2025/0207 『子どもたちの逆襲』とのコラボ(作:カオス饅頭)(2)
【文章】カオス饅頭
【コラボ先】子どもたちの逆襲 大人が不老不死の世界、魔王城で子どもを守る保育士兼魔王 始めました。
作者:夢見真由利 様
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【パパ上のバカンス】第二話
2025/0207 『子どもたちの逆襲』とのコラボ(作:カオス饅頭)
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の、続きとなります
◆
夜闇の中、髭のおっさんと幼女が向き合っている妙な光景が繰り広げられていた。
おっさん──オルゴートは大柄なので、オリエの小ささが更に際立つ。
彼は顎に手を当てて、ジッと彼女を観察した。
「悠久の時、星の導き手……ねえ。
ふ~ん、まあ良いや。ちびっこには変わらん」
「信じていません?」
オリエの表情は変わらなかったが、声色やら仕草やらが感情を表しているのか。
何処かムッとしたようにも見える。
「いいや、それだと俺が異世界人だと言うのは単なる妄想になってしまう。
別にそう思われても構わんが、お前さんはそう思っていないようだ」
「其方の方が、可能性が高いという結論に達したまでです。
神の眼から逃れて存在しない人間を造り出すより、他所から持ってきた方が現実的ですから」
「あっはっは、そうかそうか。『さんすう』が得意なようでなによりだ。でもな……」
相変わらず子供に接する態度。
しかしオルゴートは、全くオリエを疑っていなかった。
全知全能の力を持つのも良いだろう、生まれついて他者の記憶を持つのも良いだろう。
今のところ、オリエを信じる事にデメリットはない。
何故なら彼は、神が隣に居ようとも自分を曲げるつもりは無い男なのだから。
彼女の言葉が現実でも子供の悪戯でも、どちらでも『面白い』というのは確かだと結論付けたのである。
「生まれついて巨大な権限を与えられた。
幼い頃から『庶民とは違う学識』を持っていた。
ならばやっぱり、背伸びをしているだけのガキンチョだ。
俺の様に素晴らしい大人をもっと羨むのだな!うはははは!」
笑い飛ばし、親指で髭面な顔を指差す。
そんな彼にオリエは『困惑』という滅多に抱かない感情を抱き、どうして良いか無表情の裏で悩むのだった。
しかし悩みの答えが出る前に、オルゴートは行動を起こしてしまう。
「ところで、腹が減ったな。狩りをするからちょっと付いて来い」
「……は?」
ひょいと突如、オリエは小脇に抱えられて文字通り運ばれる。
まるで誘拐だ。
神の力を持つ彼女としては、テレポートで逃げる事も、周囲一帯を焼き払ってこの無礼な人間を殺す事も出来た。
只、自分が抱いた感情の正体が分からなかったのだ。
分からないなんて、滅多にない事なのに。
「色々とツッコミどころがありますが、なんで私が付いてくる必要があるので?」
「そりゃ、旅は一人より二人の方が楽しいからな。
ああ、お前さんの力を利用する気は一切ないから安心して欲しい」
「理由になっていませんよね」
「ん~、じゃあこうしようか」
オルゴートは今思いつきましたとばかりに、人差し指を上に掲げた。
その顔は実に活き活きしている。
「あの黒いの、出した目的は『捕獲』だろ?
足でガッシリ掴んで、土の圧力で固定しちまえば人間の膂力じゃどうにもなんねえ。
恐らく全知全能のお前さんは、異世界からの住人の『侵入』を感知。
おまけに正体不明の力まで持っていそうだってんだから、下手に排除するより捕らえて意図を探ろうとしたって流れじゃないかな。
つまり、ずっと近くで『見張って』いた方がそちらにとって都合が良いんじゃないか?」
苦虫を噛み潰したらこんな顔になるのだろうか。
オリエの口端がひくついた。
抱えられたまま額に手を当て、言葉を絞り出す。
「分かりました、見張らせて頂きましょう。
何か世界に害を及ぼしたら命は無いと思って下さい」
「うひゃひゃひゃひゃ、色よい返事をさんきゅーだ!」
オルゴートはひたすら笑い、オリエは溜息を吐いた。
「……で、狩りって何をするので?
この辺は確かに分類上は丘陵地帯ですが、山脈という訳でも森という訳でもありませんよ?」
「ん~、なあに。
雑草という草は無く、探せば食えるものは割と何処にでもあるものさ。
少し小耳に齧ったが、君達は『地球』からやって来たんだってね。
つまり植生は地球に近い物になるという事で、気候・季節から採れる物は予測が付く」
そう言いながら、足元の草に手を伸ばした。
先ほどまでオリエが隠れていたような、背の高い草の中である。
プチプチと、指の中には緑色のツクシのようなものが摘ままれていた。
「アスパラソバージュ。
まあ、野生のアスパラみたいなもんだが、高級食材だ。
ヨーロッパに広く自生する山菜で、森林・草地・河畔などの日陰を好む。
ただ、これだけじゃ寂しいかなっと」
そう言って草陰の奥へ。
すると草陰に隠れていた、澄んだ小川を発見する。
流れはゆっくりで、水路の様に細い。
「丘陵って事は、湧き水が丘の谷間を通って川を作っている可能性は高い。
そして、そこまでデカい川じゃなくても、水場であるなら生態系は存在する。
ほれ、ザリガニって汚い川に住んでるイメージあるけど、清流にもちゃんと居るのな」
今度はザリガニを数匹捕まえてみせた。
腕の中で赤いハサミを振り回す。
更にオルゴートは、何かに気付いたように片手で草陰に手を突っ込めば、蛇を捕えていた。
ブンブンとロープの様に振り回して、頭をそこらの木の幹に叩き付けて絶命させる。
「これは俺用だな。幼女に食わせるようなもんじゃない」
「平気ですけど?と、いうかなんで私も食べる流れになっているので」
「ん~、ノリ。ノリは大切だぞ。
なんせ元気があればなんでも出来るからな」
「……理屈になっていませんね」
「逆さ。感情を無理やり理解出来るよう言語化したもんが理屈なのさ。
だからちびっこの触れ合いくらいは『ノリ』の一言で済ませるくらいが丁度いい」
「逆張りってよく言われません?」
「おお、その通りだ。俺についてまたひとつ詳しくなったな、ちびっこよ」
「褒めていませんけどね」
そうしている間に、細い木の棒を拾っていた。
この辺は森林という訳では無いが、ポツポツと細い木が生えている。
その棒に棘が生えている事に気付くと、キョロキョロを周りを見はじめた。
「ふむ。ニセアカシアか、じゃあもしかすると……お、ラッキー」
視線の先には、一本の木。
夜なので分かり辛いが、窪みの中に小さめのミツバチの巣があった。
オルゴートは大股で歩み寄り、大きく息を吸う。
そして口を大きく開き、肺を震わせた。
「──!!」
大声。
しかしオリエには聞こえない。
声帯を弄る事で、音の出る方向を絞り音の爆弾をミツバチの巣にぶつける。
通常、昆虫に音と言うものは効果が薄いが、彼の音爆弾は甲殻と同様の波長に調整し、中身を直接揺さぶるというものだ。
応用すると窓を割ったり、遠くから気付かれず人間の頭蓋骨を揺らす事も出来る。
パタパタと失神したミツバチが落ちて、熊の如く巣を取って見せた。
「ハチミツゲ~ット。
こんなトコかね。どうだ、探せばあるものだろう?
食事にしようか」
彼は二本の木の枝を持ち、超人的な腕力でシャッと鋭く擦り合わせると摩擦熱で火を付けたのだった。
続き
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