2025/0219 『子どもたちの逆襲』とのコラボ(作:カオス饅頭)
【文章】カオス饅頭
【コラボ先】子どもたちの逆襲 大人が不老不死の世界、魔王城で子どもを守る保育士兼魔王 始めました。
作者:夢見真由利 様
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【パパ上のバカンス】第三話
2025/0207 『子どもたちの逆襲』とのコラボ(作:カオス饅頭)
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の、続きとなります
◆
焚火を囲み、おっさんと幼女は地面に座り食事を取っていた。
オルゴートは蛇の肉に齧り付いている。
皮を剥ぎ、巻きパンよろしく木に巻き付けて焼いたものだ。
そして他の収穫物は全てオリエに渡していた。
彼女の目の前には木の皮で作った皿が置かれ、その上に殻を向いたザリガニのアスパラ添えと、丸ごと齧る用の蜂の巣が置かれている。
手を汚さない為の木の串はその場で作った物だ。
オリエは少し驚いたが、オルゴートから「結構デカい蛇だし、やっぱこれで十分だわ」と言われ押し付けられたのである。
オルゴートは、バリバリと骨を噛み砕いて肉を飲み込み、声を出した。
「ふむふむ。つまり此処は大聖都って都市の少し離れた場所にある訳だ。
で、ちびっこはそこの大神殿に住むお姫様であると。
親御さんも心配しているだろうし、さっさと帰した方が良いかね?」
「その前に、少し質問をして宜しいですか?」
「良いぞ、全知全能でも分からない事もあるもんなんだね」
「異世界は管轄外なもので。
で、貴方はどうして此処に来たのかは分かっているので?]
オリエ自身は異世界人に会ったのは初めてだが、母から異世界について聞いた事がある。
このアースガイアは物理法則すら違う別の世界と、不定期に接触する事があり、一時的に向こうの住人が此方に来たり、逆にこちらの住人が向こうに行く事がある。
そうして情報や物質の交換が行われる時もあり、ラーメンのレシピといったものなど社会に影響を及ぼす時があるそうだ。
だが、オルゴートはまるで爆弾のような事を言う。
「ぶっちゃけ、ちょっと息子が羨ましかったから来ちゃった♡」
「は?来たって、制御出来るんです?」
まさか向こうは自由に行き来できる技術を持ち合わせているのだろうか。
「自由にって訳じゃないけどな。
ある日俺は息子から、地球の移民達が作った、この世界の事を聞いたんだ」
オリエの父である【リオン】が、この世界を守る為に肉体を変えた。
その状態で、オルゴートの治める侯爵領に来て、オルゴートの息子である【アダマス】と再会して話した時、世界の成り立ちに少し触れたのだ。
オルゴートが此処を地球の延長と理解し、毒を疑う事無く山菜採りをしていたのにはそのような理由もあった。
「ふむふむ、それで?」
オリエはその事自体には驚かない。
両親が異世界から帰って来たという事は、それくらいの情報交換はあったと予想出来ていた事だから。
頷いたオルゴートは手を大きく広げて、両拳を握る。
「暫く俺は仕事に身が入らなかった。
一週間に1個のペースな悪の秘密結社破壊も、1週間半に1個に落ちて区切りが悪くなってしまった。
そういう訳でこうして手を大きく広げて……」
「ふむふむ」
「執務室の床に仰向けになって、大の字になり、両手両足をジタバタと動かしてだな……」
「ふむふ……ん?」
「『アースガイアに行きたい!行きたい!連れて行かないと真面目に仕事をやらないぞ!』と、叫びまくった!
妻に辞めなさいと良い感じのローキックを脇腹に喰らったが、それでも俺は叫び続けた!
きっと『神』に届くと信じて!」
「只の駄々じゃないですか。良い大人でしょうに」
オリエはジト目で、酒の肴でも噛むかのようにハチの巣を齧っていた。
呆れ顔である。
対称的におっさんはどや顔で、握った拳を腰に当てる。
「けれど声は神に届いた様でな。此方に辿り着けたって訳だな。
ハッハッハ、粘り勝ちだ!」
「さいですか」
随分贔屓な神様も居たものと思ったが、あながち間違いでもないのが困りどころ。
なんせその神様は、本来全ての生物に分け隔てる事なく配分する筈の力を、『好きだから』という人間のような欲望で、オルゴートの家を何世代にも渡って贔屓しているのだから。
故に人類の味方には違いないが、『彼女』の分類は『邪神』であった。
「……おや?」
そこでオリエが、この世界の空気に必ず混ざるナノマシンウイルスから『通信』を受け取った。
彼女はこれを自由に操る能力を持ち、故に全能でいられるのだ。
「携帯かな?良いよ、取りたまえ」
「言われなくても取りますけどね」
携帯電話という物は、電気が無効化されるオルゴートの世界にはない物だが、あの手この手で異世界を覗き見してきた彼は理解できる概念だった故の発言だ。
なんなら別口のスタンダードな異世界転移者が使えなくなったスマートフォンを集めて、使えるように改造する趣味さえ持っている程だ。
「……」
今回来たのは、オリエの同様の力を持つ『姉』からの通信だった。
彼女は少し考え、手の平を広げると宙に楕円型の『影』を作る。
そしてテレビ電話よろしく、影には人の姿と背景が映ったのだった。
けれどそこに映ったのは、彼女の姉では無く、母の【マリカ】である。
彼女はオリエをそのまま大人にしたような容姿。
けれど娘とは対称的に、取り乱していたのだった。
『オリエ!?ちょっと突然いなくなって遅いけど、大丈夫……って、焚火!?
どこまで行ってるの!?』
「ああ、実は世界を揺るがす人を見つけたから返り討ちにあって……」
『返り討ちに!?ちょっと大丈夫なの!怪我は無いの!?』
全知全能を倒すような脅威が現れた事より、娘の怪我の心配をする。
その姿は正しく母であった。
オリエは話を続ける。
「それは大丈夫。やられたのは私が作った魔性だから。
それに、どうやらお母さん達の知り合いらしいから大丈夫……だと思いたい」
『思いたいって、頭の良い貴女にしては随分曖昧ね。
知り合いって?』
「この人」
『影』がクルリと回り、蛇肉をあらから食べ尽くしたオルゴートを映す。
その姿にマリカは反応する。
『えっ、お姉様とアダマスさんのお父さん!?』
「や~や~、久しぶりだね。
……いや、ここでは『小生』は単なる外国の一侯爵に過ぎませんな。敬語が宜しいでしょうかな。聖なる乙女殿」
領主館の装置でアースガイアに帰る時、マリカは領主である彼に何度か会っていたので面識があったのだ。
彼女の会った範囲でのオルゴートは、気さくながらも頭の回転が速く内政も出来る、理想的な領主として映っていた。
オルゴートが貴族式の礼をすると、マリカは両手をブンブンと振って遠慮の動き。
『いやいやいや、大丈夫です!なんか貴方が下に居るって変な感じしますし!』
「それは助かるね。
まあ、丁度いい場も設けて貰ったので少し経緯を話すと……おや、後ろに居るのはリオン君にフェイ君じゃないか!元気そうでなによりだ!」
マリカの部屋に居たリオン。
そしてたまたま来ていた友人のフェイにも挨拶する。
彼等の顔は、これでもかという程苦い顔をしていた。
『ゲッ。お、おう、久しぶりだな……』
『貴方も相変わらずですね。もう少しトーンを落として良いですよ』
『どうしたの?二人とも』
『ちょっと、マリカの居ない時にな……』
彼等はマリカと違い、オルゴートの『うざい』面を知っているのだ。
はじめてマリカが侯爵領に突如転移して来た日。
彼女が少し冒険した後に、別の場所に転移してきた彼等二人が迎えに来た訳だが、それは情報を得る為に『異世界転移者の正規ルート』として『領主との面会』を介する道のりだった。
やたらマウントを取りたがる逆張りおじさんとの面会は疲れるなんてものでは無かったのである。
ただ、それ故にオリエを預けるに最低限の信用は出来たのだった。
うざいけど。
かくしてオルゴートはこれまでの経緯を話し、少し大聖都を観光してから大神殿へ帰宅させるという事で話はまとまったのである。




