全体の概観 前半
これを読んでくださっている皆さんのご存知の通り、小説家になろうの上位に上がってくる作品にはその時々における流行りというものが存在しています。
中には「異世界転生」「悪役令嬢」「追放」「おっさん」などある意味一つのジャンルとして確立しているものもありますよね。
今回はこれらのタイトルでよく見かける単語がどのように人気を獲得していったのか、その全体像を眺めていきます。
【調査方法について】
・大まかな流れ
1. 小説ランキングAPIを用いて、2013年5月1日〜2021年2月1日の「月間ランキング上位300作品」を取得
2. 小説のタイトルを品詞ごとに分解して「名詞」の出現頻度をカウントし、同率も含めた上位10単語を集計(同じ小説に複数同じ単語が含まれていてもカウントは1)
3. 各月の頻出単語のランキングを表によって可視化し、ランキングの大まかな推移と単語の登場時期をグラフによって可視化
・注意事項
※ あくまでタイトルに含まれる単語の流行りの調査です。そのテンプレな作風が誕生したタイミングとはズレがあります
※ 取得したデータは各月の1日時点での月間ランキングです
※ ジャンル別ではなく総合ランキングとなっています
※ 時期によっては300作品に満たない時期もあり、これは作品が削除されたりしたのだと思われます
※ 名詞の集計なので「遅い」「成り上がる」などの単語はカウントしていません
また、僕の判断でノイズとなり得る以下の単語については除外しています。
「者」「師」「書籍」「版」「完結」「こと」「~」「連載」「の」「ん」「コミカライズ」「(」「)」「よう」「・」
ちなみにこれら除外しなければ圧倒的に「〜」が多いです。
これはまぁ、サブタイトルとしてよく使われますから当然ですよね。
それでは見ていきましょう。
先に解説を読んでからグラフを見た方がわかりやすいかもしれません。
【表-2013】
読み方
・各データの形式は「単語 割合(%)」
・割合(出現確率)は例えば17.2だったとしたら、上位100作品中17.2作品にその単語が含まれているということ
・左にあるほど人気な単語
・スマホだと見づらいと思うので、横にしてみたりパソコンで見るなどしてみてください
【グラフ-2013】
読み方
・長さ=割合(長いデータほど人気な単語)
・古い時期のランキングに載っていた単語ほど下にある(逆に新しく流行り始めた単語ほど上にある)
まずは2013年からです。
やはりと言いますか「異世界」「転生」が圧倒的な強さを誇ってますね。
7月なんて24.1%ですから上位ランキングの4作品の内、1作品のタイトルに「異世界」が含まれることになります。
つまるところ、ランキングページを開いたら画面にほとんど必ず異世界を含んだタイトルが表示されているということになりますね。
また、順位が低いため見落としがちなのですが「ライフ」と「生活」は、同じ意味の言葉なので足し合わせることができ(厳密にはできない)、おおよそ「勇者」や「魔王」に匹敵します。
同様に、「物語」「記」「譚」についても大体一緒にできるでしょう。
以上のことから2013年代は「異世界に転生した勇者の生活の物語」を描いた作品が人気だったということがわかります。
なんといいますか、これ以上にないくらいなろう系に対するイメージを言い当ててますよね。
【表-2014】
【グラフ-2014】
続いて2014年です。
この年についてはあまり上位の単語には変化が見られません。
ただ、下位の方には「乙女」「ゲーム」「悪役」という単語がチラチラと見えています。
何だかアレの匂いがしてきましたね。
また、これは右側に同率10位にあたる作品が多いせいではあるのですが、なんとなく今後タイトルの長さが長くなっていくんだろうなぁ、ということが読み取れます。
【表-2015】
【グラフ-2015】
次は2015年になります。
そうです、ついに登場しました「悪役令嬢」です。
その勢いたるや凄まじく、3月にトップ10入りを果たしそのままの勢いで5月、11月、12月に3位にランクインしています。
もはや「悪役令嬢>勇者」というレベルに達してますから、悪役令嬢というジャンルを当たり前のように見かけるようになったのはこの時期と言えるでしょう。
また、「婚約」が初トップ10入りしたのもこの時期なので2015年は恋愛というジャンルの中で活発にテンプレが開発されていったことが伺えます。
他には「異世界」「転生」「勇者」「世界」に次いで「チート」が初の12ヶ月以上連続でトップ10入りを達成しました。
【表-2016】
【グラフ-2016】
さて、2016年です。
ここではある単語が急激に順位をあげました。その単語は何かと言いますと、「最強」です。
2015年には2回しかトップ10入りしなかったのにも関わらず、2016年の2月以降ずっとランクインし続けており2016年8月にはなんとあの「転生」を抜き去り2位となっています。
いわゆる俺TUEEE系の作品というのはこれよりも昔から流行っていました。
しかしここに来て「最強」が順位を大きくあげた理由は、タイトルが長くなっていくにつれて「この作品は俺TUEEE系の作品ですよ」というアピール合戦が始まったからではないかと僕は予想しています。
要約したら「俺が最強」という意味になるタイトルを説明風につけるのが当たり前になったのは、きっとこの頃からなんでしょうね。
「スキル」「破棄」の初トップ10入りをとったはこの年です。
また、小説家になろうでは2016年5月24日にジャンルの再編成が行われており、異世界ものの作品とそうでない作品は区別されるようになりました。
今後の順位の変動に注目です。
※後半に続きます
同様の調査を最新の投稿作品に対して毎月おこないます。
ブックマークをつけてくださると作者のモチベが上がり、☆をつけていただくとグラフの質が上がります