2/悪評のレベル屋
個人的に、縦読み派です。
横読みだと、あまり頭に入らないからです。
加えて数字も、漢字派です。
横読みだと、1000とかの数字が変な感じになるからです。
でも、読みやすさ考えたら横かな……と思っている自分もいます。
そのため、本作は横読み推奨です(苦笑)
●レベル屋/店内
いつも通り、昼前に店を開店する。
数時間後、やっと1人目の冒険者が入店した。
「邪魔するぜ。経験値溜まったんで、よろしく頼むわ」
「……ん。あぁ、らっしゃい……」
受付でうたた寝をしていたオオバ。
目をこすりながら、大きな欠伸をする。
ぼやけた視界に映る、男の顔。
あまり見ない顔だ。
一見さんだろう。
「ねぇちょっと……本当にココでレベル上げるの?」
「仕方ねぇだろ。次の街まで歩いて3日だ。この街でレベル上げとかねぇと経験値が無駄になっちまうだろ」
「そうだけどさ……こんな狭いトコで何もレベル上げなくていいじゃない……他のトコ行こうよ……」
「この街にはレベル上げれるトコは、この店しかないんだよ。我慢しろって」
男の冒険者が連れの女を諭す。
仲間の女は見るからに、怖気づいて店先に佇んでいる。
それもそのはずだ。
オオバが営むレベル屋は、他の街のそれと比べて規模が小さい。
店内は、数席の木製椅子と受付のみ。
面積にして5畳もない。
とにかく狭い、木造の内装なのだ。
「きっとモグリだよ、ココ……違うトコにしようよ……」
モグリとは失礼な――という言葉は飲み込んでおく。
けなされるのは、慣れている。
誰が、どう見ても信用に足る店構えではないのは明白だ。
「悪いな嬢ちゃん。ココは個人営業なんで、店主のオレしかいないんだ。他にレベル還元資格を持ってるヤツがいなくてな」
狭いが勘弁してくれ、とオオバは冒険者の女を見る。
だが、女は扉越しに隠れてしまう。
「ははっ。いや、すまん。連れの失言は謝る。で、頼めるか?」
「任せとけ。んじゃさっそく始めるぞ」
オオバ、年季の入った書籍を机の上に音を立てて置く。
レベル屋御用達の道具”レベルの書”だ。
滑らかな皮細工の表紙。
中身の分厚さは、ゆうに拳1個分。
少々痛んだ様子はあれど、この書により他人のレベルを上げる事ができる。
男の冒険者、慣れた様子で右手をその古びた書籍に乗せる。
「よし、もういいぞ」
オオバの声で、冒険者は手を静かに引く。
オオバ、黄色の頁をめくり、とある頁を開く。
その頁にはこう記されている。
◆名前:エルグラ(男)
◆レベル:2
◆経験値:120/80
◆体力:30/45
◆魔力:10/10
◆戦闘力:20
◆防御力:12
◆素早さ:10
「ん、レベル3に上がる経験値は十分に溜まっている。上げていいんだな?」
「愚問だ」
その答えに、大きく頷くオオバ。
「かのレベル神の名に於いて、代行者オオバが――」
と、レベル上げのための祝詞を唱え始める。
同時に冒険者の身体を覆うような、かすかな発光。
【エルグラはレベル3に上がった】
◆名前:エルグラ(男)
◆レベル:2⇒3
◆経験値:0/100
【エルグラの能力が上昇した】
【体力が微回復した】
◆体力:50/50
◆魔力:10/10
◆戦闘力:22
◆防御力:13
◆素早さ:10
旧表記が消え、新しい能力の表記が更新される。
その頁に記された者が、レベル3になった証拠である。
「お疲れさん。ほれ、見事レベル3に到達したぞ」
と、男の冒険者に自身の頁を見せる。
そして、いつもの定型文を添える。
「レベル申請書はいるか? 1枚で10ドルツだ」
レベル申請書。
現在のレベル――冒険者の場合、レベル3――を役場に申請するための推薦状である。
それを提出する事により、街役場にて冒険者の情報が更新される。
レベル3になれば、役場からの給金が増える。
確か、今だと日払いでも2ドルツはもらえるはずだ。
ここで、少し冒険者の顔色が変わる。
「うげッ10ドルツってボッタクリじゃねぇか……相場は2ドルツのはずだろ?」
「嫌なら他のレベル屋に頼みな。隣街のレベル屋は、さっきいってた通り、歩いて3日だ」
「……足元見すぎだろ……」
加えて説明すると、レベル申請書はレベル屋でしか発行できない。
つまり、レベル申請書がないと自身のレベルが確定されないのだ。
この冒険者の場合、ずっとレベル2として扱われてしまう。
そうなると、冒険者も死活問題だ。
レベル2のままだと、役場から支給される給金が違ってくるからだ。
「もうっいわんこっちゃない! もう申請書なんかいいから早く宿屋に行こうよー!」
「……そうだな、うん。じゃあなクソ親父。そんな高値で誰が買うかよ!」
2人の男女、冒険者が去っていく。
レベルを上げてやったのになんて言い草だろうか。
「ちくしょう、こっちだって生活がかかってるんだ。四の五のいうんじゃねぇよ、ハナタレ小僧が……」
と、椅子に背を預けてふんぞり返る。
そのまま閉店を迎え、結果、その日の客はその冒険者だけだった。
モンスターの出現が減った事はもとより。
彼、オオバが営むレベル屋の風評はあまりにも良いものではなかった。
今作は、できるだけ連続投稿していきます。
今までは一気に書いて、推敲して、投稿していましたが……
1章書いて投稿スタイルにしたいと思います。
そのためモチベーションが保てるか、不安です……(汗)
もし、設定や内容でちょっとでもワクワクしてもらえたら
ブックマークや評価をポチっとしていただけると励みになります!!
どうかよろしくお願いします!!