。
俺が中に入った時には、すでにデュラハンは串刺しになっていた。
どうやら、坑道壁面の広範囲にわたって棘を出すことで、逃げる場所を与えなかったようだ。
サトシの棘がデュラハンの急所を串刺しにすることで、一撃のもと撃破したようだ。
ってか、やばくない?もう化け物じみてきたんですけど。
サトシは周囲の棘を消し去ると、また次の獲物に向かって駆けだす。
やば、これ三週目も行く気ですよ。ってか、何週回るの?これ。
その後、サイクロプス、ミノタウロスも同様に屠る。
確かにこの倒し方なら、対策の打ちようがないかもね。AI泣かせだよねぇ。
などと言っている場合ではなかった。
呆然とする俺をよそに、また転移の魔方陣が現れては消え、現れては消える。
まただ、また坑道入り口前だ。
……
5週目以降は数えるのをやめた。
もう、どうにでもなれという心境である。
相変わらずサトシはノリノリで、アイの目はハイライトを無くしている。
こんな表現できるんだね。アニメでしか見たことないよ。
俺も、なんだか楽しくなってきた。
ウェーイ!!
……
なんか、俺の職業「格闘家」になってるんだけど。どういうこと?




