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第2話【家族】

部屋のドアを開ける。

最低限の物しか置かれていない殺風景な部屋だ。

作業机に銃が入ったケースを置き、上着をクローゼットの中に入れておく。


恵梨香が殺風景な部屋だと息が詰まるなどと言い、無理やり渡してきた本が入っている本棚の前に置かれた

写真立てを一瞥(いちべつ)する。


写真には無邪気な笑顔を浮かべている少年と少女の後ろに微笑を浮かべている自分が写っている。

3年前に撮った物であり、一緒に映っているのは弟と、妹である。二人とも来年で13歳になる。

この写真を撮った頃、親は他界していたが、祖父が妹達を引き取ってくれた。

彼らには返しきれない恩がある。


写真から目を反らし、ケースを開く。

2年間使い続けた愛銃である。所々に細かい傷が付いている。

手入れを怠った事はなく、砂漠やジャングルなどで付いた傷だ。

銃の名前は30-06口径セミオートマチック・ライフルだ。

元々の設計図としてはスプリングフィールドM1903という銃だったが、改良に改良を重ね、軍が制作した。

射程は現段階で最長とも言われており、戦車の装甲を貫いたという噂もある。

真実は何処までなのかは分からないが、信用は大きいだろう。


銃のアタッチメントの掃除や、修理をしている途中、戸が叩かれる。


「どうぞ。」


特に隠す物はない為、鍵は寝る前以外閉めていない。

ドアが開く音が聞こえる。銃の掃除が終わったタイミングで来訪者に目を向ける


「たくみはもうちょっと男の子らしくしてもいいんだよ?」

そんなことを言う恵梨香がそこにいた。恵梨香はベットに座る


彼女はこうやって時々部屋にやってきては茶化して帰っていく。正直何がしたいのか私には分からない。

恋愛感情を持っている様子もなければ、何かに思い詰めているようにも見えない。


「・・・。まだ何かに怯えているように見えるよ。またあの夢を見たのかな?」

少しの沈黙の後、彼女はそう言った。

人を命令1つで殺せる自分が何に怯えるのだろうか。

確かに地獄のような日々を時々夢で見るが、怯えるということは無い。


「ずっと自分を騙し続けている事、まだやっているんだね。」

彼女は見透かすように私にそう言ってくる。


「何度も言っているが、なんのことだ?まったく身に覚えがないのだが。」

昔から、彼女は人の感情に敏感だったが、自分の感情に気づかないほど鈍感ではない。


「・・・。うん、そっか。でも私は君のお姉ちゃんだからね。ずっと君の味方だよ。」

彼女が悲しそうにそう言う。


「私が君の弟になったことなどないのだが。」

彼女の顔を見ていると、なんだか心が痛くなる感覚がする。不愉快だ。


「明日も早いのだろう?さっさと寝たらどうだ?」

彼女は明日から前線に出ることになっている。暗殺の仕事があるのだ。


「うん、でもこれだけはさせてね。」

彼女がゆっくりと近づいてくる。

いつもなら拒絶するなり、避けたりするのだが、今はそうすべきではないとそう感じる。

彼女に引き寄せられ、されるがまま優しく抱擁させられる。


彼女が子守歌を歌い始める。まるで赤子をあやす母親のように。

凍った心が暖められる感覚が訪れる。


私は、彼女の腕の中で静かに目を閉じた。

そして、彼女に促されるまま睡魔に飲まれて行った

今回は長文になってしまいました。

何度か手直しをし、本来書く予定だった主人公の過去を3話に回そうと思います。


今回も感想や意見などありましたら書いていただけるとありがたいです。

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