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1-3 昼休みの過ごし方

 朝の騒がしさもとりあえずの落ち着きをみせ、午前の授業は大きな問題もなく終わった。

 そして昼休み、今俺の前に大きな問題の種がやってきていた。


「お昼、一緒に食べよう」


 俺が昼飯を藤ヶ谷と食べようとしていたところ、天乃が一緒に飯を食べようと言ってきたのである。

午前中の間、休み時間も特に俺の方へ来ることもなかったから学校ではそんなに絡まれることもないのかなどと考え油断していた。


「いや、見ての通り俺は藤ヶ谷と食べるから天乃は他の女子と食べれば?」


 自分で言っておいてこれはないだろうと思える酷い言い訳の仕方である。

 そもそも付き合っていることになっている相手に他の奴と食えなど彼氏としての発言としては最低である。


「やっぱり、迷惑だった……かな?」


 天乃が申し訳なさそうに顔を下に向ける。


 やめて、そんな顔しないで。

周りの視線が怖いことになってるから!

視線だけで殺されそうになってるから!


「別に一緒に食えばよくね?だいたい東條は周りの目を気にしすぎなんだって!」


 藤ヶ谷が最もな正論を述べてくる。

 たしかに付き合っているなら一緒に昼飯を食べることは不自然ではない。

むしろ堂々と食べればいいと俺だって思う。

 しかし、藤ヶ谷は分かっていない。

この周りの視線は当事者にしか分からないだろう様々な感情が混ざった視線なのだ。


「てかむしろ俺、いない方がいいかな?

なんなら俺は学食でも行ってくるぞ?」

「いや、分かった。一緒に食べるから藤ヶ谷、行かないでくれ……」


 もはやこの状況になってしまったら一緒に食べなければならないことは避けられないだろう。

 だからこそ藤ヶ谷という第三者を巻き込むことで周りの視線を少しでも逸らしたかった。


「いや、お前は俺が一緒でもいいかもしれないけど天乃さんは俺が一緒にいたら嫌かもしれないだろう?」


 藤ヶ谷がまたも最もな正論を述べる。

くそ、なんでお前は今日に限ってそんな正論ばかり述べるんだ。


「私は別に藤ヶ谷君が一緒でも大丈夫だよ」


 ここで天乃が救いの一言を述べてくれた。

 いや、天乃からすればたとえ藤ヶ谷という第三者がいても俺と昼飯を一緒に食べられるという状況を作れれば現状はOKということなのだろう。


「いや、天乃さんがいいって言うんなら俺も一緒に食べようかな」


 とりあえず二人きりで昼飯を食べるという最悪の状況は回避された。

 いや、別に天乃と飯を食べること自体は嫌じゃないんだけどね。

周りの冷やかしやら嫉妬やらの視線に俺のメンタルが耐えられないってだけで……。


「お!天乃さんのその弁当、ひょっとして手作り⁉︎」

「うん、そうだよ。一応、自分のお弁当は私が作ってるんだ」

「マジかよ。天乃さんて料理も上手なんだな」


 天乃と藤ヶ谷が何気ない会話をしている。

 天乃は慣れているにしても何故藤ヶ谷はこの視線が気にならない?

さっき藤ヶ谷が言っていたように俺が過剰に気にしすぎているだけなのか?


 よく考えてみれば周りの視線が気になるからなんて言い訳、勇気を出して俺に告白してくれた天乃に対して失礼だよな。

  よし、とりあえずこの昼休みの間だけでも俺も藤ヶ谷のように周りを気にするのをやめてみよう。


「東條君はコンビニのパンだけなの?」


 天乃が俺の弁当を見て話しかけてくる。


「ああ、俺はいつもコンビニのパンか学食で食べるかのどっちかだな」


 うちは親が朝から弁当なんて作ってられるかと毎日昼飯代のお金を貰って自分の好きなものを買って食べている。


「それじゃあバランス悪いよ?迷惑じゃなかったら明日から私が作ってこようか?」


 天乃がとんでもない提案をしてきた。

毎日俺の弁当を作ってくる?

天乃の弁当は毎日自分作っている。となれば俺の分の弁当も必然的に同じ内容になるだろう。

 それはさすがに恥ずかしい。


「いや、さすがにそれは迷惑だろう?

別に俺は今のままでも問題ないし……」

「お弁当って一人分で作るよりも二人分作る方が楽なんだよね。だから私的には迷惑どころかありがたいかな」


 これは天乃の提案を受け入れるしかないだろうか……。


「いいじゃんか東條。せっかく彼女が手作りの弁当作ってきてくれるって言うんだから」


 さらに藤ヶ谷が天乃の意見に賛同する姿勢をみせる。


「分かったよ……。じゃあ明日から頼んでもいいか?」

「うん!任せて、美味しいお弁当作ってくるから!」


 藤ヶ谷の後押しもあって?俺は天乃の提案を受け入れることにした。

俺が頼むと天乃は満面の笑顔で期待してくれと言った。

笑顔の天乃の姿に思わずドキッとしてしまう。


「いいなぁ東條は、可愛い彼女が毎日手作り弁当持ってきてくれるなんて」


 藤ヶ谷が俺たちの会話を聞いて冷やかしてくる。


「茶化すなよ。俺は別に今のままでもいいけど何言っても天乃は作ってくるって聞かないだろうからな……」


 俺としては本当に今の昼飯事情に文句はない。

 しかし、あのままいっても天乃は引かなかっただろう。

それに天乃の弁当は本当に自分で作っているのかという程美味そうな見た目をしている。

そんな弁当を好意で作ってきてくれるというのだ。

コンビニのパンや学食など比べるまでもないだろう。


「東條は素直じゃないな。ホント、天乃さんはこんな奴のどこが良かったんだ?」

「どこってもちろん全部だよ」


 素直じゃなくて悪かったな。

これ以上変な噂を広められたら大変だからな。

 そして天乃、俺の前であまり恥ずかしいことを言わないでくれ。



 こうして俺たちは他愛もない話をしながら昼休みを過ごしていった。

 そして昼休みが終わる頃には俺も周りの視線などあまり気にならないようになっていた。

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