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2-6 大切な友人

 昼飯を食べ終えた俺たちは、適当にモール内をうろつきながら面白そうな店を見てまわっていた。


「たまにはこうして目的もなくいろんな店を見てみるのも面白いな」

「そうですね、自分は普段、あまりこういったところには来ないので勉強になります」


 俺の言葉に東雲が同意する。

というか、勉強になるってどういうことだよ?


「俺は普段から凪沙に付き合わされてよく来るけど、男同士だと気兼ねしなくていいから楽だよな」


 藤ヶ谷がそんなことを言う。

今度如月さんにチクってやろうかな?


「いいのか、藤ヶ谷?そんなこと言ってると、今度如月さんに会った時に藤ヶ谷がこんなこと言ってたよって俺の口が滑るかもしれないぞ?」

「おいおい!やめてくれよ、俺がそんなこと言ってたって凪沙の奴にバレてみろ?一体どんな埋め合わせをされることになるか……。考えただけでも恐ろしい……」


 藤ヶ谷が慌てて俺に対して口止めを要求してくる。

というか、そんなに恐ろしいなら口に出さなければいいのに……。


「あの、如月さんというのは?」


 俺と藤ヶ谷がそんな会話をしていると東雲から如月さんについて尋ねられた。

そうか、東雲はまだ如月さんにと藤ヶ谷の関係を知らないのか。


「あぁ、如月さんっていうのは、俺らの一つ下の学年にいる女の子でコイツの幼馴染なんだよ。ちなみに藤ヶ谷は如月さんに頭が上がらない」

「おい!誰が誰に対して頭が上がらないだって⁉︎」

「俺は事実を口にしているだけだ」

「なるほど。藤ヶ谷さんの幼馴染でしたか。聞く限りでは力関係的にはその如月さんの方が藤ヶ谷さんより上のようですが」


 俺と藤ヶ谷がバカな言い争いをしていると、東雲の方は色々と納得したようだ。


「おい!東雲も東雲で何勝手に納得してんだよ⁉︎別に俺が凪沙に頭が上がらないなんてことはないからな⁉︎」

「わかりました。ではそういうことにしておきましょう」

「絶対分かってないよね⁉︎」


 なんというか、東雲が冗談を言っているのが意外だった。

初めてクラスに来たときからあまり笑ったりしない無表情な奴だと思っていたからな。

それが今では藤ヶ谷に対して冗談を言い笑っている。


「東雲でも冗談とかいうんだな?」

「えっ?どういうことですか、東條さん?」


 俺がなんとなしに言うと東雲は心底意外そうな表情で聞き返してきた。


「あっ、いや別に深い意味とかはないんだけど、東雲って転校初日からずっと無表情な印象があったから、今みたいに誰かに冗談言ったりっていうのが意外だったんだよ」

「確かに東雲って最初はすごいクールなイメージだったな」


 俺の言葉に藤ヶ谷が同意する。


「私だって誰かと冗談を言い合ったり笑ったりすることくらいありますよ。ただ最近は、色々と自分の中で考え事をしてしまうこともあり、周囲からはそんなイメージに見えたのかもしれませんね……」


 そう言った東雲の表情はとても寂しそうでどこか遠くを見ているようだった。

そんな彼の顔をみて、俺の心の中の何かが締め付けられる。

 この感情は一体なんなのだろうか?


「まあ確かに、知り合いもいないところに引っ越してきたんじゃ気張るのもわかるけどな」


 俺が自分の中に芽生えた謎の感情について考えていると唐突に藤ヶ谷がそんなことを言った。

確かに藤ヶ谷の言う通り、知り合いの誰もいない街に引っ越してきたんだ、最初のうちは気だって休まらないだろう。


「そうだな。もし、東雲が俺たちといて少しでも楽な気持ちになってくれたなら俺としても嬉しいよ」


 まだ俺たちは知り合ったばかりなのだし、これから少しずつ、ゆっくりと打ち解けていければいい。

まだ俺たちの関係は始まったばかりなのだから焦る必要はない。


「お二人ともありがとうございます。誰かにこのような優しい言葉をかけられたのは久しぶりでとても嬉しいです!」


 そう言葉にした東雲の表情はとても明るくどこか吹っ切れたような表情をしていた。

この時、俺は本当の意味で東雲と友達になれたのだと思う。

 ただのクラスメイトではなく、大切な友人の一人として東雲仁という存在を認識したのだった。




 本当の意味で打ち解けあった俺たちはモール内にあるフードコートで少し休憩をすることにした。


「なんとか席空いてたな。休日だから下手したら空いてる席がないかなとも思ったんだが」

「まあもう昼時は過ぎてるからな。それでもすごい人であることに変わりはないが」


 俺と藤ヶ谷はそんな会話をしながら空いていた席に座る。


「二人とも何か買ってくるんなら俺が席取っておくから先に買いに行っていいよ?」


 俺が席を確保しておくために残ることを告げると「悪いな、じゃあちょっくら買ってくるわ!」といい、藤ヶ谷が人混みの中に消えていった。

 それに対して東雲の方は、「自分は特にないのでここで待ってますよ。東條さんの方こそ何か買われるのでしたら、私が席は確保しておきますが?」と残ることを選択した。


「いや、俺も特にはいいかな?ここで藤ヶ谷が戻ってくるのを待つか」

「わかりました。ではここで待っていましょう」


 こうして、藤ヶ谷が帰ってくるのを二人で待っていたのだが、五分ほど経ったころで遠くの方から何やら甲高い声で聞こえてきた。


「キャー⁉︎」

「みんな逃げろー‼︎」


 遠くの方から聞こえてきた声、それはこのショッピングモールに客としてきていた人たちの悲鳴の声だった。

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