2022/1221 『子どもたちの逆襲』とのコラボ(作:カオス饅頭)
【イラスト/文章】カオス饅頭
【コラボ先】子どもたちの逆襲 大人が不老不死の世界、魔王城で子どもを守る保育士兼魔王 始めました。
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リオンとアダマス
魔王城にて。
マリカやシャルと他の女の子達でガールズトークをしてる時。
良い国だな。
何が良いって、皇帝(これは一日程度の時間で得た知識で作ったボクなりの翻訳で、本当は『王』や『天子』なのかも知れないが)の思想が柔軟なのが良い。
随分とお転婆な『皇女』(ボクの翻訳によるもので、もしかしたら『姫』かも知れないが)様の性格を許容しているのだから。
聖なる乙女であるマリカは皇女という事でほぼ間違いないだろう。
ボク達の世界ではじめて会った時、彼女はシャルと話せていた。
妹はボクほど言語学が得意じゃない。
つまり翻訳チートが働いていた訳だが、それは多くのチート能力者にとって副次効果の場合が多い。
主となる能力を持っている可能性が高いが、重要なのは彼女がチート持ちという事だ。
異世界からやって来たチート能力者が、元の世界の新しい発明品を広めるのはよくある話。
市場で情報を漁っていた時、聖なる乙女は様々な発明品をして保育の概念を持ち込んだと聞くしね。
だが、それを実行するには皇帝が寛大である必要がある。不老不死の存在するこの世界では特に難しい。
「よきにはからえ」と、よっぽど政治に興味がないという可能性もあるが、実際に見た街の様子は「よく働いている皇帝だな」という印象。
それに加えてこの世界ではじめて会った時の情報、これだけの城を『個人の力』で貸し切れる権力(ウチは王族並の権力があるが、次期領主のボクでも無断で城を貸し切る事は出来ない)、なにより読心術で様々な『真実』も読み取れた。
だからと言って、マリカに対する扱いが変わる訳でもない。
本人は隠したがっていたし、変えてシャルが得する訳でもない。
あのままの距離感が理想的なのだと思う。
さて。男チームでまとまった訳だが、これからどうしようか。
ボクは『隣で』ヘトヘトになりながら座るリオンを見た。まあ、ボクもヘトヘトな訳だが。
チンピラと戦った時のネタでお喋りをしていたら、流れで別の場所に移って手合わせをする事になったのだ。
結果は一勝一敗一分。審判はフェイ。
初戦は初見殺しの奇襲でボクの勝ち。
次戦はリオンが警戒していたので、初見殺しを差し込む隙を探りつつ打ち合っていたら普通に負けた。
そして最後が、勝負というより意地の張り合いで引き分け。
ボクの戦闘要員としての性能は「技が豊富」といえば聞こえが良いけれど、熟達している訳でも、戦いの才能がある訳でもなし。
つまるところ「小手先の強さ」でしかないので、それら全てを吹き飛ばす一定レベル以上の敵と戦うと普通に負ける。
なので勝つには『ズルい』事をする必要があるので、暗殺術や邪道技なんかの初見殺しの技と読心術でのイカサマを合わせて、何とか張り合っているといった感じだ。
まあ頑張った方。
見合って構えを取った時に「あ、コレって普通にやったら勝てないヤツだわ」と思うくらいには実力差があった。
アセナやハンナさんといった遥か高みの人達と組手をしているから、そういうのはよく分かるんだ。
兎にも角にも疲れ切ったボク達2人は、壁を背もたれに一息付いていた訳だ。
フェイやアーサーやアルなんかは、戦闘中は見物で盛り上がっていたが、ボク達が疲れて全然動かなくなったので向こうで別の事をしている。
さっきそこら辺の材料で作った経口補水液を渡す。材料は水・蜂蜜・レモン水・塩。
無断で拝借しては悪いと思い、さっき『お手伝いさん』に聞いてみてオッケー貰ったからきっと大丈夫。
何か聞かれた時の為に名前を頂戴したが、確か『エルフィリーネ』さんだったか。読心術が効かなかったところを見ると只者ではない。
まあ、こんな大きな城だ。心理を察せない動きをする手練れくらい居て当然といえば当然か。
顔に汗を浮かべつつ、ボクは疲れていないフリをし、リオンに話しかける。
まるでサウナの我慢比べだな。
「リオン、頑張るね……」
「アダマス、お前もな。
何考えてるか分からないところあったけど、結構熱いヤツだったんだな」
「ボクには負けられない理由があるからねぇ」
「どんな理由だよ」
自分用の経口補水液を飲みこみ、彼に視線を合わせた。
「ボク達はこの世界に何時まで居られるか分からない。情けない状態で去ったら、その時の印象でマリカに伝わる訳だろ?
妹の『妹』であるマリカにだ。
ボクは出来るだけ『格好いいお兄様』でありたいのさ。だから底力くらい湧いて当然なのだ」
「なんかお前、妹への愛情が深いな。
そのまま付き合っててもおかしくない……って、なんだその顔」
途端、リオンが引いた表情をしていた。
彼の黒曜石のような瞳を覗いて鏡代わりに使うと、ボクの顔がニヤけているのが分かった。
おっといけない。夜だからかな、変なテンションになりがちだ。
でも、嬉しいものは仕方なし。
「うへへ、分かる?」
「お、おう……。そうなのか。
でも良いのか?どんなに慕っているとはいえ、実の妹なんだろ。
マリカは近親婚は良くないって言ってたぞ」
「ああ、義理の妹だから大丈夫。
ちょっと色々あってね、婚約する事になった」
「思ったより進んだ関係だったんだな」
「しかも出会ってから婚約を決めるまで一日足らずだった」
「早すぎるだろ」
「次期領主として決断力は欠かせないのだ」
「……変なヤツ」
ボクはキュピーンと謎ポーズを決めた。
会話が弾むと、普段やらないようなノリになっていたりするよね。ボクとリオンは会話の相性が良いのかも知れない。
しかし読心するに、ボクの『婚約』という言葉に心が大分動いていたね。出会ってから決めるまでの時間にも。
ああ……なるほど。
「ところでリオンは、マリカとはどれだけ進んでるんだい?」
「ぶほっ!突然来たな。なんで分かった!」
主に読心術の成果です。
と、言っても良いんだけど、説明とか面倒だし、何時ものはぐらかしで良いか。コツは真実を混ぜる事
「そういうのって他人から見たらバレバレだからさ」
「そんなもんなのか」
「そんなもん。たぶん、めいびー、きっとそう。
もしかしてボクと同様に婚約関係だったりする?」
「……まぁな」
リオンは上を眺め、ポツリと肯定した。
顔には照れと対照的に、どこか誇らしさが滲み出ている。
なんとなく、たまにパーティーで見る誇り高い貴族の雰囲気を思い出す。
そして、それは当たっているのだろう。
マリカが皇女だとすると、婚約者は貴族である必要があるのだから。
貴族なのにこんな時間でも仕事はなし?
いや、もしかすると此処に居る事が仕事なのかも知れない。
つまり姫君と、それを護る騎士の関係なのかもね。
しかし騎士が愛人ではなく婚約となると家柄……いや、先ほどの熟達した戦闘術を見るに出生の関係かな。
例えばボクが皇帝なら国に有益な『聖なる乙女』を他国からの干渉から護る為に婚約者なりを用意する。
しかしそれはかなり信頼の出来る人物で、尚且つ実力者である必要がある。
だがリオンは見た目通りであり、手合わせの結果から不老不死でもないのも分かる。この不老不死が尊ばれる社会でだ。
だとすれば『転生』とかありそうだね。
ボクとは違った本当の転生。
また、この警備兵も見かけない城は護衛対象が離れていても安全と判断されている。
何か特殊な魔術的要素が働いているのかも。そしてこういった施設をボクは知っている。
それを我が王国では『魔王城』と呼んでいたっけ……。
まあ、だからなんだって話だけどさ。大切なのは、今のリオンの気持ちだし。
どのような形であれ、リオンとマリカは愛し合っていて上手くいっている。
それで良いじゃないか。
と、いう訳で男子トークなのだ。
「どの程度まで発展したん?」
「どの程度って……お前はどの程度だよ」
「ん〜、そうだな……ええとね……」
ゴニョゴニョと最近の事でも話してみる。
はじめはキョトンと訳が分からないような反応だった。
だが、話が進む内に段々と顔を真っ赤にしていき、拳が飛んできた。
本気で殴っている訳ではないのは直ぐ分かったので、取り敢えずキャッチ。
「〜〜〜!!」
「ハッハッハ。パンチに腰が入ってないなぁ、リオンくぅ〜ん」
ついついジト目のまま父上みたいな事を言ってしまう。
父上に弄られている時のボクの気持ちになったのか、直ぐに反論は返ってきた。
「うっせえ変態!」
「何もかも曝け出せる親密な仲だと言って欲しい」
「言わねえよ」
「まあ、ボクは話してみた訳だが、リオンはどうなの?」
「う……それはだな……」
そして語られる初々しくも甘酸っぱい思い出。
良いねえ、青春だ。
ボクの方が年下だけど、はじめ憧れた恋愛らしい恋愛をしているので、とても羨ましいものがあった。ほっこり。
一通り語り終えた後、ボクも上を見る。
「ふう……結局はボク達って似たモノ同士なのかもね。好きな人の為に譲れないってさ」
「あの話を聞いた後だと否定したくもなるけど、きっとそうなんだろうな」
「「……」」
ボクらは無言で肯定し合った。
そして疲れも少し取れ、すっくと立ち上がる。
「リオン、ちょっと稽古を付けてあげるよ。
ボクは君より弱いけれど、体術の研究と理論には自信がある。改善に役立つ筈だ」
リオンくらい強いなら、直ぐに昇華出来るだろう。
だから大切な人を護ってくれ。
ボク自身に言い聞かせるように想うと、リオンも腰を上げる。
互いに並ぶと身長差あるなあ。
彼は言う。
「だったら俺も教えてやるよ。
教えられたままじゃ格好が付かないからな」
ああ、頼むよ。
ボク達は技術の交換を行い、そこにフェイやら他の男メンバーが集まって楽しく有意義な時間を過ごせた。
少しだけこの時間が終わって欲しくないなと感じたのは、向こうでのボクはこんなに同世代の男友達がいないからかも知れない。