2-3 転校生との出会い
放課後。
多くの生徒が帰り支度や部活動へ行くための準備をしている中、俺もまた帰り支度をしていた。
「よう、東條!今日の帰り久々にどっか寄って帰らね?」
そんななか藤ヶ谷が俺を遊びに誘ってきた。
「悪い!今日は親から買い物頼まれてて早く帰らなきゃいけないんだ!」
「そうだったのか。なら仕方ねーな。また今度誘うわ!」
最近はあまり藤ヶ谷と遊びに行くこともなかったからな、本音を言えば遊びに行きたかったが、こればかりは仕方ない。
なんて考えてたら藤ヶ谷が不意に尋ねてきた。
「というかお前が放課後、天乃さんと一緒じゃないなんて珍しいな?」
「ああ、なんでも天乃も今日は家の用事があるらしくてな、HR終わって割とすぐに帰ったよ」
考えてみれば天乃と付き合い始めてから放課後に一緒じゃないのは初めてかもしれないな。
「そうだったのか。俺はてっきり喧嘩でもしたのかと思ったぞ」
ニヤケ顔で藤ヶ谷がとんでもないことを言い出した。
「んなわけあるかよ!喧嘩なんかしたことないっての」
「お熱いことで、ごちそうさまです!」
完全に揶揄ってるな藤ヶ谷のやつ。
「まあ、東條も用事があるんじゃ仕方ねー。今日は久々に一人でまっすぐ帰るとするか」
藤ヶ谷にしては珍しい。コイツが放課後に寄り道せずに帰ることなんてほぼないからな。
それに放課後に藤ヶ谷が一人というのも珍しい。
藤ヶ谷はクラスでもムードメーカー的な存在だ。
当然、コイツの周りには多くの人が集まる。
だからコイツが一人でいるというのは実は結構珍しかったりするのだ。
「珍しいな?お前が一人なんて」
「ああ、いつもなら凪沙あたりがどこか行こうって絡んでくるんだが、アイツも今日は用事があるらしくてな」
なるほど、それで今日は一人なのか。
「せっかくだから例の転校生君でも誘ってみようかと思ったけどもう帰っちゃったぽいし」
本当、コイツのコミュ力はすごいと思う。
今日転校してきたばかりのやつをいきなり誘えるってスゲーよ。俺には真似できん。
「まだ引っ越してきたばっかで忙しいんじゃないか?」
「それもそーだよな。まぁ、てなわけだから俺は一人寂しく帰ることにしますよ」
「さいですか。んじゃまた明日な」
藤ヶ谷と別れて家の近くのスーパーまで来た。
今日は母親が出かけているから夕飯の買い物を自分でしなければならないのだ。
「えーと頼まれてた物は……」
頼まれていた物を探している途中で俺はふと一人の客が目に入った。
「あれ、東雲だよな?」
そこにいたのは今日やってきた転校生の東雲だった。
「アイツの家、この近くなのかな?」
なんてことを考えていたら、東雲と目があった。
目があった瞬間、東雲はかなり驚いた表情をしていた。
そりゃそうだろう。買い物中に見ず知らずの奴が自分のことガン見してたら誰だって驚く。
「あの……同じクラスの東條さんですよね?」
なんて考えてたら東雲が話しかけてきた。
というかコイツ俺の名前覚えてたのか。
「ああ、東雲だったよな。こんなところで会うなんて偶然だな。家、この近くなのか?」
「ええ、このスーパーから割とすぐのところです」
「そうだったのか。俺の家もこの近くなんだよ」
「そうだったんですか、偶然ですね」
俺もまさかこんなところで会うとは思わなかったよ。
せっかくだから今朝のHRで気になったことを聞いてみることにした。
「そういえば、俺と東雲ってどっかで会ったことあるっけ?今朝のHRの時も目合ったよな?」
俺の質問に東雲は驚いた表情をする。
そんな変なこと聞いたかな、俺?
「いえ、会ったことはないと思いますよ。目があったのも偶然です」
驚いた後にどこか寂しそうに笑いながら答える東雲。
その表情に俺はどこか見覚えがあった。
「そっか。やっぱ俺の気のせいか、いきなり変なこと聞いてゴメンな」
「いえ、私も東條さんとは話をしてみたいと思っていたので」
初めて見たときはちょっと怖そうな印象だったがこうして話をしてみると温和な感じがするな。
「あの、東條さん……もしよければ、この辺りの土地について教えてもらってもいいですか?まだ越してきたばかりで土地勘もないので」
「ああ、俺でよければこの辺のこと教えるよ。じゃあとりあえずお互いとっとと買い物済ませるか」
「ありがとうございます。では自分も早く買い物終わらせますね」
こうして俺は転校生の東雲に街の案内をすることになった。
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