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★51話―闇の狩人

 

 肝心の敵の血結技スキルが何なのか、スケアクロウは計りかねている様子だった。

 

 「原理はさっぱりわからんが、奴にアタシの攻撃は通じなかった。とにかく、奴には隙がない。お前の『確率確定チェックメイト』が頼みの綱だ」

 

 私の奥義級レア血結技スキル確率確定チェックメイト』は、“確率実現”の効果を持つ魔技だ。『六十四仮装界機集積回路チェスボード』が導き出した“未来予知”の結果を確率という改変可能な形に再構築し、性能限界の範囲で現実に沿わせることができる。

 

 私に行動可能な範囲において、1%でも成功する見込みがあると算出された可能性は強制的に実現する。具体的に言えば「攻撃が必ず当たる」。

 

 これが目的で私に依頼を手伝わせたかったようだが、スケアクロウが期待を寄せるほど便利な技ではない。何にせよ、敵と一度交戦してみないことには何とも言えないところだ。

 

 作戦の協議をしているうちに、目的地に到着した。例の飲食店に着いたはいいが、何やら騒がしい。大勢の兵士が店を出入りしている。私たちが店に近づくと、兵士の一人に呼び止められた。

 

 「なんだお前たちは。ここは領主軍直属捜査隊の管轄だ。地元自警団は帰った帰った!」

 

 「この店の主人に用があるのですが」

 

 「ここの店主は違法奴隷取引の容疑で、つい先ほど逮捕されたぞ。面会が望みなら留置所にでも行け」

 

 予期せぬ事態に一瞬、思考が滞る。この場合はどうすればいいだろうか。ゴーダさんが売られた娼館を探し出し、そこで再交渉する必要がある。

 

 「めんどくせーことになってんな。お前の事情もわかるが、こっちの依頼も猶予がない。こうしている間にも襲撃が……」

 

 

 

 「うわあああああ!? ばっ、化物だああああ!」

 

 そのとき、にわかに町中が騒がしくなった。人々の悲鳴が重なり、その声をもかき消すような轟音が立て続けに鳴り響く。見れば、通りの一角に位置していた建物が傾いていた。メキメキと軋みを上げながら、ゆっくりと倒壊していく。

 

 「な、なんだあいつは……に、人間じゃない!」

 

 「魔族だ! 逃げろ、殺されるぞ!」

 

 雲の子を散らすように人々が逃げて行く。瞬く間に閑散となった大通りの真ん中に、その人物は立っていた。

 

 形はヒトだ。それもまだ幼い。シルエットを見る限り、少女のようにも見える。だが、それ以上は明瞭としなかった。カメラをズームさせる。

 

 黒い。ひたすらに黒い。これがダークエルフという存在なのか。私は日焼けした褐色肌程度の黒さだと考えていたが、そんなものではなかった。まるで塗りつぶしたような黒だ。人の形をした影がそのまま立ちあがったかのような錯覚を覚えるほど立体感がない。

 

 黒くない場所と言えば、着ている貫頭衣と、両の目の瞳だけ。特に、影の中に浮かび上がるような黄金色に光る二つの虹彩は、異常な存在感を放っていた。

 

 私たちはすぐに臨戦態勢に入る。

 

 「おちつけえええい!」

 

 どこからともなく放たれる大声と威圧。敵が発したものではない。その声の主はすぐに姿を現した。

 

 「まったく、これは何の騒ぎだ。常日頃からうるさい平民どもが、今日はいつにも増して騒ぐではないか。やかましいぞ!」

 

 「あ、あれは領主軍精鋭、隊長格四人衆! 『四属性四重士』だッ!」

 

 現れたのは四人組の兵士たちだった。そこらにいる一般の兵士よりも質のいい装備を身につけている。その四人組が現れた途端、それまで恐慌状態に陥っていた町の人々は落ちつきを取り戻した。

 

 「我は1番隊長『火のアチン』! どうやら町の平和を乱す不届き者が侵入したらしいな。魔族のようだが……所詮は見かけ倒しよ」

 

 「2番隊長『風のフータ』。なぜこの町が、『夜噛蟲の森』という一級危険地帯と隣り合わせにありながら、こうして平穏を保っていられるか……その理由がわかりますか?」

 

 「3番隊長『土のドッカ』だ! フータよ、それは愚問というものだ! 考えるまでもない、我々『四属性四重士』の強さがあれば、あの森の魔物など相手にもならん!」

 

 「4番隊長『水のスイミ』……後悔するがいい。我ら『四属性四重士』の前に姿を現したことを……絶望するがいい。圧倒的な実力の差に、な」

 

 四人組の登場により、歓声に沸く町の住人たち。町の人々からの信頼は厚いようだ。それほどの強者なのだろうか。

 

 「四人衆が来てくれたのならもう安心だ! 助かったぜ……」

 

 「ああ、彼らの合体魔技『死滅の四重奏デス・カルテット』が決まれば、たとえ魔族が相手だろうがイチコロさ!」

 

 「早く殺しちまえ!」

 

 それに対してダークエルフは特に気構えた様子はない。てくてくと、無警戒に四人組へと近づいていく。

 

 「おや、投降するのですか? 賢い判断です。しかし、恭順の意を示すのが遅すぎましたね。あなたはこの町に損害を与えた。罪を償ってもらわなくては」

 

 「フータよ、殺すでないぞ。一応、背後関係など洗わねばならん」

 

 「わかっていますよ。なに、少し痛めつけるだけです」

 

 フータと呼ばれた兵士が抜剣する。しかし、ダークエルフはやはり自然体のままだった。すっと、おもむろに片手をあげた。グラスを指で弾くようなしぐさをする。

 

 「『拒絶ハヲ』」

 

 その瞬間、目の前にいた兵士の姿が消えた。いや、吹き飛ばされた。すさまじい衝撃を受けた兵士の体は地面とほぼ並行に飛んで行き、壁に激突して止まる。そしてそのまま動かなくなる。

 

 何をしたのか、私の目から見てもわからない。ダークエルフが指を弾くと同時にその近くの空気に破裂するような衝撃が走っていた。詠唱のようなものもあったし、血結技スキルだとは思うが、何か違和感がある。

 

 「な、に……っ!?」

 

 「全員、構えろ!」

 

 それまで余裕の態度を見せていた兵士たちは、即座に抜剣してダークエルフを囲む。闘気をみなぎらせる兵士たちに対して、ダークエルフはそれでも構えない。自然体を貫いている。

 

 「まさかあのフータを一撃で落とすとは」

 

 「油断するからだ! あの馬鹿めが!」

 

 「今は目の前の敵に集中しろ。一人やられたくらいで我らの結束は揺るがん。見せてやろう、最強の合体魔技を!」

 

 三人の兵士が呼吸を合わせて、一斉に血結技を発動した。

 

 「『火燃貫通ファイア』!」

 

 「『土石防護ストーン』!」

 

 「『水流黙示ウォーター』!」

 

 「「「合体魔技『惨劇の三重奏デス・トリオ』!」」」

 

 合体魔技と大層な名前を付けているから何かと思ったら、それぞれが血結技を使って一斉攻撃しているだけである。しかし、それでも血結技を用いた三方向からの同時攻撃である。その威力が高いことは言うまでもない。

 

 いかにしてこの猛攻を、ダークエルフは凌ぎ切るというのか。

 



やったか!?

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