二話「禁断の言葉」
翌日の朝ことだった。目が覚めた私のベッドの前にある二つのベッドのカーテンが開かれていた。そこには若い二人の男女がそれぞれそこにくつろいでいた。男性の方はまだ寝ているのだろうか。
「では、神谷まりさん。検査をしましょうか?」
「は?行きたくないし?私のことは私が分かるんですけど?」
「いやいや、ダメですよ。検査は大事ですから」
「そこの男性はいいんですか?」
「彼?彼はまだ寝ているです……し……まずい、おい、誰か来てくれ!!」
その後、医者と看護師の判断により寝ていたと思っていた彼は亡くなっていたことが判明した。彼女が言うには昨日までは元気だったらしい。そしてそんな彼女は看護婦と共に検査へと連れて行かれた。
部屋に残された私は大崎さんと他愛のない話をした。ただその話の中にはこんな話があった。
「さっき運ばれていった男性がいるだろう?彼は昨日、言ってしまったんだ。彼に殺される言葉を」
「彼って?」
「昨日話した”辻井令”君だよ」
「何と言ったのですか?」
「そんなこと私が言ったらダメだ。だが、そうだな。英語は分かるか?」
大崎さんに聞かれて私は頷いた。
「アイドンツーゴーだ」
大崎さんの言葉を脳内で英語に書き換えてみる。”I don't to go.”、つまり行きたくないだ。行きたくない?私は先程出て行った彼女が言った言葉を思い出して大崎さんに報告する。
「それ、さっき彼女も言ってましたよ」
「何と。二人にも説明したのに。なぜダメか?それは言葉を掛けてるからね。ここと」と大崎さんは自分の心臓を指差す。
いきたくない。
生きたくない。
何かが脳内に引っかかった。それを考えながらも彼と引き続き他愛の言葉を交わした。そんな中で彼女は何もなかったかのように検査から帰って来た。その後、私は何もなかったかのように一日を過した。母親は来なかった。




