プロローグ2
プロローグ2
体の芯から底冷えするような怖気と、全身を廻る浄火の所為か。
しかし、一瞬で恐怖と痛みも感じなくなり、次第に魔王の意識が薄れて行った。
まだ生きたい、とこれ程までに渇望し、哀願し、懇願し、神に世界に絶望したことはあったのだろうか?
その様を、ルシードはただ睥睨してのける。
「精々悔いて詫びること、だ!?」
ルシードの魔術の負荷に耐え切れず、城壁が悲鳴を上げた。
天井の一部が音を立てて崩落する。
何があろうと、彼にとっては取るに足らない、眼前に起こる事象に対し、一瞥をくれるだけの青年。
しかし、この時ばかりは普段の嗜虐的な表情が消え、僅かに動揺の色が見えた。
このままでは、城が崩れ去るのも時間の問題だろうか?
この城と運命を共にする気など毛頭無い。
ルシードは再度錫杖を掲げるとー
魔王のテンプル目掛けて勢い良く一突きした。
魔王が短く呻く。
瞬時に浄火の炎が消え、何事も無かったように魔王の全身の傷が癒えた。
抉れた内臓も、折れた骨も、何の痕跡も無く元に戻っている。
「何でたす」
徐に魔王の胸倉を掴み、ルシードは吐き捨てる様に告げる。
「適当な場所に空間転移する。ぜってぇ黙ってろクズ」
錫杖から発生した淡い光が二つの人影を包み込み、一瞬にしてその場から消失した。
その場に瓦礫と化した城壁が崩れ落ちた。