5/夜明けの酒場
こういう小説投稿サイトだと、読者層の区別が難しいですよね。
なぜか。
読者よりも、投稿者の方が多いから。
投稿者同士の評価や作品の傾向。
それのせいか。
執筆する制作側に好かれる作品作る方が受けがいいのかな、と。
いつもそんな事を考えてます(笑)
●レベル屋/店内
昨夜、拾った男。
彼は”レベルの書”をアップデートといった。
その男は、先ほど店から旅立った。
行く当ても告げず、ただただ目を離した隙に姿を消したのだ。
店内は、まるで彼が始めからいなかったのような静寂が漂う。
オオバは独り、”レベルの書”を見つめていた。
少々傷んだ皮細工のそれ。
頁をめくっても、中身に何ら変わりはない。
「他人の経験値を、ねぇ……」
去る直前、放浪の男が告げていった内容を整理する。
まずは、レベル上昇に伴う端数の経験値を回収できる事。
通常、切り捨てられるはずの経験値。
その数値分を、自分の経験値に加える事ができるようになった。
2つ目は、獲得経験値が高いモンスターの出現方法の会得。
魔力が必要になるが、魔法陣を描いてモンスターを召喚できる。
俗にいうレアモンスターが、魔力尽きるまで狩り取れるようになった。
いわばマッチポンプというものか。
3つ目は、余剰の経験値を鉱物に変換する事。
”レベルの書”を通して、余った経験値は金や銀になる。
原理は上手くわからないが、これで効率よくレベルを上げられる。
つまり、生活する資金にもなるという事だ。
「捨てるはずだった経験値分を奪えるのはわかった。今は魔力も乏しいが
ずっとレアモンスターを召喚して倒していけば……」
存分にレベルが上がる。
その際、切り捨てるはずだった経験値も金銭に早変わり。
その上、職務を全うすればするほど他人から経験値が得られる。
嘘か誠か。
未だ信じられないのが本音である。
だが、実際に男のいう通り、他人の経験値を自分の物にできた。
「……やってみる価値はあるな……」
●町/とある酒場(夜)
それから数日後。
オオバ、むさ苦しい幼馴染と酒を交わしている。
錆びた装備の、冒険者。
声が小さい、町の役場職員。
柔和な笑みを浮かべる、町の宿店主。
オオバ以外のその3人はどこか訝しげに麦酒を飲んでいる。
それもそのはず。
今まで酒の席では、勘定を4人で割っていた。
だが、今日の酒代は全てオオバが奢るといい出したからだ。
「――んで、お前が奢るなんて気味わりぃんだが……どんな儲け話もらったんだ?」
と、奢りにかこつけて、湯水のように器を空にしていく。
冒険者の言葉に、役場職員や宿店主も頷いている。
「別に。ただ運動がてらに迷宮に入ったら偶然に鉱物の山にあたったんだ。本当、偶然だ」
と、目が泳がないうちに頭を反らして麦酒をあおる。
「ふーん。鉱物の山ねぇ……この辺の迷宮も探索し尽くしたと思ってたんだがな……」
信じられない。
そうした言葉が冒険者並びに男達の顔に書いてある。
件の迷宮は、探索され始めて30年も経つ。
内部も荒れ果てて、あとは朽ちていくだけの場所だと皆、思っていたからだ。
「隠れ部屋っていうのか? 土砂に埋もれてた先にあった鉱物を運よく持ち帰ってきただけだ」
オオバ、嘘の補足をしておく。
「それでも単独だったんでしょ? いくら運動不足だからって無茶はよくないよ……?」
と、憂い顔の宿店主。
そうだよ、と続けて相槌を打つ役場職員。
「……うんまぁ……街道と同じくモンスターがあんまり出なくて奥までついつい、な……」
実際、オオバはレアモンスターを1匹倒した。
たったそれだけの事だった。
迷宮など入らず、ただ人の目がない森の中。
そこで、なけなしの魔力を使ってレアモンスターを召喚しただけ。
魔力10では、銀色に光ったスライムが現れた。
逃げ足が速く倒すのに数日かかってしまったが、今日やっと1匹倒す事ができた。
すると膨大な経験値が彼に流れ込み、その異常な量に身震いした。
◆名前:オオバ(男)
◆レベル:5
◆経験値:5170/150
◆体力:29/65
◆魔力:3/13
◆戦闘力:36
◆防御力:20
◆素早さ:12
目を見張るほどの、経験値。
それが驚愕と感動となり”レベルの書”を落としそうになる。
一般的なモンスターを狩っても、得られるのは経験値10ほど。
数日粘った挙句、上々すぎる結果だった。
そして、自身のレベル上げをする前。
余った経験値を書の能力で鉱物に変換したのだ。
書から生まれた鉱物は、金の塊と2つの銀の塊。
それを街の鍛冶屋で鑑定してもらうと、最低でも200ドルツは下らないという。
平民の収入や給金をはるかに凌ぐ額である。
1年近くは無職でも遊んで暮らせるだろう。
とにもかくにも。
本当の意味で、それはあぶく銭。
手始めにこうして4人分の酒代を振る舞っているというわけだ。
オオバにとって、レベルは苦労せず上がる。
余った経験値は、簡単に金に還元できる。
その金で美味い酒や仲間と笑い合える。
贅沢三昧だ。
「そういや、お前の方はどうなんだ? 冒険者稼業は順調か?」
「けッ、こっちはいつも通りの地道なレベル上げだよ!」
はは、と高い笑い声の役場職員。
「あともうちょいでレベル7なんだ! おうオオバ、経験値が溜まったらお前んトコに邪魔するからな! よろしく頼むわ!」
「ああ。首を長くして待ってるよ」
「なにをぉ~!?」
酒も手伝って、幼馴染たちに笑顔が絶えない。
――しかし、オオバは傍らに思う。
もし、レアモンスターを他の冒険者にも狩らせたらどうなるのか。
おそらく自分と同じように有り余るほどの経験値が得られるだろう。
同時にレベル上げを自分で行えば、当然、切り捨てられるはずの経験値は全て自分の物だ。
自分だけ独占するよりも、さらに効率よくレベル上げができるはずだ。
そして余った経験値はいつでも鉱物へと――
「おい、親父! 今夜は飲むぞ! この店で1番高い酒とつまみをジャンジャン持ってきてくれ!!」
オオバ、空の器を掲げて酒場の店主に叫ぶ。
それに賛同する3人。
彼らの酒盛りは、朝日が昇るまで続いた。
今作は、できるだけ連続投稿していきます。
今までは一気に書いて、推敲して、投稿していましたが……
1章書いて投稿スタイルにしたいと思います。
そのためモチベーションが保てるか、不安です……(汗)
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