小休止
「とりあえず、今日のところは休まねぇか。時間も遅ぇし。」
「家に帰りたい。」
アイ。お前はすぐに家だな。まあ、今回ばかりは気持ちもわかる。
「え?レベル上げましょうよ。」
ちょっとお前おかしいぞ?
なんでそんなにもレベルジャンキーなの?
データ壊れてたかな。それとも元々か。
「いや、まあ落ち着け。さっきそれを学んだところじゃなかったっけ?勇んで突っ込んで行っても、結局徒労に終わるだけだぞ。ゆっくり休んで今後の方針考えるのも大事じゃないか?」
「……」
サトシはお預けを喰らった子犬の様にシュンとしている。大丈夫かね?こいつ。ちゃんとしたデータ取れるんだろうか。
「そうですね。わかりました。いったん帰りましょうか。」
全く納得している様子は無いが、しぶしぶながら了承してくれた。ありがたい。
「じゃあ、ヨウトに戻るか。」
俺たちは町の外れまで来たところで、ヨウトへと転移する。
転移後の軽いめまいを感じながら、ヨウトに到着する。
どうやら従業員たちは、各自夕食を済ませて自宅へ戻っているのか静まり返っていた。すでに就寝している者もいるようで、明かりの着いている家もまばらだ。
「俺たちもさっさと休もうぜ。あ、俺は飯はいいや。このまま部屋で休ませてもらうよ」
「そうですか、食事しながら作戦会議でもと思ったんですが……」
「ああ、それも良いかもな。わかった。一度部屋に戻る。飯の準備が出来たら呼んでくれ。」
「あんたもたまには食事作ったら!?」
おう、アイが厳しいね。
「俺の料理食べたい?」
「あぁ」
サトシが口ごもる。見た目的に料理上手にゃ見えないよな。
「フン。私が作る!」
おうおう、鼻息の荒いこって。
「よろしくね。」
さてと、いったんログアウトするか。
俺は部屋に戻ると、周囲の様子を確認してからログアウトする。
さっきのログアウトからほとんど時間は立っていないが、疲労感は半端ない。痛む頭を摩りつつ、自分のデスクにあるPCに向かう。
さてさて、ログアウトした理由はほかでもない。wikiに頼ろうと思っている。基本ゲームは攻略サイトを眺めながらやるもんだと俺は思ってるので、ズルをしているという感覚もないし。このゲームに対する思い入れもない。
よーし。調べまくるぞ!
と言う事で、前回のwiki確認ではミノタウロスやサイクロプス、それにデュラハンなど敵データについてはあまり確認していなかった。
もし攻略法があるならそれを参考にするのが楽だし、無いのなら他の方法を試す手がかりみたいなものが欲しいところだ。
だが、いざ調べてみるとなかなか厳しい。実際プレーした人数も少ないし、仕方ないところだが。
「っと。なんだこれ?」
つい声が出た。
wikiの文中にリンクが張ってある。ずいぶんわかりにくい単語にリンク付けたなぁ。
クリックしてから、セキュリティー的に問題がないか心配になった。最近学内LANのセキュリティーに頼りっぱなしで、そのあたりの危機意識が下がってる気がする。
まあ、もう押しちゃったから後の祭りだけど。
などと考える暇もないほどスピーディーにサイトが表示される。
「軽いな。このサイト」
広告も無く、異常に軽い。文字情報ばかりのサイトだ。
「おわぁ!なんだこれ。」
すげーぞ。ほしい情報てんこ盛りだ。
イベント攻略情報
モンスターのステータスと攻略法
スキルの詳細と体系
なんだ?内部情報か。確かにあのwikiも内部の人間臭かったけど、こっちは完全にそれだな。
で、エンドゥでのイベントはっと……
いやいや、共闘イベントじゃん。
そりゃ敵が強くて多い訳だよ。
……
一気にやる気失せたな。
でも、サトシは突っ込むって言いそうだなぁ。あいつの性格からして。止めたところでいずれ突っ込むだろうし。
となると、モンスターの攻略法頼みか。
デュラハン
サイクロプス
ミノタウロス
一応載ってるな。
なんだ?弱点あるじゃん。先に言ってよ。
デュラハンは胸、サイクロプスは頭、ミノタウロスは角。
それぞれにコアが隠されてるってさ。
いや、これ、やっぱり制作者だろ。絶対。こんなの分かる訳無いじゃん。どんだけやりこみゃそこにたどり着くのよ。おかしいだろ。
まあいい。取り敢えず有益な情報は得られた。
でも、マンティコアは載って無いな。ガチンコ勝負なのかなぁ。
なんかいい攻略方法ないかな。
と、スキルを確認してみる。
どうやらこのページは作りかけのようで、無属性のスキルが数個載っているだけだった。
そういえば、あいつのスキル「創造」は何ができるんだ?
「創造:
実在する物質はもとより、実在しないオリハルコンやミスリル、エキゾチックマター等についても生成可能であるが使用者のイメージ力に依存する。
攻撃・防御スキルの作成、強化が可能。」
は?
えーと。
は?
ぶっ壊れスキルじゃねぇか。何でもありでしょ。これ。
でも、これなら何とかなるかもしれんな。
とりあえず、サトシのスキルを鍛えるのが近道かもな。
ああ、それにしても頭が痛てぇ。




