表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/31

2023/1011 『子どもたちの逆襲』とのコラボ(作:カオス饅頭)

【文章】カオス饅頭

【コラボ先】子どもたちの逆襲 大人が不老不死の世界、魔王城で子どもを守る保育士兼魔王 始めました。

作者:夢見真由利 様

ncode.syosetu.com/n0124gr/

【子どもたちの逆襲】890話より(https://ncode.syosetu.com/n0124gr/890/)

シュライフェ商会にリオン用の手袋を作って貰った時の事。


◆ 【マリカ一行、五年前のオリオンへ】


 手袋が並べられると、奥にあるものに目がいく。とてもリオンの物とは思えないし、自分達が使うにしても大き過ぎる。

 マリカは「この大きな手袋はなんです?」と、つい口に出ていた。


「私達で使って試験をする為の物ですね。

……騎士様のは出来てしまいましたし、折角だし貰ってやってくれませんか?」

「はあ……、そういう事なら」


 貰ってしまった大きな手袋。

 特に使い道はないのだが、何かに使えないかと考えてしまうもまた楽しいもの。

 そうしている内にフェイと一緒に居るリオンを見つけたので、手袋の使い道でも話題にしようかと彼に駆け寄った時の事だった。


──ぐにゃり


 突如、景色が歪む。

 世界が蕩けたような感覚と立ちくらみに襲われて意識が朧気になった。

 自分の脳に異常があるのかと思ったが、それは否。ふと過去に起こった似た様な現象が頭を過り、確信に至るのだった。


 これは異世界への転移であると。



 マリカがパチクリと瞼を開くと、世界が変わっていた。

 冬のアメリカを思わせる平地に居たはずが、夏の潮風を肌に感じるようになっていたのだ。少し水の国フリュッスカイトに似ている。

 先程の立ちくらみは嘘の様に消えており、パチクリと瞼を開閉させて辺りを見やれば、月光に照らされ見慣れた二人が両隣に居るのが分かった。


「リオン!フェイ!」

「うおっ、マリカか。良かった、今度は一緒なんだな」

「前はバラバラでしたからね。ところで、此処は一体……あれは?」


 リオンとフェイの視点がある一点に集中し、マリカもその方角を見ると、身体が固まる。

 『ソレ』を見た事は無かったが、ある意味知名度は高かったので、つい口にしてしまう。


「魔王城……?」

「「はぁっ!?」」


 マリカの呟きに、魔王城を根城とする二人の男子は大いに驚く。

 誤解を解くため、彼女は続ける。


「あ、いや、私達の住んでいる魔王城じゃなくて、ええと。

私の知識の中には『勇者アルフィリーガ』とは別の勇者をモチーフにした御伽話があるんだけどね。

子供にも分かるようにした『物語の中の魔王城』そのままの姿だったの」

「ああ、そういう事か。

確かに無駄に尖って先端が何故か金色の城壁とか、悪魔の顔を模った塔とか、こんな大袈裟な見た目、物語の中ででしかあり得ないしな」

「設計者のセンスを疑いましたがそういう事ですか。そういえばあの扉にはなんで7つの窪みが?」

「多分、窪みに宝石みたいなのを嵌めると開くんじゃないかな。世界中に宝石を守っているボスキャ……じゃなくて守護者的なのが居て」


 ゲームの中の『お約束』に異世界人目線で男子二人が話す時に、マリカが所々で補足などを加える。

 そんなやり取りをしていると、後ろから声がした。


「なんじゃお前ら。人ん()の前で」

 

 途端、三人は必要以上の速度で振り返る。こんな所に住む人間はどんな顔なのかと気になる者だ。

 しかし意外な事に、視界に入ったのは普通の老人。

 敢えて言うなら背筋はピシリとしていて髭は整えられ、今はラフな服装をしているが、燕尾服を見ればどこぞの執事と言われても違和感が無い佇まいだった。


 マリカは反射的に謝ろうとしてしまうが、逆にリオンは警戒値を限界まで上げて身構えた。

 目の前のこの男は、何時でも襲い掛かれる体勢になっているのだ。

 しかもうまく隠しているが、間違いなく世の中の表舞台には出てこない『裏』の戦い方をする人間である。


「ほっほっほ、そう身構えんとも何もしなければ、取って食おうとはせんよ。

しかし、じゃ。見た目以上に年いっとる?

いや、別にそうでもないかの。転生……と、いうより知識を受け継ぐ系統の能力か」


 老人はジッとリオンを観察する。


「何者だ!」

「おっと、こりゃすまんの。

儂は【ドゥガルド・フォン・ラッキーダスト】。まあ、見ての通り隠居中の爺じゃ。

この『旧魔王城』に住んで、代官なんてものをやらしてもらっておるよ」

「やっぱ魔王城なんだ。でも、『ラッキーダスト』って……。

まさか、お姉様とアダマスさんの?」


 マリカが過去に出会った異世界の住人を思い出した。

 メタな事を言えば作品間の時間の流れの違いとか、リアルに言えば異世界間の時間軸のズレ。

 そんな事情があってもう、あの誰とも仲良く出来るツインドリルの『お姉様』より年上なのだがお姉様な事には変わりはない。

 すると、老人ことドゥガルドは顎に手を当てて考えた。


「ふむ?アダマスの知り合いか。異世界からの来訪者達よ」


 口の動きや訛りで自動翻訳を使っているかは、異世界人か否かを見分ける基本技能だ。

 マリカも異世界の交流はもう三度目なので、驚きはしない。

 一度目は此方から向こうへ、二度目は向こうから此方へ。


「はい。『アルケディウスのマリカ達が来た』と言って頂ければ解ると思うのですが……」

「ほーん。しかしアイツに『姉』というと……。折角じゃし、ちょっと確認を取ってみるか。

おーい、『アセナ』ーっ」


 掛け声と共に『旧魔王城』の影から現れたのは、褐色の肌と赤い髪。

 そして狼の耳と尻尾を生やした、マリカと同じくらいのボーイッシュな少女だった。

 先程まで裏で草刈りをしていたらしく、庭師のような格好をして首にタオルをかけた姿がやけに似合っていた。

 彼女はアセナ・ルパ。アダマスの修業場(学校)時代に『姉貴分』として一緒に育った、アダマスの『寵姫()』である。現在12歳。


「うぃーっす、なんでしょーっ!」

「お前の知り合いらしいが、知っとる?」

「え?いや、知りません」


 マリカとしても「え、誰?」と言いたいところ。

 アダマスの義妹にしてマリカの事を妹呼ばわりする『お姉様』が出て来ると思ったので驚きだ。

 目を真ん丸にしていると、ドゥガルドが苦笑いをして振り向いた。


「ああ~、こりゃ決定かの。ウチは敵が多いから、知り合いを偽る輩が後を絶たなくてのう。

異世界でお金持ちの知り合いを作るのは確かにお約束じゃが、期待に添えられなくてすまんのう」

「い、いやそんな事はなくて……!」


 何故、知らない人が出てきたのかは解らない。

 確かに『お姉様』から、アダマスには姉貴分が居るとなんとなく聞いた覚えがあるが、こんなに小さい子の筈は無かった。

 頭がパニックで真っ白になっていると、フェイが手を上げる。


「少々宜しいでしょうか?」

「ふむ、聞こう」

「この世界ではダイヤモンドの貨幣を使っているのではないでしょうか?」

「金剛貨の事じゃな。使っておるぞ」

「でしたら、マリカ。確か以前にお土産としてダイヤモンドの貨幣を貰った筈です。それを出しては貰えないでしょうか。

用途として信用が関わるそうなので、身分の証明にはなりませんか?」

「……良いじゃろう。出してみろ」


 ああ、そういえば。

 特に嵩張るものでも無いと持ち歩いていた、革袋(財布)の中に入れてある小さな箱を取り出す。

 デザインは指輪を入れる箱に似ており、蓋を開くと中から目当ての物が顔を出す。

 中心に紋章が入っている、独特のカットが成されたダイヤモンドである。

 『お姉様』が言うには、カットの切り方やダイヤの種類などで価値が変わる小切手的な使われ方をするとの事で、身分を証明する様々な情報も詰まっているらしい。


 ダイヤの煌めきを見たドゥガルドは感心したように鷹のような眼を開き、何処からともなくピンセットを取り出した。

 それで金剛貨を丁寧に摘まむと、真剣な表情でジッと見つめて鑑定をはじめる。


「自分で確かめるんですね」


 これを聞いたのは、金剛貨は基本的に貴族専用とされると知っているアセナだ。

 真贋を見極める事の出来る宝石鑑定士を雇える財力と権威を持っている事が、金剛貨の小切手としての価値を生むからだ。

 確かに真贋を見極める知識も貴族足りえるが、殆どの貴族にそんな技術は無く、形骸化した信用の付け方だ。

 しかしドゥガルドは、敢えてそれを行っている。


「若い頃は海に出ていたからの。

船での『商売』は自身の眼が肥えておらんと失敗する職業なのじゃよ。

大航海時代でも鑑定の出来ん無謀者がガラクタばかり持ち帰って破産した例は幾つもあるしの」


 因みにアセナには伏せているが、此処で言う『商売』とは『海賊』の事である。

 海賊船はその性質上小型の物が好まれ、逆に貨物船は大型になる。

 なので船を襲ったは良いがどれが本当に価値のある物かを見極めて略奪しなければいけないという事だ。


 そして鑑定結果が出る。


「……ふむ、あい解った。確かにウチの関係者には違いない」

「良かったあ……。ありがとうございます」

「しかし知り合いと言うのも難しいところかの。なあ、お前の知っとる『アダマス』って何歳か解るか?」

「確か12歳って聞いておりますが」

「やはりの。どうもお前達が会ったのは今から『5年後』のアダマスらしいの」


 マリカはほっとしてから、仰天の声を上げるのだった。


「……ええええええ!?」


 金剛貨は元の持ち主や作成日なんかの情報も解るようになっており、故にこれが『未来の物』である事も理解出来た。

 異世界間の移動で時間軸がずれるのはよくある事なのである。


(オルゴートの猶子にしてアダマスの義妹となる『シャルロット・フォン・ラッキーダスト』。これが作られた時は11歳か。

現代における貴族間の繋がりとそれぞれの家庭事情から、猶子になった大体の経緯は分かるの)


 ドゥガルドは溜息を付いた。

 取り敢えず経緯とか聞いておかなければいけないか。

 あ、そういえば名前も聞いてないな。此方は名乗ったというのに。無礼者め。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ