2度目の失敗【綾視点】
私はあの時、自分の軽率な行いで自分を追い詰め、その現実から逃げるために深酒をしていた。
気付いた時には、目の前に何本ものビール缶が転がっていた。
朦朧とする意識の中、一度だけ携帯の音が鳴ったのを覚えている。
その直後、おぼつかない足で向かった玄関に、呆気に取られた莉子が立っていた。
私は反射的に莉子に抱きつき、力の抜けた身体をそのまま莉子に預けた。
『……この量はマズいね。っていうか何かあったの? 綾がこれだけお酒飲む時ってイヤなことがあった時だよね?』
そのあとの記憶といえば莉子の涙だけだ。
あの時の莉子の言葉だけは鮮明に思い出せる。
『それとさ、私もバカじゃないから分かってるよ。体裁大事だからね。真面目な綾がそういうこと考えない訳ないもん。分かってたよ……』
白濁した意識の中でさえも、自分が莉子にこれまでの経緯を打ち明けてしまったことくらいは察することができた。私が莉子を泣かせてしまったのだということも。
そもそもの発端は、その約2週間前、私の携帯に知らない電話番号から着信があったことだ。
いつもの私なら、何か思い当たることでもない限り、知らない番号からの着信には絶対に応じない。
でもあの時は、久しぶりに見た夢の余韻がまだ完全に消えていなかったせいなのか。
私は着信音を鳴らし続ける携帯に引き寄せられ、その画面に指で触れた。
それが間違いだったのだ。