2025/0318 『子どもたちの逆襲』とのコラボ(作:カオス饅頭)
【文章】カオス饅頭
【コラボ先】子どもたちの逆襲 大人が不老不死の世界、魔王城で子どもを守る保育士兼魔王 始めました。
作者:夢見真由利 様
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【パパ上のバカンス】第四話
2025/0219 『子どもたちの逆襲』とのコラボ(作:カオス饅頭)
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の、続きとなります
◆
夜の街。
道には様々な屋台が並び、眠るべき人々は石の道を歩く。
自転車に乗っている者も居た。
都市の光というものは、人を眠らせない不思議な力があるのだ。
「……と、いう訳で大聖都に来たぞ!」
「そうですね」
「なんだオリエよ。反応が薄いな!」
「……自宅ここですし」
「それもそうだな!」
オルゴートが元気な言葉を発すると、『肩車』されていたオリエが相槌を打った。
これは移動の都合だ。
丘陵地帯から都市部へ向かう際、はじめは歩いて少しくらいかと思ったのだ。
しかしこのままのペースだと、到着には深夜の時間帯になる事をオリエが言う。
なのでオルゴートがオリエを肩車し、フルマラソンをしたのである。
移動の最中でオリエは「テレポートを使えば直ぐに着きます」とも言った。
けれど耳があるのかないのか。
移動しながらオルゴートは、オリエに対して様々な下らない話を、割と一方的に話して来た。
仕事がめんどくさいとか、昨日の夕飯はどんなものだったとか、義理の娘の父親が自分の友人だとか、大聖都にはどんな楽しい事があるんだとか。
しかしその中に、自慢話は無かったし、他を過度に貶める事も無かった。
会話の緩衝材として少し含める程度だったのだ。
そうこうしてオルゴートはオリエを地面に降ろすと、鼻歌を歌いながら屋台を見て回る。
聖都らしく『聖なる乙女』の姿絵を描いた皿など宗教色の強い物が見られる。
一方で所々に機械類も見られた。
オリエが言うには、総合すると日本の大正時代レベルだとか。
『地球』産の設計図を元に作った物を、精霊の力で魔改造したものらしい。
無一文のオルゴートは、台に置かれていたラジオを見て呟く。
「ふうん、買っていくか」
「と、いう事は例によって持ち物を売るんですかね。
丁度いい両替商なら案内出来ますが……」
「いいや、それじゃつまらんさ。こういうのは、現地調達も面白いもんだ。
オリエ、お前さんって貴族なんだからダンスは出来るよな」
「え……ええ、まあ……できますが」
オルゴートは腕を組んで、ニヤリと笑ってオリエを見た。
人工の光に当てられた歯がきらりと輝き、全能の存在である筈のオリエは何処か嫌な予感というものを感じたのだった。
その時、物陰から彼等二人を見る影もあった。
しかしまだ事は起こさない。
いわゆる伏線である。
◆
少し後。
町の中心の広場はにぎわっていた。
道すがら遊んでいた、とある若い男たちが会話を弾ませる。
「おいおい見てみろよ、凄い事やってる旅芸人が居たぞ」
「凄い事?」
「ああ、おっさんと女の子のコンビなんだが、女の子がおっさんの足の上で、地面があるように踊っているんだ」
「ん???お前、説明下手だからよく分かんないんが」
「ええい、良いから実物を見てみろって」
「ったく、めんどくさい……うおっ!ホントだ!」
そこには逆立ちになったオルゴートと、天高く伸ばされた足の裏を足場として、ダンスをしているオリエが居た。
オリエは、特別な事はしていない。
オルゴートに「知っている踊りを普段通りにやってみろ」と言われただけ。
その振付に合わせ、地面で踊っているのと全く同じ重心になるよう、足を動かし続けているのだ。
オリエが回転しながら横に動くと、下のオルゴートはそれに合わせて逆立ちで回転しながら移動してみせる。
爪先で立つと、足場を足の裏から爪先に替える。
やじろべえよろしく爪先立ちを爪先で支える形になる訳だが、バランスは微動だにしない。
折角なので支える腕を片腕のみにして、歌ってもみせた。
「ねんしょ-けー♪ねんしょーけー♪あーみのっしき♪ヘイッ!」
重心を操る格闘技:バリツの創始者たるオルゴートにとって、このような曲芸は朝飯前なのであった。
そして彼の目の前には器が置かれている。
屋台で買ったものではなく、酒瓶が落ちていたので手刀で叩き切って底の部分を器に見立てた物だ。
芸を続けて数分であるが、パフォーマンスが派手な分、収入は悪くない金額であった。
銅貨・銀貨が盛られて、ちらほらと金貨が見える。
その量にオリエは感心していた。
周りに聞こえないよう、小声でやりとりをする。
全能の力を使えば、秘密の話し合いもちょちょいのパアだ。
「意外と集まる物なんですね」
「夜中だからな。酒が入ってサイフが緩くなる時間だ。
それにお前さんは、皿なんかに描かれている『聖なる乙女』と顔がそっくりだ。
縁起物として人の集まりは悪くないと見ていたんだ」
此処は宗教の中心地なのだ。
聖人の出現に対して本気にする人は多い。
よくよく見れば、オリエを拝む人も人だかりの中に居た。
更に言えば、別の国でのある祭りの日に、聖なる乙女が紛れ込んで遊んでいったという逸話があったのも拍車をかけていたのだ。
聖都にもついにこのイベントが来たのだと。
「これならラジオの一台くらいは買えますね」
「まあなあ、只、もうちょっと欲しい」
「欲張りなんですね。今更ですが」
「あっはっは、ウチの息子程じゃないが、オリエも毒を吐くのが上手くなったね。
只さ、これはオリエが居てこそ成り立っている感もある。
だから本音を言えば、半々で山分けしたい。だからもっと稼がなきゃとは思うね」
「……私が……お金?」
『自分の手でお金を稼ぐ』
それは超越者として生まれて来た彼女にとって、はじめての感覚だった。
故に実感の無い気持であったが、取り敢えず気持ちを整理するには身体を動かすのが良い。
なので彼女は、踊りを続けるのだった。
割と外へのアピールは、前より強めになっていた。