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1-10 二人のデート

 週末。


 多くの人で賑わっている駅の前で俺は天乃を待っていた。

周囲には家族連れやカップル、これから部活の練習に行くのであろう学生の姿などが見られる。


 俺はあの後、様々なデートプランを考え、天乃にどのプランが良かったかを選んでもらった。

 自分一人で考えていた時にはどうすればいいのか全く分からなかったのに、天乃と二人で考えた時は実際に行った時のことを想像して色々とプランが思い浮かんだ。


 そして今日がデート当日なのだ。

待ち合わせの時間は午前九時の約束になっている。

 ちなみに今の時刻は午前八時五十分。十分前に着いていれば間違いはないだろう。


 そして、何をするわけでもなく天乃のことを待つこと約五分、天乃がやって来た。


「ごめん、待った?」

「いや、俺も今着いた……とこ」


 やってきた天乃の姿を見て俺はフリーズしかけてしまった。

考えてみれば天乃の私服姿を見るのは初めてだった。

 単刀直入に言おう。めちゃくちゃ可愛いのだ。

 それこそ思考が止まってしまうほどに。


「私の格好、どこか変だった……かな?」

「あぁ、ごめんごめん。変なところなんてないよ!むしろめっちゃ似合ってるよ!似合いすぎてて一瞬思考が止まっちゃっただけ!」

「もう!変なこと言わないでよ。焦って損しちゃったよ……」


 天乃は呆れ気味にそう言うが男なら誰でも見惚れてしまうというものだろう。

 ちなみに天乃の今日の服装は真っ白なブラウスに花柄のスカートを履いている。

 そして、普段はストレートに伸ばしている髪型を巻き髪にしている。


 おそらくそこら辺の女子がこの格好をしてもそこまで引き込まれることはないのだろうが、天乃が着るだけでここまでになるとは……。


「そんなことより、早く行こう」

「あぁ、そうだな。じゃあ行こうか」


 天乃に急かされながら俺たちは電車に乗って移動を開始した。



 電車で移動すること約二十分。

 俺たちは目的地に着いた。

 俺と天乃が今日のデートに選んだのは水族館だ。

理由はいくつかあるのだが、一番の理由は屋内だからという付き合いたてのカップルとしてどうなのだろうかと思う理由である。

 しかし、これは割と重要な問題だと俺は思う。

 季節は五月、本格的な夏はまだまだ先のことだが、この時期の屋外は割と暑いのだ。

 天乃とデートプランについて話し合っていた時に遊園地などのテーマパークという案もあったのだが体力的な自信がないという天乃の言葉でならば屋内の場所にしようとなったのだ。


「水族館なんて久しぶりに来たな。

最後に来たのなんて小学生の頃だったかな?」

「私も久しぶりかな。というか小さい頃はあまりこういう所に来たことなかったから今日はすごいワクワクしてる!」

「んじゃ、チケット買ってくるか」


 期待に満ちた表情の天乃と二人でチケット売り場の方へ歩いていく。

 しかし、天乃がこういった場所にあまり来たことがないというのは意外だったな。

 その事を天乃に聞いてみると「うちは親が忙しかったから小さい頃は一人で過ごすことが多かったんだ」という答えが返ってきた。


「そうだったのか。うちの親は場ほぼ土日休みだったから一人で過ごすことって少なかったな」

「羨ましいな。私もお父さん、お母さんと色んな所行ってみたかったな」

「別に毎週毎週どっか出かけてたわけじゃねぇぞ?それに父さんが休みだとテレビのチャンネル権とか父さんが持ってるから好きな番組見れないしそんなに良いこともないぞ?」

「そんな風な感想が出てくること自体が羨ましいって思っちゃうんだよね」


 そう言う天乃の表情は寂しそうなものだった。

以前感じた寂しそうな表情よりももっと深く、心の底からその寂しさが伝わってきた。


「なら、今日はたくさん楽しまなきゃな」


 柄にもなくカッコつけたことを言ってしまった。

横の天乃がすごく驚いた顔をしている。

そりゃそうだろう。俺自身が一番驚いている。


 一瞬だけ驚いた顔をした天乃だったがすぐに笑顔になって「東條君がそんな風に言ってくれるなんて、嬉しい。今日は思いっきり楽しまなきゃ!」と言ってくれた。

やはり天乃は暗い顔より笑顔の方が似合うなと改めて思った。


 そんなこんな話をしているうちにチケットを購入し終えた俺たちはいよいよ館内へと入っていくのだった。



「すごーい!色んな種類の魚がいるよ!

あんな大きな魚私初めて見たよ!」

「落ち着けって、そんなテンション上がるなんて予想外だったな」


 館内に入って最初の水槽の前で子供のようにはしゃぐ天乃を見て若干驚いている。


「初めてこんな大きな水槽で泳ぐ魚見て思わずはしゃいじゃった」


 恥ずかしげに俯きながらそんな言い訳をする天乃の事を改めて可愛いと思ってしまう。


「楽しんでもらえてるなら何よりだよ」

「うん!すごく楽しい!私こんなに楽しいと思ったの久しぶりだなぁ」

「俺もテンション高い天乃なんて珍しいものが見れて満足だよ」


 こんなにテンションの高い天乃、学校ではまず見られない。

そんな珍しいものを見て思わず俺の方もニヤけてしまう。


「もう、私じゃなくて魚の方見てよ!

恥ずかしいじゃん」


 怒られてしまった。

 しかし恥ずかしがりながら言われてもむしろ可愛いと思ってしまうだけだ。

天乃にもそれは伝わったのだろう。


「もう!真面目に聞いてるの⁉︎」と言われてしまった。

「聞いてるよ。それよりあっちの水槽にも珍しい魚がいるみたいだぞ」

「ああ!待ってよ〜!」


 俺と天乃はこの後も色々な種類の魚たちを見て回るのだった。

次回もデート回の続きです!

それが終わったら第1章はひとまず終わるかなってところです!

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