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58話

 

 「ゴーダさん、面会ですよ」

 

 俺とアルターさんが昨日の出来事をそれぞれ報告しあっていると、看護婦さんから名前を呼ばれる。お見舞いに来るような知り合いはいないはずだが。

 

 部屋に入ってきたのは執事だった。セバスチャ! セバスチャじゃないか!

 

 「御領主家客人、ゴーダ様。チーム『ゴーダさんファンクラブ』リーダー、アルター様。お迎えにあがりました」

 

 聞けば、領主が俺たちを呼んでいるらしい。そう言えば昨日、領主の病気を治したお礼をしてくれると言っていたことを思い出す。

 

 というか、いつの間にか俺のファンクラブができてるんですけど……

 

 そういうわけで退院することになった。病院の前に停められていた馬車に乗り込む。すると、中には先客がいた。

 

 「……よう」

 

 羽根付き帽子、ボロボロのロングコートを着込んだ長身の女性。そして義足。相変わらず、一度見たら忘れない強烈なその出で立ちである。

 

 「おはようございます、スケアクロウさん。昨日はお世話になりました」

 

 Aランク冒険者スケアクロウ。彼女の話はアルターさんから簡単に説明を受けている。俺としては、冒険者という肩書だけで憧れなのにさらに彼女はAランクである。しかも、屈強な女戦士。カッコイイ系の美人だ。見た目はちょっと怖いが、アルターさんから良い人だと聞いている。

 

 彼女が俺たちと一緒に呼ばれているのは、昨日の魔族襲撃の関係者だからだろう。もともとあの魔族を倒す目的でスケアクロウさんはこの町に来たようだ。スケアクロウさんって長くて呼びにくいな。心の中ではクロウさんと呼ぼう。

 

 あの事件の顛末について、兵士たちにはクロウさんが主体となって討伐を果たしたということにして報告しておいた。一般人で無名の俺が倒したと言っても信用してもらえない。そういう手はずで彼女とは口裏を合わせてある。クロウさんたちの戦闘によって蓄積したダメージが魔族を追い詰めたという筋書きだ。

 

 「もう毒は治ったのか?」

 

 「え、ええ、まあ」

 

 クロウさんから探るような目線を向けられる。昨日からこの調子だ。無理もない。クロウさんが手も足もでなかった敵を俺が簡単に倒してしまった。不審がられるのも仕方ない。しかも、その倒した方法もろくに説明できなかった。ゲロを浴びせましたと正直に言うわけにもいかない。

 

 しかし、不審な目を向けられるだけで、それ以上の詮索をされることはなかった。どう説明したところで下手な言い訳にしか聞こえないと思われるのでこれは助かる。

 

 さすがはAランク冒険者の風格というものを感じる。昨日は食道炎のせいでろくに会話ができなかったが興味は尽きない。俺は少しミーハーなところがある。

 

 「Aクラスってすごいんでしょうねえ! 握手してください!」

 

 「……いや、そういうのは」

 

 「私はEランクです。ゴーダさん私が握手しましょう」

 

 アルターさんが勝手に手をつないでくる。恋人つなぎしてくる。それはさておき。

 

 それにクロウさんは『七魔剣』というものすごく貴重なマジックアイテムを持っているという。彼女のすぐそばに立てかけている剣がそれなのだろうか。厨二心をくすぐられてならない。

 

 「いいなあ、俺もそういう魔法の武器ほしいなあ」

 

 「私の弓も魔装具ですよ。ゴーダさん」

 

 そうだったのか。アルターさんの弓もマジックな品だったか。しかし、今の俺の意識は完全に魔剣に向いている。なんたって七魔剣だし。七本しかないし。

 

 「見るか?」

 

 「いいんですか!?」

 

 そんな俺の様子を見かねたのか、クロウさんが魔剣を見せてくれた。そういうの軽々しく見せてくれないものだと思ってた。刀は武士の魂ゆえ、とか。クロウさんは特に気にする様子もなく剣を渡してくれた。

 

 ずっしりと手に乗る重量感……と、思いきや、あっけにとられるほど軽い。大きさはRPGで出て来るような片手剣のロングソードといった感じだ。今の俺にはドラゴンパワーがあるため筋力も上がっているが、物の重さを感じ取る感覚は以前と変わっていない。やはり、軽い。

 

 鉄製ではないのだろうか。ちょっとだけ鞘から刀身を出してみる。ギラリと輝く光沢が顔をのぞかせた。すげえ、本物の剣だ。テンションが上がる。でもちょっと怖いな。

 

 『……リュウノケハイ、ヲ、カンジル……』

 

 「!?」

 

 今、なんか剣の方から声がしたぞ。呪われそうな感じのおどろおどろしい声が。

 

 「い、今、声がしませんでしたか?」

 

 「いえ、特には」

 

 アルターさんやクロウさんには聞こえなかったらしい。やはり空耳だったのだろうか。

 

 『リュウノ、ケハイィィ……』

 

 ぱちん

 

 俺は素早く剣を鞘に収め、クロウさんに返却した。

 

 「ありがとうございました」

 

 「もういいのか?」

 

 うん、聞かなかったことにしよう。この町に来てからというものトラブルに巻き込まれまくりなので、これ以上厄介そうなことに自分から首を突っ込む必要はあるまい。

 

 するとそのとき馬車が静かに停車する。まだ領主邸には到着していない。窓の外には老舗を思わせる重厚な造りの建物がある。服屋みたいだ。

 

 「ここで皆さまにはお召し物を着替えていただきます」

 

 確かに俺が今着ている服は病院着だ。メイド服がボロボロになったので、服がこれしかない。なんでこうも俺の服はすぐ壊れるのだろうか。バトル漫画なら爆発に巻き込まれて瀕死のダメージを負っても服は残ってるじゃないか。ファンタジーなんだからもっとそういう配慮がほしい。

 

 アルターさんに至っては痴女踊り子スタイルである。まさかこれで領主様の前に出るわけにはいかない。俺たちは馬車から下りる。だが、クロウさんは一人馬車に残っていた。着替えなくていいのだろうか。

 

 「闘いに臨む姿こそが冒険者の正装だ」

 

 「何をわけのわからないことを。早くあなたも着替えてください」

 

 「アタシはAランク冒険者だぞ!」

 

 「だから何ですか! いいからさっさと着替えなさい!」

 

 クロウさんとセバスチャの言い争いはしばらく続いた。先に店に入っとくよ?

 


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