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1-4 2人の距離

 午後の授業も順調に進み、放課後を迎えていた。

昼飯の後の授業はどうしても眠くなるが天乃が見ているかもしれないと思うとウトウトなどしていられない。


 多くの生徒が部活へ行くなり帰宅するなりの準備をしている頃、帰宅部の俺も帰り支度をしていた。


「東條君、一緒に帰ろう?」


 天乃が声をかけてきた。

天乃からすれば付き合っているのだから一緒に帰るというのは自然な流れなのだろうが、俺からすれば勘弁してほしいシチュエーションである。

 たしかに昼休みに周りの視線を気にしすぎるのはやめようと決意した。

 しかし、2人で帰れば当然周囲の視線は朝のそれを遥かに上回るだろう。

俺のメンタルはまだそれには耐えられない。


「迷惑、だったかな?」


 天乃が俯き気味に尋ねてくる。

クッ、そんな目をされたら断れないじゃないか。


「迷惑とかじゃないけどおまえ家の方向とかどっちなんだ?場合によっては正反対かもしれないぞ?」

「それなんだけど、せっかくだから帰りにどっか寄らない?私は別に多少遠回りになっても問題ないし」


 天乃の提案に俺は少しばかり考える。

どこかに寄るにしてもこの辺りで学校帰りに寄れるところなど限られている。

近くのショッピングモールか商店街の喫茶店くらいだろう。

そんなところに学校帰りに寄れば確実に同じ学校の生徒にも目撃されるだろう。

俺としてはこれ以上変に騒がれるのは勘弁してほしい。

 しかし、ここで天乃の提案を断るのも彼女を避けているようにとられてしまう可能性がある。


「この辺で寄れるところっていったら近くのショッピングモールか商店街の喫茶店くらいしかないが天乃はどっちがいいんだ?」


 とりあえず俺は天乃の提案を受け入れることにした。

ここで下手に断って噂が悪い方向に進むよりはマシだろう。

それに俺は別に天乃のことが嫌いなわけではない。

周囲が過剰に騒ぐからこちらも過剰に気にしてしまうのだ。


「とりあえずショッピングモールの中ブラブラしてみようよ?

特に何するでもなく見て回るだけでも楽しいし」

「そうだな、とりあえず行ってみて適当に中回ってみるか」

「うん、ありがとね!」


 とりあえず行き先はショッピングモールに決まった。

まぁ放課後の寄り道としては無難な選択だろう。

それにショッピングモールなら目的がなくても適当に見て回るだけである程度楽しめるからな。




 ショッピングモールについた俺と天乃はとりあえず適当に中をまわることにした。

というかやはり俺らと同じ学校の生徒も多いな。

先程からすれ違うたびに視線を浴びている気がするんだが……


「ごめんね、私と一緒にいるから周りの人の声とか嫌でも気になっちゃうよね……」


 天乃が申し訳なさそうになる謝ってくる。

おそらく今日一日思っていたことなのだろう。

普段から周りの注目を集めているのだ、そんな奴の彼氏に注目が集まらないわけがないだろう。


「最初はスゲー嫌だったけど今はそんなに気にしてないよ。藤ヶ谷にも言われたけど周りの視線を気にしすぎるのもどうなのかと思い直してな。とりあえず、過剰に気にするのはやめることにしたんだ」

「そうだったんだ。やっぱり最初は戸惑うよね。今日学校に来てみんな東條君の話ししてたから迷惑かけちゃったなってずっと気になってたんだ」

「まぁ、周りの視線が嫌だからってお前のこと避けるのはお門違いだろ?だから周りの奴らのことは過剰に気にしないって決めたんだ」


 今の俺の正直な気持ちだ。

天乃が俺に寄せてくれている好意と周囲の視線や声などは全くの別物だ。

噂になるのが嫌だからと、天乃のことを避けるのは筋違いもいいところだと思っている。

おそらく天乃は、昨日俺に告白してきた時かなりの勇気を出して告白してきたのだと思う。

だからこそこいつの想いには誠意をもって応えなければならないと思うのだ。


「東條君は優しいね、きっと他の人なら周りの噂に耐えられなくて逃げちゃうと思う。昨日、思いきって告白して良かったって今の東條君の言葉を聞いて思ったよ」


 天乃が儚げに少し遠くを見るようにして微笑む。

その姿に俺は自分の心臓の鼓動が早くなるのを感じた。

今の天乃の姿は御話の中の天使のような美しさがある。

 しかし、今の俺にはそんな天乃の姿がどこか遠くにあるような気がした。

自分でも何故そのようなことを感じたのかは分からないが、この時俺は初めて自分から天乃のことをもっと知りたいと思った。


「天乃が周りのことをどう思ってるかはわからないが、少なくとも俺自身はそのことでお前のことを嫌いになったり避けたりすることはないからそこは安心しておけ」

「ふふっ、言質とったからね。逃げないでよ」


 逃げるつもりなど毛頭ない。

どれだけの時間がかかるかは分からないが天乃夢月という少女のことを知るまではできるだけそばで見ていたいとおもう。


 こうして、俺自身の新たな決意と共に天乃との初デートの時間は過ぎていった。

今回は主人公の心情の変化をメインに書きました。


やっと本編の内容に踏み込めそうなところまで来ました!

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