6/自作自演で失ったモノ
執筆に何を求めているのか。
なんだかんだ切っても切れないですよね。
自分はモヤモヤっとした頭の妄想を、
かっこよく表現して整理したいから執筆してます。
●町中
しがないレベル屋。
閑古鳥が鳴き続けるレベル屋店主であるオオバ。
彼が行き倒れていた男と出会って数年が経過した。
未だその男がアップグレードした”レベルの書”は健在である。
その”レベルの書”により、これまでオオバは様々な恩恵を得た。
手始めに、自身のレベル上げと資金繰り。
そして、潤沢になってところでレベル屋の喧伝をした。
自身の増加した魔力を消費し、街周辺にレアモンスターが出現。
それを聞きつけた冒険者が、それらを狩る。
当然、付近のレベル屋はオオバの店のみ。
数多くの冒険者が街に集うようになり、最後はオオバのレベル屋を訪れて帰っていく。
そして、オオバは冒険者から溜めた経験値を――
自身のレベルに、鉱物にと変えていった。
レベルが上がるにつれ、役場からの給金は増え続ける。
加えて”レベルの書”による鉱物資源の具現化。
ここ数年、生活費に困った記憶はない。
馬小屋のようなレベル屋も、いつしか街の中心街に移転した。
町長の勧めもあり、町役場の真横に店を構えるようになる。
繁盛しているのは、オオバのレベル屋だけではない。
冒険者はもとより商人なども増えている。
数年前の寂れていた景色とは全くの違ったそれ。
街の中心街や市場は、かつての賑わいを見せていた。
「おい聞いたか? 今度は南の森にレアモンスターの水銀スライムが出たってよ!?」
「ああ、知ってるぜ! なんでも群れで出現したみたいだな!? 俺たち
パーティーで一網打尽にしてやろうぜ!!」
本来、水銀スライムというレアモンスターは遭遇率が非常に低い。
見つけても逃げ足が速いため、満足な狩りができない事で有名だ。
だがそのレアモンスターが数体、近くの森に出現した。
それを聞いて、心躍らない冒険者はそうそういない。
なにせ水銀スライムを狩れば、経験値10万はくだらないのだから。
●町/オオバのレベル屋(本店)
「ちょっとサービス精神が旺盛だったか……?」
オオバ、2階の執務室から血眼になった冒険者達を眺めている。
まさに鉄の群れとなった冒険者の集団が、南口の門へ向かっていく。
今回の水銀スライム。
出現させたのは、やはりオオバだった。
1体につき魔力が50ほど。
それを5体分消費したが、冒険者達の顔色を見るに喜ばしい限りだ。
「執行部長。そろそろお時間です」
「はいはい、今行く。先に馬車で待っててくれ」
「かしこまりました」
と、それ以上にもの言いたげな美人秘書。
失礼します、と部屋を後にする。
「ったく。いつまで経っても片っ苦しいのは好かないな」
――”レベルの書”が名声や富を築くようになって数年。
オオバは執行部長に昇格した。
自らのレベルと、冒険者のそれを上げ続けた事による功績。
それが首都のレベル執行協会に認められたのだ。
彼のレベル屋は業態が拡大し、今では秘書や多くの部下を持つようになった。
反面、接待や部下の管理も増えた分、嫌気が差す時もある。
「……あぁ町長や役人方と会食をするより、アイツらと飲みかわす方がが気安くていいのに……」
ふと毎週、幼馴染と飲んでいた事を思い出す。
仕事も忙しくなり、ここ数ヶ月酒場に顔を出していない。
懐かしさに頬が緩むオオバ。
だが、すぐにため息を漏らし、ゆっくりとした足取りで玄関に向かう。
●町/レベル屋/玄関
玄関先に停めていた馬車に乗る寸前。
偶然にも、古い付き合いの男に呼び止められた。
「あれ、オオバじゃないか。これから外出かい?」
幼馴染の役場職員である。
当然ながら、彼の職場は隣の町役場。
「ああ、町長達と打ち合わせがあってな」
オオバ、馬車の足場にかけた片足を下げて向き直る。
飲み会に参加できていない事もあり、少し顔を合わせずらい。
「またムフフなお店で、でしょ。そんなトコばかり行ってないでたまには僕達と飲もうよ?」
「オレだって飲みたいよ。でも、仕事がなぁ……」
と、馬車の前に佇む秘書を流し見る。
彼女の無言の圧力が、言葉尻を弱くする。
「仕事、仕事、仕事。僕もいえた義理じゃないけど仕事ばかりじゃ疲れちゃうよ? 息抜きもしなくちゃ」
確かにそれもそうだ。
子供が4人もいる役場職員にとって、仕事は切っても切り離せないものだろう。
稼ぎが必要な分、仕事や家族との関わりについてオオバよりも物知りに違いない。
「それにオオバが来ないから退屈だっていってさ。最近の冒険者ブームであって他の2人も火がついちゃって、年甲斐もなく一緒にモンスター狩りをしてるんだよ?」
冒険者や宿店主も、レベル上げのために狩りをしている。
その事実に、虚しさを感じるオオバ。
「……そう、なのか……」
かつては同じパーティーを組んだ仲間。
だが自分は彼らを抜き去り、どこか彼らと距離を感じるようになった。
オオバは、すでにレベル15。
これ以上、レベルや富、地位を手に入れても彼らとの距離が縮まるわけではない。
腐れ縁、幼馴染、仲間。
そうした気安い接し方は、どうすれば自然にできたのだろうか。
揺れる馬車の中。
その思慮に、答えなど出なかった。
今作は、できるだけ連続投稿していきます。
今までは一気に書いて、推敲して、投稿していましたが……
1章書いて投稿スタイルにしたいと思います。
そのためモチベーションが保てるか、不安です……(汗)
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