告
「これから、ゲームの説明に入る。耳かっぽじって、よく聞いとけよ」
ロアン(もう、さん付けする必要ないでしょ)のその言葉に、緊張感が漂う。俺以外の4人のクラスメイト、その全員が身構えているのがわかる。
「ゲームって、どゆこと?」
そう言ったのは、木戸円香。どうやら、彼女の辞書に「緊張感」という言葉はないらしい。残念ながら、先程思ったことは訂正しなければならないようだ。
「全員が身構える」の前に、「1人を除く」という言葉が必要だったらしい。
「うるせえなー。人の話は最後までよく聞けー」
間延びした言葉の中に、凄みや威圧のようなものを感じた。これには流石の木戸もたじたじで、それ以上言葉を続けることはなかった。
「それじゃあ説明にはいるぞー。まず、1つ、重大発表ー。お前らがここに呼ばれたのは、次の王様を決めるためじゃない。この国に住むクズ共の娯楽のためだ。」
…言っている意味が、全く分からない。国のためじゃなく、「娯楽」?他の全員(訂正は不要)も戸惑っている。そんな僕達に全く構うことなく、ロアンは言葉を続ける。
「今この世界は、1つの国にまとまっている。500年続く、平和の時代だ。もちろん、平和はいい事だ。だが、今回は少し長く続きすぎたようでな、平和に飽きるクズ共が出てきた。それも、たくさんな。この国の人間のほとんどが、そのクズ共だと思っていい。」
それから、20分程。ロアンから告げられた事実は、あまりに衝撃的過ぎるものだった。僕の中でも整理が追いついていない。
彼が僕らに伝えたことは、こうだ。
500年間続く平和の時代、それに飽き始めた「クズ共」が、ある遊戯を考えた。それが、異世界から人を「英雄」として迎え入れ、互いに争わせ、殺し合いをさせる、というものだった。
最初の「遊戯」が行われたのが、100年前のこと。今までに、30回ほどの遊戯が行われてきたようで、その形も、その都度変化しているらしい。そして今回、次の王を決める、という一大イベント合わせて遊戯を行うため、俺たちが呼ばれたようだ。
そして、そのファーストステージが、王子ごとの対抗戦。その後にも、いくつかのステージがあり、最終的なクリア報酬が、元の世界への帰還だ。
ゲームオーバーになると、死ぬ。ゲームオーバーになる理由はいくつかあるが、それは分からないらしい。
ゲームオーバーにならないよう、与えられた能力でせいぜい生き抜け、との事だ。
本当は言っちゃいけないことだが、ロアンは「クズ共」の事が嫌いらしく、それを教えてくれたらしい。
…正直、心の底からムカついている。だが、ゲームクリアをしないことには、元の世界に帰れない。
とんだクソゲーだ。無理矢理ゲームに参加させられ、死ぬリスク背負わされて、報酬が、「元の世界への帰還」。俺へのメリットが一切ない。ロアンいわく、ここで与えられた能力は残り続けるらしいが、そんなの、リスクに見合った報酬じゃない。
けど、俺には1つの選択肢しか与えられていない。もう、やるしかないか。
そう思っていると、おもむろにロアンが口を開いた。
「そろそろ、お前らの能力の説明をするぞー」