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2025/0525 『子どもたちの逆襲』とのコラボ(作:カオス饅頭)

【文章】カオス饅頭

【コラボ先】子どもたちの逆襲 大人が不老不死の世界、魔王城で子どもを守る保育士兼魔王 始めました。

作者:夢見真由利 様

ncode.syosetu.com/n0124gr/

【パパ上のバカンス】第五話


2025/0219 『子どもたちの逆襲』とのコラボ(作:カオス饅頭)

https://ncode.syosetu.com/n5436hz/27

の、続きとなります



 嘗て教会は、勇者を『作った』事があった。

 転生を繰り返す勇者の魂が宿った本物の勇者という意味ではない。

 人々が勇者に求める、才能・武力・容姿等を持ち合わせた人間を教育によって作り出し、それを教会が「勇者である」と認めたならば、もはや本物の勇者として扱えるのではという事だ。

 こうして金髪碧眼の『勇者』が出来上がった──と、いう事があったのである。


 さて。

 それでは『勇者』は、本当に一人だったのか。

 複数の候補者の内、最も『勇者』として理想的な人間が選ばれたのではないのではないか。

 もしくは、似たような事を考える人間は居たのではないだろうか。



 曲芸も大盛り上がりになってきた頃。

 はじめから見ている見物客が、オルゴートのスタミナに驚いている頃。

 物陰に潜んでいた『人影』は仕掛けて来た。


 突如、オルゴートは爪先に引っ張られるような違和感を覚えた。

 続くように、彼の足の上で踊るオリエの身体が宙に浮いた状態で段々と『横』に引っ張られていく。

 まるで、鉄が磁石が引っ張られていくかのようだった。


「おや」


 しかしオリエは驚かない。

 全能の存在は、今何が起きているのかを一瞬で理解したのだから。

 寧ろ、下で好き放題やっている中年がどのような対応をするのかドキドキしているきらいさえある。


「ふむっ」


 そして期待通り、オルゴートは反応出来た。

 物陰から伺っていた者達の存在に気付いていたからだ。

 常に暗殺者に狙われる立場である彼は、追跡者の気配程度は簡単に読めるのである。

 分からなかったのは、どのように仕掛けてくるかというだけだ。


 そして爪先の違和感から幾つか正体の候補を導き出し、最もそれらしい回答を仮定する。

 オルゴートは両手を曲げて、身体全体のバネを使って宙へ高く跳んだ。

 その、高跳び並の跳躍距離に「おお」と観客の声が上がる。


 跳びながら宙を回転。

 体勢を変えてオリエを掴むと、ギュンと勢いを付けて横に引っ張られていく。

 その直前、オルゴートは叫んだ。

 これが『見世物』の一幕となるように。


「ピアノ線だ!

ちょっと休憩してくる!」


 近頃は劇団の質も上がり、ワイヤーアクションを取り入れる所も増えてきた。

 故に観客達もああ、なるほどと納得してしまう。

 そして、あんなに無茶苦茶な運動をするならやっぱり疲れるんだなと、再びの納得をするのだった。


 そうしている間に、オリエを持ったオルゴートは、建物の壁の目立たない影になっている地面に叩き付けられた。

 オリエに傷が付かないよう、胸に抱える。

 そして叩き付けられた直後に猫の如く転がり、衝撃を分散させた。

 パラシュートの着地テクニックだ。


 こうしてほぼ無傷で立ち上がり、しかし砂まみれのオルゴートを見下ろすのは、黒いローブに身を包んだ男である。

 その背後には、同様の格好をした男が居た。

 オルゴートの観察眼が見る限り、はじめの男は戦闘力があるが、後ろはそうでない。


 こういう時、裏方が直接出て来るパターンは限られてくる。

 例えば、『操り人形』に指示を直接出す必要がある時などだ。

 さて、起き上がろうか。

 そう思っていると、何か見えない壁に押し潰されるような感覚を覚え、思うように身体が動かないのを感じた。

 一瞬大気圧かと思ったが、それにしては温度が無い。


「なるほどね」


 オルゴートは壁に脚を付けて、蹴る。

 少し浮いて、再び『見えない壁』に地面に落される。

 だが、それで良い。

 狙いは、寝た状態から二本の脚で立つ姿勢に変える事なのだから。


 足で立つことで、人体の構造上踏ん張りが効くようになる。

 勿論オリエも抱えたままだ。

 上手く守れるよう、お姫様抱っこの状態にする。


 そしてローブの男に向かって前蹴り。

 だが今度は、先程と『逆向きの力』で押し返される。

 片足のみになったので、距離を取った。


 お姫様抱っこされながらのオリエは言う。


「そろそろ手伝いましょうか?」

「冗談を言うな。

こんなへなちょこ相手に助太刀されるなんざ大恥も良いところだ」

「じゃあ、相手の正体は分かっているので?」

「まあな。こいつは『重力』だ」


 懐から自国産のコインを指で弾いて手に飛ばすと、強い弧の軌道を描いて落ちた。

 そしてコインは地面にめり込んでいる。


 後ろに居た、非戦闘員の男が喋り出す。


「ほう、『アベル』の能力を理解するとは……」

「目的はなんだ」


 この世界の人間でないオルゴートとしては興味の無い事ではある。

 ただ、相手が何に執着しているかで見えてくる戦闘スタイルという物もある。

 また、国の重鎮であるオリエに聞かせる事で、『後始末』をやり易くするという狙いもあった。


「くっくっく、このアベルは『重力操作』という強力な能力(ギフト)を持ち、教会に預けられ『勇者』となるべく育てられた人間での。

伝説の勇者アルフィリーガを再現する為、戦闘訓練に明け暮れておった。

しかし勇者として容姿や社交に問題があるという事で『失敗作』の烙印を押されたのじゃ!

エリクスとかいう偽物より優れた戦闘技能を持つというのに、じゃ!」

「そりゃオメェ……烙印を押した人が正しいわ」


 オルゴートは道中オリエに聞いた、舞台劇『アルフィリーガ』の大雑把な内容や経緯を思い出す。


「皆が勇者に期待しているのは、舞台劇の様にキラキラしてて人を惹き込むカリスマを持った人材なんだろ?

戦闘力なんて、舞台を盛り上げる為の一要素に過ぎねえ。

確かにアクションシーンってやつは派手だから重要なように見えるけど、それは『勇者』に限った役割じゃねえ。

強いだけなら魔王でも構わねえんだ」

「ええい、貴様まで愚弄するか!」

「自覚してんじゃん。

なあオリエ、偽勇者の計画ってどれくらい前の話なん?

ていうか、その指示を出した時の教会勢力ってまだ残ってるん?」


 オリエが耳打ちする。

 オルゴートは、「うわあ……、それで未だに引きずっているのかよ」と、ドン引き。

 呆れた表情で視線を直した。


「まさかお前、当時の『聖なる乙女』とそっくりだったオリエを誘拐して、そのアベルとかいうのを持ち出して『これが今代の勇者です』なんてやろうとか思ってはいないよな?」

「くっ、どうしてそれを!」

「図星かよ」


 オルゴートは更にドン引きするのだった。

 取り敢えず、戦う事は決まったらしい。

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