4/レベル神への冒涜
『名前負け』ってありますよね。
もし『タイトル負け』って言葉があるとすれば……
この作品のタイトルは負けているのでしょうか……?
そもそも第一印象のタイトル。
そのイメージを壊して勝てる、内容って難しいですよね。
そう考えると、せめてイコールくらいになりたいです(笑)
●レベル屋/居間
「一宿一飯の恩義をしたい」
開口一番。
昨夜拾った、放浪姿の男がオオバにいい放つ。
「恩義?」
「そう、我の飢えを凌いだ上に朝食や寝床をもらった。感謝したりないのだ。何かできる事はないか?」
「……本当に唐突だな……」
と、首を傾げる。
男いわく、自身は無一文らしい。
そんな不安要素しかない男から何を求めるというのか。
その意匠を凝らした服を売れば、金にはなると思う。
実際、独身のオオバでも毎日、工面しながら生活をしている。
むしり取った形になるが、金銭を求めてもバチは当たらないだろう。
「………………」
しかし、と心で反芻する。
陽が落ちた寒空に、薄着姿で放り出すのも心もとない。
その後、凍えて死んでしまってはこちらが殺したような気持ちになる。
「おお、そうだ! 貴殿が持っている”レベルの書”のアップグレードしてやろう! うん、それがいい!」
「は? あっぷぐれーど? なんじゃそりゃ?」
満面の笑みで男は店内、受付の方へ消えていく。
1分も経たないうちに、男は”レベルの書”を抱えて戻ってくる。
「ほれ、これでアップグレード完了だ! 存分に使え!」
「使えって……お前さん、オレの書に何したんだよ……?」
「アップグレード。つまりは改良だ。我だけが知る裏ワザで貴殿の”レべルの書”を唯一無二の書に変えたのだ」
なにやら不審な事をされたようだ。
それだけは理解できたオオバ。
「これで貴殿は富も名声も思うがままだ。さりとて我も人間の頃、同じ事をして先代魔お――」
「――おーい! 誰かいるかぁー!? レベル上げてくれやーッ!」
男の背後、店先から野太い声が届く。
にたり、と口元が吊り上がる放浪の男。
「いい機会だ。百聞は一見に如かず。それでいつも通り、仕事をしてみろ」
●レベル屋/店内
遅くなった事を謝罪しながら、オオバは仕事をこなす。
まず客の冒険者のレベルを確認。
奪い返した”レベルの書”にはこう記されている。
◆名前:カイ(男)
◆レベル:6
◆経験値:300/200
◆体力:70/70
◆魔力:15/15
◆戦闘力:39
◆防御力:18
◆素早さ:15
次に経験値が溜まり、レベル上昇に必要な分あるかどうか確認する。
必要経験値は200。
そして、現在300。
したがって、レベル7の条件は満たしている。
惜しい事に、100の経験値は切り捨てられる。
それは冒険者にとって常識の範囲内だ。
許可を取るまでもない。
「レベル7になれるぞ。上げていいんだな?」
「ああ、頼む」
常套句と祝詞を唱え終わると、冒険者の身体が淡く発光する。
【カイはレベル7に上がった】
【カイの能力が上昇した】
◆名前:カイ(男)
◆レベル:6⇒7
◆経験値:0/250
この冒険者の頁に浮かび上がっていく文字。
この文字は”レベル神の神託”。
レベル神が、変化したレベルや能力を報告してくれる事からそう呼ばれている。
《追記:オオバは経験値100を取得した》
「ん?」
オオバ、いつもと違う”神託”につい言葉を漏らす。
「なんだ? ちゃんとレベル上がったんだろ?」
「あ、ああ。大丈夫だ」
その後、またもや冒険者にレベル申請書が高いとケチをつけられる。
客が遠のいた頃合いで、オオバは”レベルの書”に自身の手を置いた。
自分のレベルを確認するためだ。
◆名前:オオバ(男)
◆レベル:4
◆経験値:180/130
「待てよ、おかしいぞ。モンスターも狩ってないのに経験値なんか得られるわけもないだろ……?」
つい先日まで、確か経験値は100も満たなかったはず。
どこから経験値を得たのか、不自然すぎる現象だ。
「おかしくないぞ、店主。それがアップグレードだ。他人のレベル上昇で切り捨てられる経験値を我が物にできる。そういう仕様に変えたのだ」
どこから見ていたのか。
居間へ続く扉に寄りかかる、放浪の男。
「これで貴殿は何もしなくとも仕事をこなすだけで、レベルはグングンと上がっていく。かつての我のようにな」
と、オオバに近づき優しく肩に手をやる。
「これこそ我のみが知るレベル神への改竄だ」
今作は、できるだけ連続投稿していきます。
今までは一気に書いて、推敲して、投稿していましたが……
1章書いて投稿スタイルにしたいと思います。
そのためモチベーションが保てるか、不安です……(汗)
もし、設定や内容でちょっとでもワクワクしてもらえたら
ブックマークや評価をポチっとしていただけると励みになります!!
どうかよろしくお願いします!!