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1-1 プロローグ〜始まりのお話〜

 

「私と付き合ってください!!」


  目の前にいる彼女はやや恥ずかし気にされど決意の篭った表情で言葉を発した。

 そして俺の思考はその瞬間、僅かながらに停止していた。


  夕暮れ時の教室、外からは部活動に励む生徒たちの声が聞こえてくる。

また校舎の中では吹奏楽部のものであろう楽器の音色が学校中に響き渡っている。

普段ならば気にも留めないような音や光、声といったものが鮮明に聞こえてくる。

  そんな中で俺は今、学内No.1とも言われている女子生徒から告白をされた。


「私、本気で東條(とうじょう)君のことが好きなの‼︎」


  今、俺に好きだと言った彼女こそ、この学校のアイドル的存在である天乃夢月(あまのむつき)だ。

 この学校の生徒で彼女のことを知らないものはいないと言っていいほどの有名人。

  確か母親がヨーロッパの方の人で、彼女も母親と同じ綺麗な金髪をしている。

彼女が有名なのはこの目立つ金髪の所為もあるかもしれない。

  だが、それを差し引いても彼女の顔は整っているのだ。

元々の整った顔に誰もが羨むような美しい金髪。

はっきり言って有名にならない方が不自然である。



  そしてさきほど彼女は俺のことを好きだと言ったが、俺は勉強も運動もザ・平均で、もっと言えばルックスだって平均的だと思う。

そんな俺のどこにこの娘は惚れたというんだ?


「1つ……聞いていいか?」

「何?」

「お前、俺のどこに惚れて告白してきたんだよ?俺なんてどこにでもいるようなモブキャラみたいな奴なのに、そんな俺にクラスどころか学校一の美少女と言われているお前が告白してくるとか絶対おかしいだろ?」


  そう、彼女はこの学校のアイドル的存在。

そんな彼女が何の理由も無しに俺のような男に告白してくるわけがない。


「どこに惚れたかってそんなの全部に決まってるじゃん。教室で友達と話してる時とか、授業中に眠いの我慢しながらもちゃんとノート取ってるところとか、とにかく私はそんな東条君が好きなの!

だから私と付き合ってください‼︎」


  おいおい待ってくれ、授業中に睡魔と戦っているところとか見られてたのかよ。

 恥ずかし過ぎるだろ。

  てかそんなとこ見て惚れたってマジかよ……。

  いやいや、冷静に考えろ俺。

 そんな話現実であるわけないだろう。

 きっと何かの罰ゲームに違いない。うん、きっとそうだ。


「何の罰ゲームかは知らないが無理しなくていいぞ?

俺に告白するなんて苦行以外のなにものでもないだろう」

「罰ゲームなんかじゃない!

 私、本気で東條君のこと好きだもん!

 どうして信じてくれないの?」

「いやいや、普通に考えてお前ほどの女子が俺みたいな中の下男子にマジの告白とかするわけないだろ。

仮にお前が本気だったとしてもそれを、はいそうですかとすんなり信じるほど自惚れてねぇよ」


  なんて言葉ではカッコつけているが実際には動揺しまくりである。

 最初に好きだと言われた時などその場で思考が停止したほどである。

  そして彼女の言葉を何も考えずに鵜呑みにしてしまいそうになってしまった。

 よくあの時の心理状態でここまでの返答が出来たものだと自分で自分を褒めてやりたい。


「もう、どうしたら信じてくれるの?」

「どうしたらって言われても俺にだって分かんねぇよ。

急に学校一の美少女に告白されていたずらか罰ゲームかと思ったらマジな顔して違うとか言われても……」


  実際、今でも信じられない。

  本気だと言う彼女の言葉を信じた途端にバカじゃないとかとか罵倒されるのではないかとまで思っている。


「わかった」

「え?何が?」

「とりあえず、形だけでもいいから私と付き合って!その中で私がどれだけ本気で東條君のことが好きか理解してもらうから」


  今、何て仰いましたかこの娘は?

これって俺に拒否権ないよね?


「なあ、それって俺に拒否権とかないの?」

「東條君が私が本気だって分かってくれた上で私とは付き合えないっていうなら諦める。

けどそれまでは一方的だろうと何だろうと私は彼女として東條君と接するから!」


  いやいや、一方的に彼女として接するって俺からしたら迷惑でしかないんだけど。

  確かに天乃は可愛い。男なら誰でも彼女と付き合いたいと思うだろう。

  だが、実際に彼女と付き合うということは全校中の注目を浴びることになるわけでして……。

  クラスの中で良くも悪くも目立たずにいた俺にはとてもではないが重荷なわけで……。


  しかし、彼女の表情からは絶対に引かないという強固な決意が感じられる。

もはや俺に否ということは言えなかった。


「わかったよ……。何も知らないまま勝手に疑って人の好意を無碍にするのも悪いしな」

「ホントに?

 ホントに私と付き合ってくれるの?」

「あくまでもお互いを知る為の形式的なものだからな!」

「うん!

 それでも嬉しい!ありがとう!」


  こうして俺、東條 巽(とうじょう たつみ)と天乃夢月は付き合うこととなったのだが……。


  噂が広まるのは早いというか何というか。

というより何で昨日の今日でもう全校中に広まってるんだよ!


  俺が天乃と付き合うことになったことが翌日の朝には全校中に知れ渡っていた。


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