表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/31

2025/0528 『子どもたちの逆襲』とのコラボ(作:カオス饅頭)

【文章】カオス饅頭

【コラボ先】子どもたちの逆襲 大人が不老不死の世界、魔王城で子どもを守る保育士兼魔王 始めました。

作者:夢見真由利 様

ncode.syosetu.com/n0124gr/

【パパ上のバカンス】第七話


2025/0527 『子どもたちの逆襲』とのコラボ(作:カオス饅頭)

https://ncode.syosetu.com/n5436hz/29

の、続きとなります



──聖なる乙女のそっくりさんが踊るのは斬新だが、切り替えも必要という事なのだろう。

──芝居仕立てのアクションとは中々役者じゃないか。

──流石に下の男も逆立ちしっぱなしでは辛いのだろう。


 周りからはそんな反応。

 つまり、堂々と戦えるという事だ。


 アベルは無我夢中で舞台に飛び出し、オルゴートと対峙すると、自然に構えを取っていた。

 正面を向き、猫背気味。

 顎を引いて手は下に垂れる。だが、多少曲がってもいた。


 異様な構え。

 だが、オルゴートはそれに『理』を感じている。


「二刀流の下段構え。そして、レスリングの構えに近いか。

原始的な剣術も混ざっているな。

剣術の定石通りに防御……と、見せかけて重力操作を使ったタックルが来そうでもある。

この『やってみよう』っていうちゃんぽんっぷり、正に『我流』って感じがするね」


 オリエを背後に置き、呟きつつオルゴートは身構える。

 半身になり正中線を隠した状態で、利き腕を曲げた状態で前に出す。

 もう一方はガード用に顎の前に置く。

 発案者はブルース・リー。

 ジークンドーの構えだ。


「コレ、見栄えが良いし実戦的だから結構好きなんだよね」


 オルゴートはステップを二回踏んで前に跳び、突き(パンチ)を繰り出す。

 正式名はリードストレート。

 フェンシングの様な身体の使い方をするこの技の良い所は、本当に『目にも止まらぬパンチ』である事だ。

 ボクシングのジャブと並ぶ最速の拳は、人間の神経では反応出来ない速さを誇る。


 取り敢えず一秒に5発打ってみる。


「があっ!」


 だが、アベルが強く念じると『当たらない』。

 自身を中央に置き、V字型に重力の盾を形成して受け流しているのだ。

 それに対してオルゴートは口笛ひとつ。

 これなら側面の力に弱い、銃弾や矢なんかも受け流せるなと感心もする。


「じゃあ、これはどうかな」


 しかし重力で防げるのは軽い拳のみ。

 左手で鉤突き(フック)を放つと、盾は容易く破れて脇に突き刺さった。

 そしてアベルの表情は、辛そうであるが嬉しそうでもあった。

 読みが当たった笑みである。


「ぐ……ぎ……いひっ♪」


 腹への打撃はジワジワと効いてくるが、逆を言えばある程度は耐えられるという事でもある。

 下から伸びた手がオルゴートの腕を掴むと、それを支点に『浮く』。

 まるで鉄棒で大車輪をするかのようにだ。

 重力を感じさせない動きであるが、実際に重力を無効化している。


 片手で腕を掴み、逆立ちの体勢から足を広げてオルゴートの顔に蹴りを放った。

 それをかわされると、今度は驚きの柔軟性で両足を開き、頭を下にしたプロペラのように迫る。

 『前に落ちる』の応用だ。

 カポエラの逆立ち蹴りに近いものがあるが、ここまで滞空時間は長くない。


 周りは「おお」と思わず拍手。

 アベルに喝采が浴びせられた、生まれて初めての瞬間だった。

 その声に思わす「もっと凄い物もある」という気持ちになる。

 つまりは「ノッている」のだ。

 故にテンションが上がり、複雑な動きが出来るように頭の働きが活発化する。


 ならばと、オルゴートは頭狙いのハイキックを放つ。


 さて。

 アベルは20代後半だが訓練しかしてこなかった為に、致命的に勉強が出来ない。

 字も書けなければ、小学生レベルの算数も出来ない。

 言葉だって片言でしか喋れないので、戦闘中は雄たけびのような声にしかならない。

 それでも、自分を表現しようと精一杯身体を動かす。


「あうあー……」


 腕を振り空中で身体を丸めて足を畳み、ハイキックをガード。

 宙は地面と違って踏ん張りどころがなく、普通はボールのように跳んでいくが、重力操作を使って前に動く力を使えば吹き飛ばない。

 半回転して蹴り脚の『側面』に引っ付き、剣術の受け流しのように脚をレールとして、前に進む。


 身体のバネを使って、脛の上で宙に跳ねる。

 鳥の如く両腕を大きく広げてみせた。

 両膝蹴りでの狙いはオルゴートの顔面である。


 その変幻自在な動きに、誰かが「綺麗」だと言った。

 その翼の生えた虎のような空中殺法に、誰かが「アルフィリーガ」と言った。

 オルゴートは素早く手の平でパシリと受け止めるが、その防御を抜いた感触が膝に伝わる。


「あうあうあーっ!」


 畳んでいた膝を開放。

 今度は肩を足場にし、低い体勢で横から膝蹴り。

 もう片方の肩に手を当てて、体操のあん馬のような体勢で後頭部への蹴り。

 そこから空中回転して、脳天へ胴回し回転蹴り。

 重力操作を利用した連続攻撃は止まる事を知らず、この戦いの終わりを告げている様だった。


 但し、アベルの終わりである。


「つ~かま~えた♡」


 胴回し回転蹴りが当たろうとした瞬間、アベルの足首をオルゴートが掴んだ。

 鼻血も出ている、口が切れてもいる。

 しかよく見れば、致命といえる傷には至っていない。


「良い事を教えてやる。

連撃ってやつはな、最初の一撃で相手が怯まないと成立しないんだよ。

そして人間「来る」って思えば大体の攻撃に耐えられる。

プロレスラーなんてのは特にそうだな」


 敢えてオルゴートは言っていないが、はじめの手の平でのガードを『貫いた』と『感じさせた』のが勝因である。

 柔術において手の平で攻撃を返す際、腕の中心で押すようにする。

 その力を逆向きにする事で偽りの手応えを与えたのだ。


 連撃である以上、次の攻撃は派手であるが軽いものになる。

 首を動かして攻撃を受け流すスリッピングや、バリツによる衝撃の体内への分散法で耐える。

 はじめ言った事は、ほんの初歩中の初歩の対処であるが、それ以上は話が長くなるので、戦闘中に説明する物でも無し。


「楽しかったぜ……」


 アベルの身体を、ふわりと宙へ投げた。

 無重力に見えるが能力ではない。

 綺麗な投げはそう見えるという、錯覚である。


 無造作に見えるが、回るごとに重心が頭部に寄る。

 その最高潮に達した瞬間は一回転。

 即ち、オルゴートと向き合う時である。


 回転させた反対側から攻撃する事で人為的にカウンターを狙う。

 すると重心を介して、衝撃が頭骨を越えて芯まで伝わる。

 オルゴートが領主になる前、決め技としてよく使った技だ。


「バリツ奥義……『流れ落とし』!」


 ラリアット。

 宙で身動きが取れなくなったアベルが意識を失う直前見た光景は、迫りくる二の腕だったそうな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ