38話 ルーフェンの評価
――翌朝。
「う……ん」
夢のような一夜が明け、眩しい日差しが部屋に差し込む。
頭がボーっとしてて上手く回らない。
アレ、今日はなんの日だっけ。
私がそんな風に呆けていると。
「んん……おはよう、リフィルさん」
「あ、おはようございますわシュバ……」
!?
……。
!?
え?
あれ? なんでシュバルツ様が私のベッドに?
ってアレッ!? なんで私、お布団の中でこんな格好!?
「……は、わ」
慌てて頭まで布団を被る。
そうだ、思い出した。
私は昨晩……と言っても今日、彼とついに……。
望んでいた彼と結ばれたんだった。
それを思い返し、再び顔を真っ赤にする。
色々恥ずかしい発言や行動を思い返し、更に恥ずかしさで体を身悶えさせた。
「リフィルさん、その……身体は大丈夫、かい?」
「……ふぁい、大丈夫れす」
布団の中で顔を埋めて私は答える。
恥ずかしい。
でも、凄く嬉しい。
「リフィルさん、その、なんていうか、ありがとう」
「……ふえ?」
「私は正直、昨日まで全然勇気が持てなかったんだ。魔力は爆発的に増幅し、魔導師としての能力は甚だしいほどに開花しているとは言え、それでも自分に自信が持てなかった。それをキミが……補ってくれた」
「シュバルツ様……」
「リフィルさんを愛している。そしてキミからもらったこの愛と力、私は今日全力を以ってして、存分に奮ってくるよ」
今日は英傑選の日。
そうだ。
私の【魔力提供】はおそらくかつてないほどのエネルギーを彼へと注いだはず。
そんな彼なら、きっと――。
「はい! シュバルツ様なら、絶対に素晴らしい成績を残せますわッ!」
私は布団から顔だけ出して、彼へと笑顔で告げた。
●○●○●
――そして時刻は昼。
エリシオン王宮の宮廷前広場にて、英傑選に出場する選手たちが集められた。
「これが英傑選……。凄い人ですわね……」
私は広場内の柵で仕切られた外側、観客用スペースから、彼を見守り応援すべく訪れていた。
「リフィル姉様ーーーッ!」
人混みの中、付近で私の名を呼ぶ声がする。
「……っとと、すげぇ人だな。よお、姉様。やっと見つけたぜ」
「ルーラ!? ルーフェン!? 貴方たち、どうしんですの!?」
いつの間にか、ルーラとルーフェンもこの会場に訪れていた事に驚く。
「どうしたもこうしたも、シュバルツ兄様が英傑選に出るって日に、来ないわけがないだろ。俺たちだって、家族なんだし」
「そうなのですッ! ルーラもシュバルツ兄様の活躍が見たいのですッ!」
「さすがにお父様とお母様は置いてきたけどな」
ルーフェンとルーラもシュバルツ様を気にかけてくれているのだとわかり、私はなんだか嬉しくなった。
「で、今回の英傑選はどんな内容なんだ?」
なんでも知っているルーフェンが珍しく私に尋ねてきた。
「あら? 貴方が知らないなんて珍しいですわね?」
「調べてくる暇がなくてな」
「ふふーん。じゃあ今回は姉様から色々教えて差し上げますわ!」
そう言って久しぶりに優秀な弟にモノを教えられる事に喜びを覚えた私は、鼻息を荒くしてルーフェンとルーラに今回の英傑選について解説をした。
今回集められた選手は総勢三百人ほど。
まずはその三百人で一斉同時に第一試練を受ける。
その内容は、王が指定した魔物を時間制限以内にたくさん仕留めて来ること。
そしてその魔物のコアを入手してくる事だ。
この世の魔物たちには必ずコアというモノが存在する。私たち人間で言えば心臓みたいなモノだが、そのコアは魔物ごとに色の違う小さな宝石のような形状をしている。
制限時間以内にそのコアをどれだけ集めてくるかが勝敗の分かれ目となる。
そこで一気に選手を上位三十六名まで絞る。
そして第二試練。
第二試練では、三名一組でパーティを組まされ、チームごとに争い合う。
そしてそれはバトルロワイヤル形式での戦いとなり、指定されたフィールド内で、剣術や魔法を駆使し戦い抜き、そこで相手を戦闘不能にさせるか降参させていく。
もちろんこの時、相手を殺してしまうと規約違反で反則負けとなり強制リタイヤとさせられる。
これを全十二チームで行ない、最後の三チームになるまで時間制限なく続けられる。
そして最終試練。
残された九名は、エリシオン王宮、宮殿内にある闘技場エリアで一対一の試合を行なう勝ち抜き戦となる。
ここで上位三名までが『英傑』の称号と報酬を授与されるのである。
「はーん、なるほどな。しっかし、これ、いくら殺しは駄目だって言っても、人死には必ず出ちまうんじゃねえのか?」
「そうなんですの。毎回必ず犠牲者が出るらしいですわ。だから私、シュバルツ様が心配で……」
私の言葉を聞いて、ぽんっとルーフェンが私の肩を叩く。
「安心しろ、姉様。俺はシュバルツ兄様とこの前も一度お会いしたんだがな、彼はとんでもねえ事になってるぜ?」
「え? 一体いつ会っていたんですの?」
「確か五日くらい前だったかな。シュバルツ兄様が俺の屋敷に訪ねてきたんだよ。聞きたい事があるってな」
「聞きたい……こと?」
「……ま、そりゃ姉様は気にすんな。んで、その時に少しシュバルツ殿と手合わせしてみたんだよ。『覚醒』した彼の魔法力がどんな感じになってるか確かめたかったからな」
「そ、それでシュバルツ様はどうなんですの……?」
「そうだな、一言で言うなら……」
「言うなら……?」
私がごくり、と喉を鳴らして尋ねると、ルーフェンはニヤっと笑い、
「バケモン、だな」




