始
気がつくと、見たことも無い場所に立っていた。周りを見ると、クラスメイトも立っている。みんな一様に戸惑っているようで、周りをキョロキョロ見回したり、近くにいる人と話している人が多い。
俺の記憶が正しければ、今は書道の時間だったはずなんだけど…
パン、とほっぺたを叩いてみた。うん、やっぱり痛いね。なんとなく察してはいたけど、これは現実らしい。
落ち着いて周りを見回してみると、さっきよりもずっと多くのものが見えた。人って、パニくると本当に周りが見えなくなるんだな。
どうやら、41人のクラス全員がここにいるようだ。服装は変わらず、みんな制服のままだ。
そして、クラス全員を囲むようにして、何十人かの兵士が立っている。歴史の教科書に乗っているような、若干古臭い感じの鎧と槍を持っている。
そして、少し離れたところにある立派な椅子に、老人と老婦人が座っている。かなり偉い人なのだろう。
今俺が立っているこの建物も、よく見てみるとかなり立派だ。何かのお城のように見える。
…あれか?もしかしてこれって、クラスごと異世界に転移させられて、国の偉い人に頭下げられて、その国を守るために戦う、みたいなアレ?
…もしそうなら、日本の漫画って凄いな。
呑気にそんなことを考えていると、あの立派な椅子に座っている老人が口を開いた。
「突然見知らぬ場所に来て、戸惑っている者が多いだろう。ここは、さっきまでそなた達がいた世界とは別の世界なのだ。私が、魔術師をそちらの世界に送り込み、そなたらをこちらの世界に召喚した。同意も得ずに呼んでしまって、誠に申し訳ない」
そう言うと、その老人は深々と頭を下げた。
…やっぱこれって、異世界召喚ってやつか。俺、将来漫画家になろうかな。
てか、もしかして、このおじいさんって…
「申し遅れたが、私はこの国の国王をしている。なぜそなたらを呼んだかというと、この国が極めて重大な危機的状況にあるからなのだ。ここに来る直前、私が送り込んだ魔術師が、そなた達に文字を書かせているだろう。書いた文字が、そなたらの力になっている。どうかこれから、この国のために戦って頂きたい。」