2022/1223 『子どもたちの逆襲』とのコラボ(作:夢見真由利 様)
【文章】夢見真由利 様
【コラボ先】子どもたちの逆襲 大人が不老不死の世界、魔王城で子どもを守る保育士兼魔王 始めました。
作者:夢見真由利 様
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【2022/1221の話のリオンサイド。フェイ視点】
なんだか、胸の奥がチリチリする。
目の前で繰り広げられている光景を見て、リオンの見たことのない表情に、楽しそうな様子に。
嬉しいと、楽しいと思う反面、心の奥底に言語化できない痛みを感じるのだ。
「結局、ボク達って似た者同士なのかもね」
「きっと、そうなんだろうな」
無言で互いを肯定し合い、理解し合う対等の存在。
『親友』
そんな言葉が彼を見て頭を過った。
とても、とても悔しい事ではあるのだけれど。
「うわぁっ、リオン兄が負けたの始めて見た」
兄弟達が絶句する。
それもその筈だ。魔王城にやってきた、謎の少年。
アダマスとの手合わせ。練習試合。
彼は不老不死者のゴロツキを徒手で倒したという言葉通り、リオンの初撃を無力化。
その背を地面に付けたのだ。
リオンと同年代の実力者など殆どいない世界ではあるけれど大人であってもほぼ無敗。
この『星』最強の戦士の一人と信じていた人物が、あっさりと敗れた事で見ていたアーサーやクリス達も動揺しているようだった。
「まぐれ、だよな?」
「いや、まぐれであろうと負けは負けだ」
ひらり、と飛び起き、身体の埃を払ったリオンは、真顔で、強い意志の籠った眼差しをアダマスに向ける。
「まぐれ、であることを否定はしないんだ」
ふふん、と鼻を鳴らす様なアダマスにああ、と頷くリオン。
その眼から自信が失われた、訳では無い。
「まぐれ、というより初見殺し、だけどな。
相手の動きを読み、動かせずに討ち取る。実戦的な戦い方。
そうだと解れば、二度目は喰らわない」
「うん、まあ、君はそうだろうね」
リオンが告げ、彼が頷いた通り、二戦目はあっという間にリオンの勝利となった。
どこかホッとする。
そして三戦目は技の出し合い、から始まって、後半は意地の張り合い込みの泥仕合。
「少し、休憩でもなさいませんか?」
エルフィリーネが文字通り、水を差さなければまだ続いていた可能性が高い。
どっちも多分、自分から負けを認めるなんてしそうになかったから。
「ちょっと失礼」
「何をしているんだ?」
「この水は美味しいけれど、ちょっと一工夫をね。こうした方が運動の後の身体には吸収されやすくていいと思うよ」
マリカのような手際の良さで作り上げられた飲み物を僕も貰ったけれど、確かに乾いた喉と身体に染みわたるようだった。
「リオン、頑張るね……」
「アダマス、お前もな」
二人並んで飲み物を喉に通す二人を見て、胸がチクリと微かな音を立てた。
自分にはできないことだ。
リオンの隣に、対等の力を持つ者として並び、共に笑い合うことは。
二人の会話は、兄としての覚悟から話が始まって、義理の妹に向ける兄への想いへと変わっていく。
そこからのリオンは、本当に始めて見るリオンだった。
妹への愛情と、のろけ、そして互いの、かなり生々しい恋愛事情にまで話が至るとリオンは本当に僕らには見せない、子どものような笑い顔でアダマス少年と会話している。
ノリノリの様子で謎ポーズをとりながら、己が妹との関係を赤裸々に語る内容を聞くリオンの頬に冷や汗が流れ落ちた。
「なっ! その歳で本当にそこまで?」
「ボクは、シャルの全てを受けとめる覚悟はできているから。
まあ、ボクは話してみた訳だがリオンはどうなの?」
「う……それは、だな……」
顔をエナように真っ赤にして、それでも語るリオンとマリカの会話は、アダマスに比べたら健全なお付き合いだと、だけ言っておこう。
「はは、良いねえ。青春だ」
「うっせぇ」
「別に悪いって言ってるわけじゃないよ。むしろ羨ましいくらいだ」
じっと緑柱石の瞳でリオンを見つめる彼の言葉に嘘は無い。
それは解る。
解るからこそ、リオンもまたその黒曜石のような瞳に、真っ直ぐ彼を写しにているのだ。
ふう、と視線を上に逸らして彼は微笑う。
「結局、ボク達って似た者同士なのかもね。好きな人の為に譲れないってさ」
「あの話を聞いた後だと、否定したくもなるけど、きっとそうなんだろうな。
お前には、なんだかまったく違うのに、同じ匂いがする。
精霊なんかいない世界の人間なんだろうに『精霊』の力を感じるんだ」
「ハハハ、もしかしたらどっかで繋がっているのかもね?」
互いを肯定し合った二人は、顔を身わせるとまた手合わせを始める。
それは互いを高め合う為の技と技術の交換。
目に見えない思いを贈りあっているようだった。
「あいつらと俺達は本当に、繋がっているのかもな」
彼らは僕達と同じ世界の住人では無い事は解っている。
マリカの語ったような別の法則を持つ異世界の者。
ちょっと話を聞いただけでも、世界の在り方は違い過ぎる。
でも、その言葉を僕は否定できなかった。
「別の世界でも、きっとアイツはしっかり妹を守るし、強かに領主をやっていくだろう。
だから、俺ももっと気合を入れて頑張らないといけない。
マリカを守る為にも」
「僕では、彼の代わりにはなれませんか?」
遠い、親友に贈られた信頼が羨ましくて、呟いた僕の額を
「何を言ってるんだ。フェイ」
リオンの手が笑う様に叩く。
「あいつは大事な友達で、同胞。お前は相棒。変な対抗意識持つんじゃない」
「……そう、ですね」
我ながら単純だ。そんな一言で胸のチリつきが消えるのだから。
「俺は、自分が恵まれていると改めて思う。俺にはお前が居る。
でも、あいつは……一人だ」
遠い、親友。同胞。
「まだ会えるといいんだけどな」
「はい」
今は、素直にそう思う。思える。
次に来た時は、素直に笑って迎えられるように、今から笑顔と話しかけ方の練習をしておこう。