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親友二人

腐れ縁の幼馴染いわく、

私の親友は個性が溢れまくっているらしい。


証言1。幼馴染・浩太郎。

「あの生徒会長の下で、普通に仕事してるだけで普通じゃないから。あの人、無茶振りの固まりだぜ? 先輩に言われて手伝いに行ったことあるけど、鬼の所業だった。生徒会役員はМの集まりだと思う」

証言2。幼馴染・志信。

「無駄に顔の綺麗な一年生に追っかけられてる央守さんって、さりげなくなんでもこなすよね。彼女、運動部とか文化部関係なしに助っ人しまくってるし。のほほんとしてるけど、実は隠されてるポテンシャルが凄まじいでしょ」


「しかも、春野って校門の金髪イケメンの関係者だろ?」

「確か、央守さんのお兄さんって卒業式でうちの妹に手を出したらマジで締めるって公言して、その言葉を代々伝えるように指示したらしいね」


志信に作って頂いた晩ごはんを三人で頂きながら、いつものように学校での話をする。

どうやら本日の話題は、私の愉快な親友たちみたいだ。


「結局金髪イケメンは春野とくっついたわけ?」

「企業秘密です。なぜに、大事な親友のデリケートなネタを売らなきゃなんないの」


ごちそうさまと、箸をおきつつ浩太郎を睨み付ける。


「そこは幼馴染特典で情報まわせよ」

「俺としては、央守さんと例の一年生の方が気になるんだけど。そっちはどうなのさ」

「いやいや、だから、教えないっつーの」


教えたくとも、現在とてつもなく微妙な空気が流れてるので暖かく見守ってる最中だっての。

どういう風に落ち着くかなんて、私の方が知りたい。

どうか無事にくっついて、二人に笑顔で彼氏ができたよって報告してほしい。

いや、本人たちが言ってこないだけで、私としては、お前らすでに彼氏彼女だろうって思ってますけどね。


「で、親友二人には春がきてるみたいだけど、栞にはきてねーの?」

「……来てるように、見える?」


浩太郎の不躾な問いかけに、思わずドスのきいた声で答えてしまう。


「浩太郎、もう少しオブラートに包んできいてあげなよ」

「はあ? じゃあ、志信ならどうやってきくんだよ」


ふむ、と志信は少しだけ考えて、顔を上げる。


「栞、今年のバレンタインもいつも通りもらえるって思っていい?」

「「………………」」


あまりにも微妙な返答に浩太郎と視線を交わす。


なんでそんな余計な無茶振りするかなー。この変化球を私はどう受け止めたらいいわけよ?

いやいや、俺だってもう少しマシな返答がくるって思ったし!?


「ん? ダメ??」

「ダメっていうか、私、仮に本命であげたい人ができても、二人にはちゃんとチョコレート用意するよ?」

「ホワイトデーは倍返しで! って例年通り頂ける素敵なチョコだろ」


浩太郎が鼻で笑う。


「じゃあ、俺のお返しは手作りするね」

「それはやめて」


いつぞやもらった豪勢過ぎる手作りのお返しに、女子としてのプライドが粉砕された悪夢のホワイトデーを思い出す。



二人に同じチョコを用意し、少しだけ二人の個性がにじみ出るお返しをもらう。



毎年の、当たり前の定例行事。

ときめきも、何もない、単なるお菓子の受け渡し。


昔はもう少し、甘酢っぱかった。

これで喜んでもらえるかなって、ドキドキしながら渡してた。

違うチョコを用意した時は、どっちにより好意があるのか喧嘩にもなった。



二人のどちらの手をとって、三人という関係を一人と二人にするのを怖がったのはいつだっただろうか。



ことばにすることなく、幼馴染三人、という居心地のいい関係を継続する私たち。

今の関係をどうにかするのは難しい。


そして、何より、どうにかしようなんて思ってない自分がいる。


違うか。

どうすればいいのか分からなくなってるんだ。


目の前にいる幼馴染二人をぼんやりと眺める。


好きか嫌いかでいったら、好きだ。

即答できる。

だだし、その好きは、恋愛感情ではない。


和子が年上の金髪イケメンと肩を並べてる時、明子が年下の美少年にじゃれついている時、二人の表情がなんだか甘い。

目元が、唇が、ほころんで、今までみたことない可愛い表情になってるのだ。


――あぁ、これが恋してるってやつなのかと、


幼馴染と話していても、そんな表情にはなっていない自分を比べてしまうのだ。



「栞、どした?」

「ぼーっとしてるけど、悩み事?」



会話に加わることなく、無言でいた私に幼馴染二人が心配そうに声をかけてくれる。

なんでもないよと言いかけて、嘘ついてもこいつらにはすぐにばれるよねとへらりと笑う。


「うん。ちょっと悩み事」


だから、素直に告げておく。


「もう少し一人で悩むから、相談するまで放置で宜しく~」


ただし、線引きだけはする。

触れてくれるなと。

そうしたら、優しい二人は、助けを求めない限り見守ってくれるから。


「飯は完食から体調悪いとかじゃないか」

「その笑顔が曲者なんだけど、話したくないなら今は聞かないでおくね」


恋情はないけど、築き上げた信頼はたくさんあるのだ。



「ありがと」



お礼のことばを小さく呟く。

空気に溶けてしまうくらい小さくても、優しい二人は受け取ってくれる。

この幼馴染は、クセはあるけども、本当に素敵なのだ。


食後のデザートにと出された志信お手製のプリンをつつきながら、学年末テストの話題で盛り上がる幼馴染二人を見つめ微笑む。



――――このふわふわした日常は、いつまで続けれるのかな。






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