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2023/1012 『子どもたちの逆襲』とのコラボ(作:カオス饅頭)

【文章】カオス饅頭

【コラボ先】子どもたちの逆襲 大人が不老不死の世界、魔王城で子どもを守る保育士兼魔王 始めました。

作者:夢見真由利 様

ncode.syosetu.com/n0124gr/

【マリカ一行、五年前のオリオンへ】第二話


2023/1011 『子どもたちの逆襲』とのコラボ(作:カオス饅頭)https://ncode.syosetu.com/n5436hz/9/

の、続きとなります



 旧魔王城内の応接室。

 壁には名画と思える絵画が掛けられ、隅には大理石で出来た悪魔の像。

 部屋の中央には背の低い机が置かれ、向き合うようにソファが置かれる。

 マリカはリオンとフェイに挟まれる形で座っていたが、落ち着かずにキョロキョロ周りを見ていた。

 これは不安ではなく、寧ろ前世で『地球人・北村真理香』として生きた記憶が好奇心を呼ぶのである。


「魔王城という割に普通なんですね」

「まあ、大分改装したからのう。

人間がちゃんと住めるようにすると、ゲームの中そのままの魔王城では中々不便があるのじゃよ」


 確かに自分達が住んでいる魔王城も普通だが、此処まで分かり易い魔王城なら。と、思ってみたが現実はそんな物か。

 マリカ達の此処まで来た経緯やら自己紹介やらを聞き、代官として異世界人記録と領主への紹介状を書いている最中のドゥガルドの隣にはちょこんとアセナが座っている。

 隅に置いてある像を万年筆で差したドゥガルドはしたり顔で答えてみせた。


「あの像。実は下に『スイッチ』があっての、天井もスライド式で改装前の『穴』を開く事が出来る」

「おおっ!」

「「……?」」


 目を輝かせるマリカに対し、よく分からないと反応薄めな両脇の男子二人。

 マリカは、天井の穴から像とか岩とかを落としてスイッチを押すと、連動して何処かにある扉が開く仕組みだと言っても頭を捻るばかり。

 しかし「勇者の冒険を盛り上げる為の謎の仕掛け」というと最終的に納得してくれたのだった。

 神話においてお菓子に釣られるケルベロスなど、似たような発想は何処にでもあるのである。


 出来上がった紹介状をマリカに渡す。

 これを領都の現領主に渡せば、前回と同じように異世界人帰還装置で帰れるという訳だ。

 旧都と領都は太い河で繋がっており、定期便で行くことが出来る。


「さて。後は折角じゃし、ちょいと観光でもどうじゃ。

観光をする為の費用はその、最初会った時に握っておった『手袋』でどうじゃろ」

「えっ、コレですか?」


 突然、精霊布で作った大きい手袋を指差された。

 確かに行き場に困っていたので、適切な値段で引き取ってくれるというなら助かると言えば助かる。

 これを使って利益を出そうにも、異世界なので技術流出的な問題にもならない。


「でも、なんで?」


 精霊の力が宿った上での効果を教えた訳でも使った訳でもない。

 傍目には只の手袋に過ぎない筈だ。笑うドゥガルドは、少年のように歯を見せた。


「ニシシ。目は肥えておるのでのぅ。

ぶっちゃければ、若い頃に散々見て来た『価値があるけど扱いに困る物』を持つ者特有の扱い方をしとるでな。

それに、よく解らないファンタジーアイテムをその場で鑑定するなんて日常茶飯事じゃったからのう」


 言って己の目を指差した。

 マリカはその瞳の奥に、彼女の世界にある『精霊の力』に近い物を感じた。

 因みに、此処でドゥガルドが使っているのは『魔力』という、此方の世界の住人が持つ粒子である。

 この粒子を飛ばして他の力に干渉・共鳴させ力の性質を()る。『鑑定眼』という魔術を扱っているのだ。

 尚、力の性質を識る為には下地となる鑑定技術が必要となり、一部の集団で秘伝とされる物なので貴族でも存在を知る者は少ないものである。


 取引は上手くいくかに見えたが、待ったをかけるのは再びフェイ。

 ピンと腕を伸ばして声を上げる。


「ちょっと待って下さい。流石に、その取引で金銭のみというのは割に合いません」

「ほう……一家族が一年は遊んで暮らせるような金額であるのにか」

「はい。僕達は此処に長く留まる予定はないので、そんな金額使い切れません。

そして僕達は向こうでは金銭に困らない身分なので、あまり利益にはなりません」

「確かにそうじゃの。面白い、何が望みじゃ。言ってみせよ」


 フェイは、チラリとリオンへ目をやった。

 それだけで通じ合い、決意を固めたリオンは立ち上がる。


「アダマスに会わせてくれ!居るんだろう?」


 確かに今のアダマスは、マリカ達が知るアダマスではない。

 それでも、異世界間の移動と言う奇跡でしか会えないというのなら、それくらい良いではないか。

 リオンに詳しい事を論理的に伝える能力は無いが、これまでの経緯はまるで「知り合いだったら合わせてみよう」という流れではあった。つまり根拠は勘に近い。

 だが実際にアセナはピクリと肩を動かし、ドゥガルドはやや困った顔。


「ふ~む、居るには居るが。そうじゃなあ……。

『アダマスとの繋がり』を言わない事を条件としてくれるかの。

今のあの子は、デリケートなのじゃ。

事情聴取で聞いた限り、お前らは王族なのじゃろう?ならば、野心のある下級貴族からどのような目で見られるかは解ると思う。

あの子は才に恵まれておる。良くも悪くもな。故に、考えている事が余りにも鮮明に理解出来てしまったのじゃよ」


 現在のアダマスは人間不信を拗らせた状態である。

 読心術を持った状態で、成金貴族子弟だらけの学校に入ったのだ。それは正に蟻に群がられる砂糖菓子。

 本当に信じられるのはアセナの様に言葉より先に手が出るような、良くも悪くも表裏の無い人間だけだった。


 一応、父親から妾、そして同じ学校の人間として差し向けられたアセナと出会ってから暫く経つので、それなりに安定はしている。

 しかしトラウマを拗らせているのは変わりない。なんせ、五年後のアダマスの性格にそのまま反映されている傷跡なのだ。


 ゴクリと息を呑むマリカは、それでも決意を固めた。


「……分かりました。その、よろしくお願いします。

それと、手袋の効果ですがとても頑丈にも関わらず摩擦熱で溶けないという効果です」

「なるほどの。石油製品全ての弱点を克服しておる訳か。

強化魔術で、身体の動きに繊維がついてこれない状態とかに便利そうじゃの。解った、アダマスを呼ぼう。

そして……」


 未だ警戒状態のアセナの小さな肩をポンと叩く。


「観光案内訳にアセナをつけよう。まあ、頑張ってくれ」


 ドゥガルド以外の全員が「えっ」と驚いた顔をするが、マリカ達は何となく予想は出来ていた。

 なので一番驚いていたのは、突然様々な責任を押し付けられたアセナである。

 そうこうしている内に、7歳の頃の小さなアダマスが連れられてきて、ドゥガルドが『経緯』を語る。

 アダマスの顔は相変わらず金髪碧眼の美形顔であるが、会った頃とはまるで似ていないオドオドと目を泳がせ、常に何かに怯えている様な態度が印象的だった。


「さあ、アダマス。

異世界人と接する領主としての勉強として、この異世界人達の観光案内をしてやってくれ。

お前は人と話す事が苦手じゃから、上手く言葉に出来ない時は補佐のアセナに任せると良い」

「は……はい……」


 どうやら『そういうストーリー』でいくらしい。

 つまりマリカ達は、はじめて会った人間として行動する事になる。

 こうして、急ごしらえの子供五人組が出来上がるのだった。

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