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私とあなた

「で、その具体例の理由をきかせてもらっていい? その、金髪とか美少年とかってどういうこと?」


余程ツボに入ったのか、笑いをこらえながら、問いかけられた。


「今年の春先に女生徒の間で一躍有名になった校門前の金髪の王子様っているじゃない」

「……王子、様? 女子の間でそんな面白いネタ、騒がれてたのか?」

「それと、一年生で顔があまりにも綺麗なんだけど、特定の人物以外には表情筋を一切動かさなくて有名な氷結の美少年がいるでしょ?」

「…………え、なに、その呼ばれたらクソ恥ずかしい二つ名」


この男子、噂に疎いな。


「とにかく、女子の間でかなり騒がれたメンズがですね、親友たちの彼氏候補なの」

「……すげーな、お前さんの親友。どえらいご縁に恵まれたんだな」


確かに。明子と和子にそれぞれの出会いをきいた時は、なんだその出会いって思ったけど。


「で、そこまですごいのでなくていので、ご縁が欲しくて思わずぼやいてしまったというわけか」


代弁してくれてるので、こくこくと素直に首肯する。

悩み事は親友とか、幼馴染とか近しい人ではなく、他人の方が話しやすいってのは本当らしい。


「そんな激しい友人がいるってことは、類は友を呼ぶってヤツで、お前さんの周りにはいい物件はいないわけ?」

「えーとですね、」

「ほら、乙女にあるまじき呟ききかれてんだから、この際全部きいてやるから、言ってみろって」


ほれほれと隣に呼ばれるも、日陰では寒いので、逆に日の当たる場所にお誘いして日向に二人して座りなおす。


「チケットの神様と、トレジャーハンターって有名な二人がいるじゃない」


チケットの神様は、浩太郎。

トレジャーハンターは志信のことである。


「あの二人が、小学校上がる前から続く腐れ縁の幼馴染でして、かつ、住んでる場所も両隣なんですね」

「……ほ、ほほう」


あとなんだっけ、和子や明子は何を騒いでいたっけ、えーと、


「お互い親が共働きで帰ってくるのが遅いので、晩ごはんは料理男子な幼馴染が殆ど作ってくれてる、かな」

「晩ごはんを、手作り」

「朝は、用事がない限り、三人仲良く登校してる感じ」

「え、何、そのおいしい設定。盛り過ぎだろう?」

「…………そっか。第三者がきいてもやっぱりそう思っちゃうのか」


親友二人が単にネタとして騒いでいたわけじゃなかったか。

ごめん、二人とも。あなた方の表情があまりにも真剣でなくてニヤついてたので疑ってました、マジごめん。


「そんな幼馴染が傍にいて、彼氏云々の発言しちゃうわけ?」


ですよねー。

そう、なりますよねー。


「いや、待て。三人ってのが微妙か」

「え?」

「男二人で牽制してるんじゃね?」


牽制か。

今はともかく、私の昔は知らない所でしてたのかな。


「二人がどうのっていうよりは、私の方が問題かなーって」


そうだ。

浩太郎と志信が、というよりもまずは私の心だ。

二人がどう思っているかなんて分からないけど、自分のことなら分かる。


「二人がどんなに他の女の子に目を向けても、私、悔しくならないの」


二人が愛を叫ぶ存在がリアルな女の子でなくて、アイドルやアニメキャラだから悔しくないのかと思ったことがある。

でも、クラスの女の子と話していても、何も感じないのだ。むしろ、そのまま仲良くなって彼女にしてしまえと応援してる自分がいる。



「幼馴染は対象外ってことか。……なら、さくっと他の男子に目を向けないともったいないな。てことで、俺っていう素敵物件が目の前にいるけど、検討してみない?」



カーディガンありがとなと返却してくれながら、ついでとばかりに自分自身をオススメしてきた彼を凝視する。


「え、と。私、ごくごく普通の女子で、名乗りをあげてもらえるような者じゃないんだけど」

「寒そうに居眠りしてる俺に、カーディガンかけてくれる優しさと、うっかり本音をダダ漏れさせる面白みがあるじゃん」


え、ポイント、そこ。前者はともかく、後者はどうなの。


「女の子が淋しそうにしてたら、俺としては笑顔にしたいなって思うわけよ。しかも、彼氏が欲しいって理由なら、彼女いない身としては名乗りを挙げるしかないだろ」


口説かれるってのは、こんなノリなんだっけ。


「これも巡り合わせってやつだろ。うだうだ悩まずに、取りあえず俺の手をとってみない? そんな淋しそうな顔、俺の隣ではさせないからさ」


まっすぐに伸ばされた手とことばに、心になにかがすとんとおちる。

はじめてあった筈なのに、どこかで出会ったような気がする不思議な男子生徒。

その彼が浮かべる笑顔が、とてもまっすぐで、本当に私に向けてくれてると実感して、その手のひらに自分の手をそっとのせる。


「よろしく、お願いします?」

「なんで、疑問形なんだよ」


弱気な私の返答に、速攻でツッコミをいれつつも、しっかりと手を掴みとり微笑んでくる。


「取りあえず、名前を「よーし。これで縁は結ばれたけど、一番の問題点ゆっとくな」


名前をききたいなーという私の質問をぶったぎり、彼が爆弾発言をかました。



「話きいて思ったんだけど、俺ら時間軸が違うみたいだわ」



――――時間軸? え、コイツ、何言ってるの?






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