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2023/1018 『子どもたちの逆襲』とのコラボ(作:カオス饅頭)

【文章】カオス饅頭

【コラボ先】子どもたちの逆襲 大人が不老不死の世界、魔王城で子どもを守る保育士兼魔王 始めました。

作者:夢見真由利 様

ncode.syosetu.com/n0124gr/

【マリカ一行、五年前のオリオンへ】第五話


2023/1016 『子どもたちの逆襲』とのコラボ(作:カオス饅頭)https://ncode.syosetu.com/n5436hz/12/

の、続きとなります



 これからマリカが行うのは『マジシャンズセレクト』という手品。

 所謂予言マジックだ。


 余った船材や帆布などを寄せ集めて作られた特設ステージには、机にする為の大きめの樽がり、トランプの(デッキ)

 プラスチック製ではなく、紙トランプをスライムから作った薬品でラミネートのようにコーティングした物だ。海水を浴びてもふやけないので王国の港町では一般的な物だった。

 上手く投げればトランプ手裏剣にも出来る。


「すみません、これから『予言マジック』をするので誰か相手役をしてくれませんか?

このケモ耳の人じゃ、仕込みになっちゃいますし」

「ガッハッハじゃあ俺が行くぜ」


 人込みの中から筋骨隆々な腕が上げられ、髭もじゃの大男が出て来る。頭にはねじり鉢巻き。

 黙っていれば強面な人相なのだが、豪快に笑っているので威圧感はそこまで感じなかった。

 マリカはありがたい相手と思った。

 この手品で大切なのは、指先の技術よりもトーク力だからだ。

 故に、何時もより芝居がかった口調でマリカは喋る。


「この度は立候補ありがとう御座います。

私はマリカと申しまして、普段は孤児院で子供たちの世話をしております。この辺りの者では無いのでご迷惑おかけするかも知れませんがご容赦を。

折角ですし、貴女のお名前を伺っても?」

「おう、中々礼儀の良いちみっ子だ。俺はボブ!見ての通り漁師だ!」


 どちらといえば海賊みたいな外見だとこの場に居る殆どが思ったが、つっこんではいけない。

 しかし真っ先に立候補してくれた辺り良い人なのかなとマリカは意味もなく思い、実際息子達に猟を教えて学校にも通わせている彼は、人の親としてはバルザックなんかよりは何億倍も優れた人物だった。

 マリカは先ず扇のようにデッキを広げて、ボブに数字の描いてある面(フェイス)を見せていく。


「こちら、なんの変哲もないトランプ。お手数ですがシャッフルをお願いします」

「おう、任せろ」


 慣れた手付きでシャッフルする。

 暇な時に仲間と遊ぶ時はよくあるので、彼にとって馴染みの深いものだった。同時に博打やイカサマなども馴染み深く、故に細かく混ざり合う。

 マリカはそれを受け取ると、扇状に広げて確認の為中をボブに見せた。


「それでは此方、ちゃんとバラバラになっていますね」

「おう」

「はい。ありがとう御座います。では、此方束の状態に戻させて頂きます」


 此処でマリカにもデッキの中身は見えている訳だが、別にカードを全て覚えている訳では無いしそんな記憶力もない。

 再びデッキの形に戻すと、中が見えないように伏せた状態で樽に置く。


「さてさて此処でもうひと手順。ボブさん、真ん中あたりで適当に分けて下さい」

「こうか?」

「はい、お上手です」


 二つに分けられたデッキをマリカは十字に重ね、真ん中からカードを取り出し、腕を周りに振って観客に見せた。

 内容はクローバーのクイーン。

 だが、マリカにはトランプの裏面しか見えない。


「前振りが長くなってしまいましたが、この一番上のカードはなにかを当ててみましょう!

……まずはカードを戻してシャッフルしますね。

そしてボブさんに、選んだカードをちょっと見てもらいましょう」


 樽の上にデッキを横一列にサッと広げ、中身を全て見えるようにする。

 ボブはクローバーのクイーンを見つけ出し、少しだけ視線を止めた。


「あっはっは、ボブさん。それじゃ分かっちゃいますよ」

「む、そうなのか?」

「ええ。孤児院の子供達を相手にしていると、小さな仕草で何を言いたいのか察する必要がありますしね。まあ、確かこの辺でしょう?」

「あ、全部は分からないんだ」

「そこまではちょっと……」


 大雑把にカードを取っていき、最終的に目的のカードを含む五枚に絞っていくと纏めて重ね、シャッフルして伏せて並べた。


「さて、これで互いに中身が分からない訳ですがちょっと二枚、直感で選んでみて下さい」

「ふ~ん、コレとコレか?」

「はい。それじゃこれは除外しましょう。それじゃもう二枚!」

「じゃあ、コレとコレで」

「はい。今度は選ばれなかった一枚を除外してみますね」

「さあさあ、これで二枚残りましたね。どちらにしますか」

「ん~、じゃあコッチか?」

「はいっ。それでは選ばれなかった一枚を再び除外しまして、さあ、引いたカードは何だったでしょう?」

「クローバーのクイーンだな」


 残った一枚のカードを引き、表にして観客に見せる。


「はいっ!有難うございます!」


 言った通り出てきたのは、トランプの絵柄の中で『美しくお金持ちな女性』を表すクローバーのクイーンだった。

 魔術という物に慣れた観客たちは、逆にそれらを使わない技術に目を丸くして「おお~」と歓声が上がった。

 大成功だった。


 因みに種明かしをすると、マジシャンズセレクトは相手に自分の思い通りのカードを選ばせる手品である。

 相手に五枚のカードを見せた後にそれらをシャッフルするならば、一枚ずつのシャッフルでも違和感はない。五回シャッフルすれば見せた時と同じ順番になる。

 そしてカードを選ばせる時は、残したいカードが混ざっているなら他のカードを『除外』して、逆にそうでない時は指定された二枚を除外する。

 此処で自然なトークを行うのがキモ。


 そして『指定のカード』であるクローバーのクイーンもマリカが選ばせた物だ。

 ボブがシャッフルして、混ざったか確認する際にマリカも見ていた。

 その際、全部は覚えられなくても端の一枚……つまり、デッキに戻した際に一番上になるカードを覚える事は出来る。

 その後、指定のカードが一番上にある方を下にして十字に重ねる。

 そうすれば真ん中から自然に抜いたように見せて、覚えているカードを引く事が出来る訳だ。

 人は意外とカードを分けたという事実には反応しても、どちらがどちらという物には反応しないのである。


 マリカはアセナに向き、テヘラと良い笑顔を向けた。

 此処まで来るのに何処か張りつめていたアセナであるが、肩の力を抜いて微笑で返し、そしてお勧めのラーメン屋を探す事に真面目になるのだった。

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