『触れることのできない・女王』
同時刻 《触れることのできない・女王視点》
大きな駅・大きなビルがある仮そめの現実の上に私は立っていた。
あの気に食わないご主人とやらに付き合わされて、宝探しゲームに興じていた。
宝探し。私はその言葉で少しだけわくわくする。厳密には『宝』という非現実的なものに対してわくわくしてしまう。
実態を伴わない宝に対して、路傍に落ちるキラキラとした小石を宝石のように見つめる子供のようにわくわくするなんておかしいのは分かっている。だから、誰にも言わない。
私は誰もが尊敬と畏怖の念で見つめる生徒会長だ。王道を極める生徒会長。
清く正しく公平に。
天上才気の作った奴隷制度を己の欲望を満たすだけに利用する下衆どもに正義の鉄拳を示すものだ。
私には、私怨というものが多少なりともある。
私の愛でてきた桜の蕾を無理矢理咲かせた輩を許せない思いがある。思い出すだけでも、頭が熱くなってクラクラしてくる。胸のあたりが真っ赤な怒りで燃えてしまう。
だけど、私は個人的な恨みで動いてはいけないのだ。
そうした男たちにも王道となる正しい道を示さなければならない。
生徒会長として、そして何よりも信頼してくれている私の奴隷になるために私を騙した私の親愛なる僕たちに示しがつかない。
正しい意味での王道を極めなければならない。
それが私の責務だ。
だから、私は私ができる精一杯の王道を極めるために動く。
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動いた結果何個か分かったことがあった。この世界ではNPCは受け答えができること。
そして、曖昧な質問では何も意味がなさないことだ。
『いや、そうじゃありませんわ。この中にきっと重要人物がいるんですわ』
しかし、学生からサラリーマン、腰が折れ曲がったご老人までが歩く雑多な人々の中では誰が重要な人物かが分からない。
『ジーニは何かヒントはいっていませんでしたか?』
私は自問自答する。
ヒントが何もないなどはあり得ない。広さも何もかもが不明な中でどのくらいの大きさのどんな宝があるかを考えるのは困難を極める。それはいくら異能力者であっても例外ではない。
だからこそ、何かヒントがあるはずだった。だが、いくら考えてもジーニは宝の数しか言っていなかった。
それならば、きっと分かりやすい目印があるはずだ。空中に飛んで、空からみて物理的に分かりやすい目印がないかを探すか。もしくは、最初に考えた通り宝を知る重要人物がいる可能性があるかのどちらかだろう。そして、その重要人物がいるとしたらそれは大抵分かりやすいシルエットとなっているはずだ。鑑定士が持つような虫眼鏡か、あるいは探偵が被るような鹿討ち帽か。
それでいて、私がこの場所にいることすらきっとランダムではないだろう。だからこそ、この場所に何かヒントがあるはずなのだ。
だが、目に映る風景は何も表すもののない空虚であった。




