王
文字が力になる?送り込んだ魔術師?国のために戦う?
思考が追いついていない。
「え、どういうこと?」
そう話しかけてきたのは林道賢治。俺の数少ない(というか唯一の)友人だ。
「ごめん、わかんない」
「そりゃそうだよなー」
2人同時に、大きなため息をついた。
ヒソヒソ声がだんだんと大きくなっていく。誰もが、この状況に疑問を感じていた。そして、疑問に答えるように、王様が口を開いた。
「詳しいことは、彼に聞くといい」
その視線の先には、先生が立っていた。
「え、魔術師って先生のことだったの?」
みんなの気持ちを代弁したその声は、結城拓斗のものだった。彼はクラスの中心人物で、姫川結衣好意を寄せているらしい。
真剣な表情で、先生が口を開く。
「そうだ。今から説明をするから、静かにしていてくれ」
誰もが口を噤む。波を打ったような静けさが広がった。
「この国では今、王の後継を巡る争いが起きている。そこで、君たちを呼んだのだ。今から、後継者候補の4人の王子がここに来る。各々誰につくのか決めてもらい、4つに分かれて戦ってもらう。ここまでで質問がある者は?」
えーっと、つまり、この国の後継者争いのために呼ばれたってこと?あれ?危機的状況は?
頭の中がゴチャゴチャになっている。
それはみんなも同じのようで、全員、考え込んでいる。
「いないようなので、説明を続ける。戦いが終わり、後継者が決まった後、君たちにはこの国を守る戦士となってもらう。勝者に着いたものを幹部とし、その他の者はその下で働いてもらう。また、負けた王子3人は斬首となる。以上、説明終了だ。」
なんとなく事情は理解できた。
あれ、てことは、俺たち…
「元の世界には帰れないんですか?」
思わず声を出してしまった。みんなの視線が俺に集まる。
「ああ。今のところは、君たちを元の世界に返すことは出来ない。今の技術では、呼ぶことは出来ても返すことは出来ない。他に質問は?」
「戦いって、具体的にどういう物なの?」
そう言ったのは木戸円香。ギャルで、姫川結衣といつも一緒にいる。なんで仲がいいのかは、不明。
「4人の王子たちはそれぞれ軍と城を持っている。それに君たちを加えて戦争をし、敵の城を落としてもらう。最後に残った城の主が王の後継者となる。」
「殺し合いすんの?」
一切敬語を使おうとしない彼女に少しムッとしながら、先生が答える。
「4つの城を含む広大な地域に巨大な結界を張る。その地域内で致命傷を負った場合、即時この王宮の医務室へ転移されるようになっている。首を斬られていても治すことができるため、死ぬことはまず無いと思っていい。そろそろ時間なので、質問は締め切る。間もなく、4人の王子がここに来る。じっくり考えて、正しい道を選ぶんだな」
そう言うと、先生は部屋を出ていってしまった。
黙っていた王が、突然口を開いた。
「王子たちの入場である」