その内考えます
初めに
おまえ、なんか文章書いてみろと言われたので、書きました。
思いのままに、今まで温めていたアイデアを書きます。
プロローグ
静寂を打ち破る足音が一つ、禍々しい王城内をこだまする。
少しずつ、だが確実に足音は王城の主の元を目指している。
今にも押し潰されそうな程の恐怖、畏怖、怖気、畏敬、そして、狂気に満ちた純粋にして無垢、ごく単純な殺意。
その存在は災禍そのもの。
荘厳かつ重厚な扉が乱雑に、強引に開かれる。
開かれる、というよりは力任せにこじ開けられるような形だ。
玉座に鎮座している異形の者、この城の主だ。
墨を流したような、艶やかな黒髪長髪、美しい紅玉を思わせる切れ長の双眸には憂いが漂っている。
女に見まごう程の中性的で端正な相貌が苦痛に歪む。
一刹那、扉を開けた者の影が魔王の肉体を裂いたのだ。
「覚悟はいいか?」
地の底から低く唸るような声で、災禍そのものが告げた。
ただ、その一言のみで魔王の精神を蝕み蹂躙するには、十分な程の殺意。
怖気を感じる暇も無く、絶対無二、無慈悲で冷淡な一瞥をくれる男の名はルシード。
「ちょ、ま、死にたくない!」
「喋るな。絶命しろ。今すぐ」
ルシードは幾重にも魔素の術が施された錫杖を掲げ、術式を組んだ。
刹那、空気が爆ぜた。
なす術も無く魔王の咽喉が焼け、やがてその清浄な炎が全身に廻る。
「ほんとやめて…」
唯一無二、絶対無二、唯一神ですらあると自負していた自分の力はただの過大評価に過ぎなかったのか?
否、眼前の男が異形を上回ったのだ。
それは魔王の不運だったのか。